お得意先の知り合いの方に不思議な現象の話を聞かされた
打ち合わせが終わり少し休憩タイムをしていた時だ
その人の家は父親が建てた家に住んでいる
もう相当な年数が建っていて修理をしないといけない時期に入ったと愚痴をこぼしていた
そのリフォームを業者と打ち合わせをした夜に不思議というか怪異現象が起きた
足音がしたり人の気配がしたりと我が家とほぼ同じ現象がその夜に起こったらしい
その方の両親も足音や人の気配がすると訴えていた
その人のお子さんは何度も人影らしいものを見たと聞いてた
その現象は毎日ではなく週に2,3回ほど起きてる
今のところ、家族は元気で病気やケガはないということだ
特に天井裏から足音がよく聞こえてくるという
2階建てではなく平屋の家
だから天井の上は屋根になる
屋根に誰かが上ってるのではと思い足音がしたらすぐに家から出て屋上付近を見るのだが誰もいない
その天井裏は普通の天井裏
人が歩ける場所ではない
色々と怪異現象が起きており寝不足になっている
こういう話を同僚などに話したのだけれど誰も真剣に聞いていない
私は「そういう話はしない方がいいですね」と忠告しておいた
その方は家に泊ってもらいその現象が本当かどうか確かめてほしいと頼まれた
私は即答でOKを出した
私と私の父親と私の娘3人を連れてきていいか聞いてみた
その方はしばらく考えてOKを出した
まぁ・・おそらく何で家族を呼ぶのだろうかと不思議に思ったんだろう
私は夕食時にお知り合いの話を家族にした
来週にその方の家で泊まることになる
オヤジは少し何か考え込んでいた
我が家とほぼ同じような現象
「せがれ・・・話を聞いてると確かに俺の家の怪異現象と同じような気はするが・・・
あんまし・・・深入りしない方がいいかもしれんぞ・・・」と
(この時にオヤジの言うことを聞いていればよかったと・・・)
「パパ・・・私も・・じいちゃんと同じ・・・なんとなく・・・その人に近づかない方がいいと思う・・・」
楓もオヤジと同じことを言った
しかし、約束をした以上は一応泊まるということに
「約束だから仕方ないけど・・・わたし・・じいちゃんも手に負えなくなったらどうするの・・・パパ」
「え・・・そんなにか・・・」
「うん・・・その人の家じゃなくその人が問題だと・・・」
「その人・・・まぁ・・・パパもそんなに知り合いということじゃないからな・・・会社のお得意様だからな・・・」
この2人が珍しく消極的なのは驚いた
1週間後
その人のお家へ伺った
玄関から奥様が顔を出して「待ってましたよ」と優しいお言葉をかけてくれた
お子さんはもう成人して独立して夫婦とTさんの両親だけの家族構成
平屋の住居で確かに古さはあった
奥様に案内されてリビングへ
知り合いのTさんは今、用事で出かけていていなかった
奥さんからいろいろな怪異現象を聞いた
オヤジと楓は下をうつむいたまま聞いていた
特に人の気配はするという
一番気配を感じるのは洗濯場やお風呂場
何となく背後に人が立ってるという気配がしてゾッとするとか
我が家もお風呂場で人の気配はよくしている
髪や体を洗ってるとお風呂場の廊下になんとなく人が立ってるような気配がしている
もちろん誰もいないけれど
平屋なのに天井から足音もよく聞こえてくるとか
大人というより小さい子供が走り回ってる感じだとか
「パパ・・・ちょっと・・・外に出ていい?」と楓が耳元で囁いた
「どうした?」と小声で聞いてみた
「ダメ・・・ここは私には無理・・・すごい気配・・・あちこちに得体のしれないものが動いてる・・・一度・・・私・・外へ出るね・・・じいちゃんと一緒にね」
オヤジと楓は静かに外へ出て行った
奥さんは「どうしたの?」という心配そうな顔になっていた
「すいません・・2人とも・・・今日は体調が悪くて・・・すこし外の空気を吸ってくると言っていました」とごまかした
しばらくたって2人は戻ってきた
「せがれ・・言いにくいけれど・・・ここはダメだ・・・家全体がすごい負のオーラを放ってる・・・原因はわからんが・・・」
