中編7
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霊園墓地の肝試し

M君の家の怪異現象からしばらく経ったある日におしゃべりS子が夕食時にとんでもないことを言い出した

「おっちーー、あの時に窓から霊園を見たときに霊園の中から白いフワフワしたものを見た」と言い出した

(これはやばい・・・オヤジが喰いつくぞ)

「お・・S子ちゃんは見たのか・・・やはりあの霊園はいろいろな噂話があるけれど

こりゃ子供たち全員あの霊園へ行って肝試しをしないとな」

(案の定・・・オヤジが喰いついた)

私たち4人は下を向いたまま返事はしなかった

それでなくてもF子は怖がりだ・・・M君の怖い話でさえ体が震えていた

あんな霊園にF子やS子たち妹たちを連れて行きたくはない

本当に怖い噂話がたくさんある

実際にM君やM君家族は体験している

「そうだな・・・南側の入り口から50メートルの中にある祠まで肝試しをするぞ」

「え・・・嫌だよ・・・父ちゃん、怖いよ」と私は「怖いからしたくない」と言うと

「大丈夫だ、父ちゃんがいるからな」

いや・・そういう問題じゃない

単に嫌だからだ

霊園は東西南北に出入り口がある

北側の方は駐車場もある

南側の入り口からおよそ50メートルの所に祠のようなものが祀ってある

50メートルだとそんなに長い距離ではない無いように思えるが

実際は・・・街灯が無いので真っ暗・・・とてもじゃないが霊園の中には入りたくはない

入り口から中をのぞくともうゾクゾクと寒気がする

昼間さえ不気味なのに夜だとさらに不気味

道路側には街灯があるから霊園の壁側辺りはまだぼんやりと明かりがあって見えているけれど霊園の中に入るともうまさに闇の世界

懐中電灯なしでは絶対に無理だろうという感じだ

「おじさん・・・肝試しは嫌だ」とS君も嫌がっていた

ところが

S子が・・・

「兄ちゃんたち・・・一度私が見たふわふわしたものを見たほうがいいよ」と言い出した

私とS君はお互いの顔を見た

(S子・・・憑りつかれちゃったのかも・・・)

「さすが!S子ちゃんだ!アニキたちは臆病だな」と高笑いをした

夕食が終わった

おいおい・・・オヤジのベースに完全にはまってるよ・・・

S子!余計なことばかりしやがって!

