某掲示板に投稿されていた師匠シリーズに憧れを持ち某地方(四国ではない)の大学に入った僕は早速とあるサークルに入ったのだが先輩方々同級生共々は皆こぞって怪談の類いが苦手なようで拍子抜けをくらってしまった。今じゃ怪談の類いが得意な人間の方がかなりではなくとも珍しいらしく、絶滅危惧種じゃないかと笑われた。
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予想していた考えは違っていた。僕の予想ではノリが良くて「おーし、じゃあ心スポ行くかぁ」という流れがなくガクッとした。まぁ、こんなもんかと割りきって烏龍茶を仰ぐ。居酒屋を出て先輩方々は「三軒目いっきまぁーす」と言ってワイワイと行ってしまった。
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未成年なため酒は飲めず暇になった僕はポケットに手を入れて不貞腐れてそのまま家に向かった。「はぁ、」とため息が漏れた。何か思ってた感じが違うと考えながら、誰も居ない暗い道を歩いていると誰かにぶつかった。
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「あ、すいません」
と言い振り替えるが誰も居ない。
ん?と思い歩こうとするとまたぶつかった。が、振り替えるが誰も居ない。頭に?が浮かんで離れない。と、歩いてないのにまたぶつかって膝をつく。ここで、おかしいと気付いた。
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ここには僕しか居ない。なのに、見えない誰かとぶつかる。何度も同じ所で。僕はその場所から動いていない。にも関わらず何度もぶつかる。そして、またぶつかり僕は倒れた。恐怖で体が動かなかった。踏まれる感触がある。また踏まれる。
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踏まれる。踏まれる。また踏まれる。体が硬直している。呆然と前を見ていると誰かの足が見えた。靴ではなく雪駄を履いている。ぼぅーとした僕の腕を掴みを無理矢理立たせる。
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「おい、大丈夫か?」
肩や背中辺りをポンポンしながら聞いてくる。と、体が軽くなったような気がした。暗闇に目が慣れるとその人を見た。黒いロングジャケットに紺色のジーンズに灰色のニット帽に黒の布マスクそして雪駄。一瞬頭に浮かんだのは変人である。
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「だ、大丈夫です」
そうして答えるとその人は
「君、霊感あるだろう?」
ドキッとした。その人はマスクしたの顎を触っている。
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「は?え?」
「ここは、一応霊道になっていてな。君は霊が通る方向とは逆の方を歩いていた。で、霊にぶつかる。その場で立ち止まっているから次から次へとってな」
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「分かるんですか?」
と聞くとその人は
「分かるというより見えるから。そういう体質」
って一言言うと水素タバコを取り出し吸い始める。その人は首をゴキゴキ鳴らしながら
「霊道というよりは入り口かな。そこに入れば霊道に入れるしあの世とかに行ける。一方通行のトンネルの入り口として存在する見えないそれは、霊感があっても見えない人が多い。多分修行しないと見えないだろう。まぁどうでもいいが」
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「あ、あの」
「ん?」
「あ、貴方は大学生ですか?」
「いや、フリーター。けど、そこそこの収入はある。」
「弟子にしてください」
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キョトンとしているがクックックと笑い始める。
「弟子……ね。君、面白いね」
「だ、ダメでしょうか?」
「……まぁ、いいよ。」
「本当ですか?」
「だけどねぇ、師弟関係にはならない。俺のことは先生と呼んでくれ。俺は君を教え子として見るから」
先生かぁ。師匠シリーズに憧れを入れていただけに少しもガックリするがそれっぽくなってるならまぁいいかと思い頭を下げる。「お願いします」と言うと
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「あぁ、よろしくよろしく。で、早速で悪いけど今日は寝かすつもりはないから。じゃあ心スポ行こうか?」
と言い僕の袖を掴むとグイグイと引っ張る。意外に力が強く僕はそのまま成されるがままに着いていかされた。
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気が付くと朝になっており、テリヤキ玉子サンドと野菜ジュースが入った袋を渡されて解放される。肉体的にも精神的にも疲れた。やれ彼処には霊が溜まるだのやれ彼処には怪異が居るだの色々連れ回された。
先生は
「今回のはまだ序の口。次からは精神磨り減るだろうけどまたヨロシクな」と言いそのまま歩いていった。
あの人は化け物だなと苦笑して携帯を取り出すと早速では悪いけど大学は休むと連絡を入れる。
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太陽が煌々と照りつける。アパートの戸を開ける。ベッドに倒れこみ目を瞑った。真っ暗闇が見えそこに先生の残像が見えた気がした。そして、そのまま眠りについた。
作者赤坂の燈籠