「じいちゃんの言う通り・・・すごい・・・」
「やはり・・・何かこの家にいるんでしょうか?」と心配そうな顔をして奥さんが聞いてきた
「いるというより・・・住み着いてる・・・」
「え・・住み着いているんですか・・・」
「うん・・・じいちゃ・・・」
「こりゃ・・・クソ坊主を呼ぼう、せがれ・・クソ坊主を呼べ」
「オヤジ・・・大丈夫か?」
「今のところはな・・・」
オヤジの顔色がすごく悪い
こんなオヤジを初めてみた
「あのぉ・・・お坊様を呼ぶんですか・・・お坊様はちょっと・・」と奥さんが困った顔をしながら私に話しかけてきた
「はい・・・私の家族もお世話になっていますから・・・」
「いや・・その・・お坊様だけは・・・」と歯切れの悪いしゃべりかた
何かあるのかなと思ったら
どうやら以前にお坊さんによる供養をしたとか
その供養料が数百万円だったとか・・・
その金額を見て卒倒しそうになりかけたが現象が収まるのならということで・・・
供養をしてもらった
ところが・・・収まるところかさらに悪化してしまった
頭に来たTさんはその坊主がいるお寺へ怒鳴り込んでいった
しかし、供養してもらった坊主は在籍しておらず
つまりは詐欺だったわけ
だから奥さんもそうだがTさんもお坊さんに対してすごい疑心暗鬼になっている
とりあえずはお坊さんが必要だということを説明をした
なかなか理解してもらえずに苦労したがなんとか了解をもらった
私は今までの経緯やお坊さんに対しての対応など事細かく和尚様にメールに書いて送った
「それとな・・・アイツに…この辺に直系のホテルかあるか聞いてくれ
今夜はホテルで過ごしてもらう・・・」
「え!?・・・ホテルですか?あのぉ・・宿泊代とか・・・」
「いえ・・大丈夫です・・・」
おふくろにも電話をかけた
少し困った声がした
しばらくして・・・ここから30分のところのホテルに空きがあるのでそこを使っていいと言ってくれた
「ホテルの方はOkが出たぞ、オヤジ!」
「あのぉ・・・宿泊代とか高いんじゃないですか?」
「いえ・・おふくろの系列のホテルですから・・・安心して泊ってください」
「系列?・・・そうですか・・・」
「あとで・・・ホテルから迎えの車が来ると思います・・・」
「両親も一緒で大丈夫ですか?」
「もちろんです、Tさんもです」
和尚様からメールが来た
早急に来てくれると書いてあった
「オヤジ!和尚様、すぐに来るから」
「おう!さすがクソ坊主だ!」
外からクラクションが鳴った
ホテルからの迎えの車が到着した
とりあえずは待ってもらうことにした
Tさんが帰ってこない
「Tさん・・なかなか帰ってこないですね・・・」
「はい・・・電話をしてるんですがなかなか出ないんですよ・・・」
「今日はお仕事ですか?」
「だと思います・・・朝早くに出かけましたから・・・」
「打ち合わせなどしてるのかな・・・」
「とりあえずはTさんのご両親はホテルへ行ってもらいましょう」
私は車の運転手に話をしてもう1度ここへ来てもらえるように頼んだ
「ホテルでゆっくりしてもらえればいいです」
しばらくすると玄関から声が聞こえてきた
「すいません・・・わしゃです・・・」
和尚様の声
奥さんが迎えに行ってくれた
「すいません・・・急いで来ましたわい・・・」と息を切らしていた
オヤジが和尚様になにかコソコソと話していた
「わかりもうしたわい・・・」
「せがれたちは今夜はホテルでおってくれ
クソ坊主と2人で様子を見る」
「え!・・・じいちゃ・・・ダメ!私も残るよ」
「今夜はクソ坊主と様子を見るだけだよ・・・危ないと思ったら早々に逃げるさ」
「今さっき主人から電話があって・・・交通事故にあったみたいで・・・たった今・・「病院から治療を受けて帰ってくる」と言っていました」と奥さんの興奮した声
「え・・・事故・・・じいちゃ!」
「・・・なんかなぁ・・・クソ坊主・・・こりゃ・・・」
「わかっておりますわい・・・」