オヤジがその気になってるじゃないか

夕食後にS子はS君に怒られていた

今にも泣きそうな顔をしていた

自分の部屋に4人集まった

お互いの顔を見て下を向いた

「おっちーー・・・ごめんだぞ・・・兄ちゃんたち・・・」

「いいよ・・S子・・・」

大事な妹を責めても仕方ない

「困ったな・・・」

「おじさん・・やる気満々だよ、F」

「そうなんだよ・・・父ちゃん・・来週に肝試しをするってさ」

「え・・・来週・・・嫌だな・・・」

「仮病を使おうかな・・・」

「S君・・・やめたほうがいいよ・・・バレたら・・・」

「あ・・・そうだね・・・」

1週間、4人、うつ状態だった

その日が来た

「さぁさ・・夕食は早めに終わって行く準備をしろよ、おチビちゃんたちよ」

「父ちゃん・・・やめようよ・・・」

「何を言ってる!男に二言は無い!!」

やる気満々のオヤジ

夕食も終わり

行く準備も終わった

準備といっても懐中電灯だけ

「兄ちゃん・・・行くの嫌だよ」とF子が私の腕を引っ張りながら小さな声で言ってきた

「仕方ないよ・・・あきらめな・・・F子」

「うん・・・兄ちゃん・・」

辺りが暗くなってきた

「さぁ!行こう」

オヤジのやる気満々の声

オヤジのあとに子供4人がついていった

霊園南側の入り口に着いた

もう辺りは真っ暗

まだ入り口付近は家とか街灯があって明るい

「さぁ・・てと・・・誰が一番に祠まで行くんだ?」

誰も返事はしなかった

「返事が無いな・・・こりゃ・・一人一人行ってもらおうかな・・」

「絶対に嫌だ!一人じゃ無理だよ、父ちゃん」と私はとっさに声を出してしまった

「お!F!偉いぞ!Fが最初だな!」

「え!!!嫌だ!!!」

「おじさん、僕も一人では無理!」

一人は無理

霊園の中は真っ暗闇

50メートル先に懐中電灯をあてると祠がうっすらと見える程度

「仕方ない・・・兄妹で祠まで行ってこい」

「え・・・・そんな・・・・」

F子は完全に震えていた

S子もいつもの笑顔が消えていた

「兄ちゃん・・・怖いよ・・・行きたくないよ・・・」とF子がすがりついてきた

最初に私たちが行くことになった

「兄ちゃん・・・」とすがりついたまま私の腕を離さなかった

ゆっくりと祠まで歩いて行った

もう周りを見る余裕はなかった

辺りはシーーンと静まり返っていた

ガサコソ

バーン

突然、周りから音が鳴った

「兄ちゃん・・・・聞こえた・・・」とF子は座り込んでしまった

「行こう・・F子・・」とF子を起き上がらせようとしたが無理だった

遠くからオヤジの声がした

「どうした!まだ着いていないぞ!」

「父ちゃん・・・F子が座り込んじゃったよ・・・もう無理」

「なに!!!」とすごい勢いでオヤジが走ってきた

「大丈夫かF子ちゃん」

「パパ・・・周りから変な音が聞こえたよ・・・無理・・・おうちへ帰りたい」

後からS君とS子も来た

カサカサ

バーーン

キーーン

周りから聞こえた

「え・・・なんだ今の音は」とオヤジはキョロキョロと見まわした

周りが真っ暗でさらに不気味さが増していた

「おじさん・・・誰かいるんだぞ・・・話声がするんだぞ」とS子がつぶやいた

確かに人の声らしいのも聞こえていた

いや・・完全に周りを囲まれてる感じがした

「父ちゃん・・・なんか・・・周りにだれがいるみたい」

「俺もそう感じる・・・ちょっとやばいな・・・」

オヤジも感じていた

「F子ちゃん、起き上がれるか」

「うん・・パパ・・」と言いながらF子は立ち上がった

「おっちー・・・・怖いんだぞ・・・」

遠くから鳥の声も聞こえてきた

「こりゃ・・・あかん・・・」

私たちはゆっくりと南側の入り口まで歩いて行った

なんとなく後ろから足音もした気がした

「父ちゃん・・・後ろから・・・足音がする・・・」

「聞こえてる・・・振り向くなよ・・そのままゆっくりと歩いていくぞ」

なんとか入り口までたどり着いた

私はふと振り返り霊園の中を見てしまった

なにか・・・人の形をした空気の塊がフワフワとたくさんいるように見えた

「父ちゃん・・・うしろ・・・何かいっぱいいる・・・」

オヤジも振り返って・・・絶句していた

「あかん・・・たくさんいる・・・呑気に肝試しをしなくてよかった・・・」

S子が振り返ってしまった

「おっちーー!!!!おっちーーー!!!お化けがたくさんいるんだぞ!!!」と叫んでしまった

それに反応したのか霊園から叫び声や足音が一斉に聞こえて来た

「うわっ!!!S子!!!」と私たちは猛ダッシュでそこから逃げ出した

ある程度のところまで来て息切れ

「あれ・・・F子やS子がいないぞ、父ちゃん」

「あ・・・追いついてこれなかったか・・・」

後ろを見ると・・・2人が手をつないで走ってきた

おチビだから遅い遅い

「兄ちゃんたち!!なんで私たちを置いていくんだぞ!!怖いんだぞ」

と叫びながら追いついた

「すまん・・・」

F子はまた座り込んで泣いてしまった

「パパ・・兄ちゃん・・ひどい・・・置いていくなんて・・・」と言いながらワァワァと泣いた

散々な肝試しになってしまった

疲れた足取りで家へ帰った

「疲れた~~」

「怖かったんだぞ・・・」

おふくろが台所の奥から出てきた

「なんか・・・疲れてるみたいだけど・・・」

「ママ・・・怖かった・・・」

F子の泣きじゃくりした後の顔を見ておふくろはとっさにオヤジの顔を見た

「あんた!F子の疲れ切った顔・・・何かあったの?説明をして」と

怒り顔になっていた

オヤジはシブシブ説明をした

おふくろが切れた

「なんでことを!!!あんた!もし何かあったらSちゃんの両親に何で言えばいいの!!!

大事なお子さんたちだよ!」

「いや・・・まぁ・・・」

オヤジは下を向いてしまった

「あんたさ・・・あんまし調子こくと罰があたるよ・・・私も軽く肝試しを見ていたから・・あんまし強く言えないけど・・・大丈夫かな・・・今夜はSちゃんたちは家に泊っていきなさいね」

とおふくろが心配そうに言ったとたんに

玄関のほうから

すごい勢いでトントントオントオンと玄関の戸を叩く音がした

全員がびっくりして飛び上がってしまった

「あ・・・言わんこっちゃないね・・・」とおふくろは戸惑いの顔になっていた

「憑いてきたかも・・・」とわたしがつぶやいた

「おじさん・・・」とS君はオヤジの顔を見ていた

誰も恐怖心で玄関まで確認をしに行くものはいなかった

「あんた・・・責任取って・・・玄関の方へ見てきて」とおふくろがオヤジに向かって言った

「あぁ・・あ・・・・わかった・・」

オヤジはシブシブ出て行った

息をのんで待ってるとオヤジが戻ってきた

「別に・・・誰もいなかったよ・・・鍵は閉まってるし」

「そっかい・・・え!!!!!!」とおふくろはオヤジを見て倒れてしまった

私たちもオヤジを見た

倒れた・・・・

オヤジは何か起こったのか理解できなかったみたい

私たち5人が目を覚ましたのはもう朝だった

オヤジは一人で起きていたらしい

「あんた!!今まで起きていたのかい?」

「そうだよ・・・お前たちが急に倒れたんでな・・・」

「父ちゃん・・・全然気づいていなかったの?」

「何を?・・・」

「父ちゃんの後ろにいたんだよ」

「何かいたんだよ?」

「霊園で見たフワフワしたもの・・・父ちゃんの後ろにいたんだよ」

「え・・・おい・・・」とオヤジは絶句したまま硬直した

そう・・・オヤジの背後に3体ほど・・・後ろにいた

それもなんとなく笑っているような感じだった・・・・

笑うといっても笑顔じゃなく不気味な笑いのような感じだった

そう・・・この肝試しが発端だった

これから後々の私たちはいろいろな怪異現象を体験することになった

Concrete
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