私がある時、自分の書いた小説をSNSアプリで宣伝していたら1人の男性から
「この作品、自分の配信で朗読しても良いですか ? 」
っと声をかけられたんだよね。二つ返事で了承した私は男性に配信アプリの名前を聞きインストール。
男性の朗読は上手だったし、とても嬉しかったのを覚えてる。余談なんだけど、実は【呪いの日記帳】YouTubeでも朗読をしてもらった事があるだ。
もちろん、まったく別の配信者さんだけどね。もし興味あったら【日寄 呪いの日記帳】で検索してみて。
配信アプリで朗読して貰ったやつは、アーカイブとか残ってないしそもそもアプリ自体が配信終了しちゃってるからさ。残念だけど、もう聞く事が出来ないだ。
また本題がそれちゃったけど話を戻すね。ここからが、本題。
その朗読配信後、仕事で一週間ばかり忙しかったのもあってさ。配信アプリをインストールした事をまるっと忘れてたんだよね。
だから、休みの日に携帯を確認するまで配信アプリの存在は頭の片隅に追いやられてたんだわ。でさ、その頃の私は今以上にあがり症でね。
電話ですらまともに人と話す事が出来なかったんだ。でも、そんな自分を変えたいとって思ってたから【初見凸OK】って書かれているタイトルの枠を巡って荒療治で直そうと試みたの。
――――――――――
あの時の枠主様方、録に話せないのに凸に上がってしまいご迷惑おかけしました。お陰で今は大分、電話で話す事に慣れました。
感謝しています。
――――――――――
で、そんな時に出会ったのが私より少し年上の男性で兄と言う存在に憧れを持っていた私は彼を「兄さん」っと呼び仲良くして貰っていたんだ。しかし、兄さんは心霊を一切信じない人だった。
そんな兄さんと、電話してたある日の事。
「あ、そう言えばさ。俺、明日 近所の廃墟に友達の財布を拾いに行って来る」
「……はい ? 」
「何かさ、友達が廃墟に行って財布落として来たらしいんだ」
「う、うん ? 何で、友達さん本人が行かないの ? 」
「あー……なんか、高熱出て寝込んでるんだわ」
ここまで聞いた私は思った。「B級ホラー映画のあらすじ ? 」っと……
「でさ、明日の夜にまた電話しても良い ? 流石に一人で行くのは心もとなくてさ」
「別に良いけど……なんかあったら、即座に切るよ ? 」
「冷たいこと言うなよ ! 酷い妹だ……あ、なんなら配信で実況しながら行くって手もあるな」
「やめなさい。ちゃんと最後まで付き合うから、他人様を巻き込むな」
そして、翌日の22時過ぎ。兄から電話があり、そこで改めて廃墟の詳細を訪ねてみた。
「病院とはちょっと違うんだけど……精神を患ってしまった人たちの隔離施設みたいな ?
詳しい事は知らないけど、心霊スポットではないぞ。ただ、近所では有名なハッテ〇場」
「……うん。【そっち】の意味でも、襲われたら通話切るね」
「俺なんか襲うやつ居ないって」
そんな会話をしつつ、兄さんは1人廃墟へと侵入。夜の22時過ぎに、部屋で廃墟からの実況電話を聞く羽目になった私。
「あ、ここ個室か……へぇ、結構広いな…………ん ?
何だこのカーテン(カーテンを開ける音)……浴槽か…………って、うわっ ! 大量の髪が……カツラか ?
うげ、気持ちわりぃ…………ん ? わっ、 ! めっちゃ怖いマネキンあった……やべぇ」
みたいな感じでずっと話し続けてたわ。
皆様、想像してみて下さいな。実家暮らしとはいえ、1人自室で夜の22時近くに電話の向こうからこんなありがたくもない実況を延々に聞かされる様を……正直、私は心を無にして一回ガチで通話切ってやろうか考えましたよ。
「怖いわ ! 静かに探せや !
てか、さっきシャッター音したけど何を撮ったの ! ? 」
「え ? あ、悪ぃ悪ぃ。
マネキンだよ。明日のサムネに良いかなって……」
「ダメだこいつ、早く何とかしないと……」っと本気で呆れた。注意したら、一応 静かになって次の部屋へ移動……そんで「ベットの下にあるんじゃない ? 」って私の助言を受け覗き込んだらしい兄さんは何かを発見。
「ん ? 何か落ちてる……」
「お ? ついに、財布見つけた ? 」
「いや……違う。茶封筒だ(開けて中身を確認しているであろう音が聞こえた)……やば、惠《めぐみ》 !
また、良いこと思いついた ! 」
「絶対にあかん事だと思うが、聞いてやろう。何だ ? 」
「明日の枠で、この茶封筒を戦利品として公開する ! 」
「………………兄さん」
「ん ? 」
「いっぺん死ねば、その馬鹿は治るのかな ? 」
「いや ? 多分無理だと思うぞ ? 」
「…………………………解った。でも、それ以外の物には一切触れるな。
何も持ち帰るな。……良いね ? 」
「ういっす」
私はもう何を言っても駄目だと諦めた。でも、この判断が間違っていたと後に思い知る事になるんだ。
その部屋を出て、次に一回最後の部屋へ移動した兄は部屋の扉を開けると同時に「あ」っと短い声を上げた。何かあったのかと思った私は、心配で声をかけたのだけど無言が続き……そして、唐突にその静寂が打ち砕かれた。
ちーーーーん……っと、金属同士がぶつかりあった時の様な音が鳴り響いたんだ。聞いた瞬間は、何の音か解らなかったけど……背筋にゾッをしたものを感じたのは間違いない。
そんで、凄く嫌な予感がした。
「は ? え ?
何 ? ! 何の音 ? 」
「あ、悪ぃ。 なんか、入った病室に仏壇が置かれてたからつい」
「え ? マジで ?
今直ぐに殺しに行っても良い ? 」
「ごめんって」
なんと兄さんは、入った病室に置かれていた仏壇のおりんを鳴らしたのだと平然と言ってのけたんだよ。鈴ってね。
日中は魔除けなんだけど、夜中に鳴らすと呼び鈴って良くないものを呼び込んでしまう事があるんだ。この話を教えてくれたのは、近所の寺の元住職さんで曽祖父の友人だった方。
その元住職さんに兄さんの所業を伝えたところ……常日頃にこにこしてる優しい仏顔が、眉間にシワを寄せまるで阿修羅像の様な険しい顔つきになって一言。
「……その廃墟、今はきっと幽霊の巣窟になってるだろうね。お知り合いの人には、金輪際近付かない様に伝えておきなさい」
で、1階の個室を全て確認し終えた兄は2階へと移動した。2階は大広間の様な部屋に、ベットが幾つも並べられていたらしい。
「広いな……わっ ! 」
「え ? 何々 ? ! 」
「いや、……え ?
風も無いのに、箸が床に落ちた…………え ? 何で ? ! 」
よほど驚いたのか流石の兄さんもテンパっていて、私も電話越しだったが凄く怖かった。けど、
「何なんだ……勘弁してくれよ。……あ、財布あったわ。
間違いない彼奴《あいつ》のだ。じゃあ俺、帰るな。
車乗るんで、一旦切るわ」
「え ? あ、うん。気を付けて……」
兄さんは唐突にすんっと何時ものテンションに戻ったんだ。「お前のメンタルは鋼か ? ! 」っと、思わず心の中で突っ込んでしまった。
その日は、それでお終い。翌日、私は本当に恐ろしい目に遭う事になる。
本当に、何時かあの馬鹿兄を殺っ……げふんげふん。殴ってやりたい気持ちでいっぱいですよ。
作者林檎