ムカデを崇める(曰く付きの話ではありません)

短編2
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ムカデを崇める(曰く付きの話ではありません)

ムカデ。

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現代では見た目だけでなく、

人を咬むことまでしてくる。

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〈G〉とはまた違う方向性で、

不快害虫として、多くの人々に

恐怖、絶望、

そして映画界だけではカルト的人気(分かる人には分かる)をもたらす存在。

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ただ、それはあくまでも、

文明が発達した近・現代での価値観であって、

それ以前は、それなりに扱いが違っていたようだ。

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現在のN県に位置する鉱山と、

そこからの、豊かな鉱山資源を利用した鉱業で繁栄した町に、

ほぼ口伝で伝わっていた話によると、

そこでは、直視した者が精神に異常をきたす、

異形の神格を信仰していた。

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ムカデの姿をしたその神は、決まった名前を持たないが、

山よりも巨大な体を持ち、

大地の恵み、特に鉱山の守護神として崇められる。

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だがしかし、同時に暴虐な性格をも併せ持ち、

年に数回、生贄を捧げなければならず、

それができなければ、あたり一帯に水害や土砂災害、

火山の噴火をもたらすという、

破壊的な邪神でもあったようだ。

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そんなかつての神も、時代が下り、

科学技術研究と全く縁のない人でも

「かがくのちからってすげー!」

と実感するようになると、

生贄を捧げる風習はしだいに廃れていった。

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[防災]という技術で、ある程度の災害なら、

人間が自力で対処できるようになったからだ。

存在も忘れ去られ、歴史にもほとんど残らなかった。

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一説には、今日(こんにち)のムカデは全て、

かつてのムカデの神が産み落とした幼体で、

たとえ1匹でも駆除できなければ、そう遠くないうちに、

新たな神として降臨するのだという。

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それは、

地球という、巨大なエネルギー資源を利用し続ける対価として、

破滅を避けるために終わりなく生贄を捧げる、

愚かな人類への警告、

というようなものなのだろうか?

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この話には続きがある。

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この話を読んだ人のところには、もしかすると、

今夜あたり、枕元に

巨大なムカデが現れるかもしれない。

ひ○ゆき「それ、根拠あるんですか?」

あります。

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「今は虫たちが活発な季節ですから」

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@枯れ木 様
生き物への価値観もそうですし、気温も、昔は真夏でも半袖だと寒かったそうですよ。
あんまり難しいことは、わかりませんが、戦旗に描かれているムカデは凄みがありますね。

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私も動物や昆虫とか生き物は大好きなのですが、あのたくさんの足を持つムカデさんだけはどうも苦手です。
でも大河ドラマでも武田信玄の旗にムカデが書いて
ありましたね。やはり昔は畏敬の神としてあがめられて
いたのでしょうね。怖いけどすごいなあ。

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