22年12月怖話アワード受賞作品
中編4
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レイのトイレ

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今の俺は、都会のとある銀行で、

普通の中間管理職として務めているのだが、

中学校を卒業するまでは、

絵に描いたような田舎に住んでいた。

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田舎だから、実質的に小中一貫校みたいなもので、

高校生になった途端、殆ど全員の子供たちは都会に行ってしまう。

家族ぐるみで引っ越すことも、別に珍しくはなかった。

だから、当時の俺の故郷は、

子供と老人が半々

という光景だった。

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本題に入るが、前提として、

俺には霊感とかの類はは無い。

ただ、一度だけ、確かに怖い体験をした事はある。

小学校低学年の時だった。

幼い頃なので、うろ覚えのところも多いが…

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子供の頃は秘密基地というものが流行っていて、

春先のとある日にも、俺、A、B、C、Dの

普段から仲が良い男子5人で

小高い山に入り、お菓子やらおもちゃを持ち寄り、

あれやこれや遊んでいた。

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その秘密基地っていうもんがかなり便利だった。

学校の近くの山の中に、

使われていない小屋みたいなものがあって、

それを、ほぼそのまま基地にしていた。

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その近くの道も、

獣道(けものみち)を、人ひとりが歩けるように手を加えられたような、

子供の冒険心をくすぐる場所だった。

通称[改良版獣道]と言われてたっけ。

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何よりありがたかったのは、基地の近くにトイレがあったことだ。

無論トイレといっても、汲み取りの穴の四方を木の板で覆っただけの、

今で言う簡易トイレみたいな粗末なものだったが、

それでも、トイレ付き秘密基地なんて、

実に贅沢なものだった。

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ある休日。

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その日は山を奥まで探検して、

すっかり遅くなってしまった。

B「悪いけどちょっとトイレ行ってくる」

D「おいおい、いまさらかよ」

俺「大のほうじゃないだろうな」

B「違う。先に帰ってろ」

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で、Bがトイレに入ったのを見届けてから、

俺らは各自、改良版獣道から家に帰ろうとした。

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shake

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Bの声:ぎゃあああ!!!!

ほか一同:どうした!?

振り向くと、顔面蒼白のBがトイレから飛び出してきた。

そして、そのBの後方には、

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目をカッと見開いた女の首だけが

ゆらりと宙に浮かび、

Bと俺たちを凝視していた。

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俺ら「うわあああ!!!」

5人ともあらん限りの叫び声を上げ、

それぞれ全速力で自宅に帰った。

もちろん、帰るのが遅くなった言い訳と合わせて、

トイレの女の首のことも言った。

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その後のことは・・

申し訳ないが、そこからはあまり覚えていない。

日付が変わる前には地元の神主さんに呼ばれて、

Bは念入りに、

俺ら4人も軽くお祓いをしてもらった。

神主「うん、君らは大丈夫だろう」

俺たちは心底ホッとした。

出口が見えないほど長いトンネルから出てこれたかのように。

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そのあと、学校で聞いた事は、

例のトイレは頑丈に封鎖されたそうだ。

俺らは見ていないが別の男子がそう言っていた。

鎖を巻き付け、大きな南城鍵? までつけていたという。

秘密基地も解体されたらしい、でも、

もう二度と行く気にはなれなかった。

その男子は、「あの辺は昼でも雰囲気が怖い。

よくあんなとこで秘密基地遊びしてたな」

と断言した。

俺「ああ、

‥その時点でもう呼ばれてたのかもな、俺ら‥」

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そして、それから

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Bは中学2年の春先に突然、

急死した。

死因は不明だが自殺ではない。そう言われた。

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その後、ある長期休暇の日に、

祖父母への顔見せも兼ねて、

2泊3日の予定で故郷に帰った。

すっかり子供よりもはるかに老人が多くなった故郷で、

お年寄りになった神主さんとも再会できた。

以下は神主さんの話しだ。

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「あの後、子供たちに注意しておけば良かったな、って

大人たちが言ってたんだ。

あのトイレは曰く付きという場所でな、

もう霊は出ないだろう、とみんな思っていたんだ。

江戸時代のころの話で、自分もまた聞きなんだが、

この地域で色恋沙汰のようなもので

騒ぎになったことがあったらしい。

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若い男女だったが、互いに別のムラの者。

今よりもっと閉鎖的な時代だったから、

別れようとしなかったというだけで、二人とも打首にされたらしい。

今となっては、場所も、事情も、

詳しいことは分からない。

郷土史にも載っていないから、

実話かどうかさえも分からない。

でも、日が沈んでから、

あのトイレに女の霊が出る、

という話は昔からあってな。

祖父の代から祓い続けていて、

もう成仏しただろうと思っていたんだが。」

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神主「それと、B君は直接女を見て、数年後に急死した」

俺「ああ…そうでしたね、俺も悲しかった」

神主「今だから言えるが、B君までは助けられなかった。

霊障という類に直に当たってしまったからね」

俺「確かに、目撃者はBですね」

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神主「あの時言ったはずだよ、『君らは』大丈夫だろうと」

俺「…」

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俺は1泊2日で故郷を後にした。

霊(例)のトイレは、あれほどの曰くと年月の経過にも関わらず、

未だに取り壊されていない、という噂を聞いた。

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