短編2
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換気扇

クルクルと忙しなく換気扇が回る。

特にやることもない休日だったからおれは何となくそれを眺めていた。

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チラッチラッと換気扇の羽と羽の間から目が見えた。

瞳は黒で他は黄色の目だ。

ゴミでも挟まっているのだろう、そう思いながらも観察を始めた。

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目は瞬きをした。

「あ、生きてる!」面白いなと思い、つい声が出る。

目は再び瞬きをした。パチパチと二、三度まぶたを閉じたり開いたりを繰り返す。

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まるで自分の声に答えるように。

おれはさらに興味が湧いたから手頃な台に足を乗せて近くで見ることにした。

目はその様子を優しい目で見てくれた。

それは幼き頃に母が自分に向けてくれた愛情の眼差しに似ている。

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台に乗りどんどん目に近づいた。

目は優しく見守ってくれる。

その優しく愛情に満ちた目に吸い込まれるように顔を換気扇へと近づけた。

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やっと間近で見られる、そう歓喜しているおれとは対照的に目はどんどん悲しげな様子になった。

おい、どうしたんだよ?何でそんな悲しそうにするんだ?

その悲しげな目はどこか昔別れた彼女や死んだ飼い犬、亡くなった身内を思わせた。

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放っておけない感情が湧き起こり、おれは目を心配するように見続ける。

すると目は黄色から黒色に変わり、やがて真っ赤な目となった。

赤い血涙も流し始める。

おれは目のことが心配になり、さらに顔を近づけた。

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その時だった。

バーン!と換気扇が弾けるように壊れると、何かがおれの目を突き刺した。

両目とも突き刺されて何も見えなくなった。

バランス感覚を失い床に尻もちをついた。

ドッシャアーン!と大きな音が響く。

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「大丈夫ですかー!」

と音を聞きつけてアパートの管理人が玄関をノックした。

大丈夫じゃないからそれを伝えて病院まで運んでもらった。

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検査の結果、両目とも失明していることが判明した。

おれの目を刺したのは換気扇の破片だと思っていたが、人の爪が無数に刺さっていたらしい。

皆さんには変なものから目を逸らすことをお勧めする。

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