「奥さん・・Tさんには家へ戻らずにここのホテルへ行ってほしいと連絡してください」と奥さんにホテルの住所の書いてあるメモを渡した
「せがれ達よ、明るいうちにホテルへ行け」
和尚様から新しいお守りと薬をもらってホテルへ向かった
「パパ・・・心配だよ・・・じいちゃんたち大丈夫かな」
「大丈夫だよ、和尚様がついてるからね」
娘3人組は心配そうに私を見ていた
「お坊ちゃま・・・なにか渋滞のようです・・・」
「だね・・・事故かな・・・工事かな・・・」
ホテルへ着いた
ご両親がいる部屋へ行った
Tさんがいた
「なんか・・・すごいことになってますね」
「はい・・・奥さんからいろいろと聞きました・・・今、オヤジと和尚様が家にいます
今夜あの2人が泊まります・・・」
私は早急にS君に我が家は行ってほしいと連絡をした
S君に我が家を見てもらおう
「あのぉ・・・お坊さんを呼んだようですね、大丈夫なんですか?」と聞いてきた
「はい!大丈夫です!我が一族の守り神ですから・・・」
「そうですか・・・」
隣からTさん家族の声がしていた
もうそろそろ午前0時
外の賑わいも消えた
娘3人組はスヤスヤとよく寝ていた
となりの部屋も静かになった
オヤジからの連絡はない
今、どんな状態なのか・・・心配だ
どうも胸騒ぎがする
ホテルのスタッフを一人、部屋の前にいてほしいと頼んだ
楓を起こして部屋から絶対に出ないように言った
「パパ・・・わかったよ・・・うん・・・」
「3人だと心細いと思うけど部屋の外にはスタッフがいるからね」
なにかゾワゾワする
急ぎTさんの家へ
シーンと静まり返っている
部屋の方に視線を向けると部屋の明かりは点いていない
暗闇の中でいるんだろうか・・・
物音もしない
30分経過・・・何の変化なし
大丈夫か・・・・
コンコン
突然、後部から窓を叩かれた
びっくりして後ろを振り向いた
誰もいない・・・・
え・・・すっーーと頭みたいなものが後部の左窓から現れてきた・・・
もう心臓が止まりそう・・・・
うわ!!と叫んでしまった
「おい!「うわっ!」は失礼だろ、せがれよ」
「オヤジ・・・・どういう現れ方するんだ!びっりくりするだろ!」
「それよりも・・・開けてくれ・・・」
「あ・・・ちょいまち・・・」
オヤジと和尚様が乗り込んできた
「大丈夫か?オヤジ?」
「あぁ・・・なんとかな・・・ちょっとやばいぞ・・・とりあえずはここから離れろ」
「わかった」
静かに車を出した
「近くにコンビニがあるからそこへ行け」
コンビニに着いた
「ほっ・・・助かった・・・まさか・・・せがれがいるとはな・・」
「妙に胸騒ぎがしたんだよ・・・ズバリだったな」
「そっか・・・ありがとよ・・車を置いていくのを忘れたのがまずかったな・・・」
「何かあったのか?」
「ありもうしたわい・・・もう・・・死ぬかとおもぃましたわい・・・」
「そんなに・・・」
「あぁ・・・あの家全体が魔物の住処になってるんだよ・・・幽霊じゃないぞ・・・魔物だ・・・まさか・・魔物だとはわからなかった・・・クソ坊主も単なる悪霊だと思っていたからな」
「そうですわい・・・どうも悪霊とは違うと気づき・・・そのまま家から逃げたんですわい」
「よく見たら車が無い・・・仕方ないので・・・家から遠く離れて少しの間隠れていた・・そしたら・・・家の方向に車のヘッドライトが見えたんで・・・まさかと思って戻ってきた」
「そうですわい・・・Fさんだったんで…一気に力が抜けましたわい」
「とりあえずなホテルへ行こう」
3人娘たちは起きていた
オヤジの姿を見てホッとしていた
「じいちゃ・・・無茶はダメだよ・・・次からは私も付いていくからね」
「いや・・今回は非常に危ないから・・・俺とクソ坊主だけでなんとか解決させる」
「そうですわい・・楓ちゃんに危害が及ぶかもしれんですわい・・・大変なことになりますわい・・・うちのオヤジに言われましたわい・・・一族を守れ・・と・・・
おハルおアキちゃん一族を守るのがわしの役目ですわい・・・」
「あのぉ~~すいません」と外からTさんの奥さんの声がした
私は慌ててドアを開けた
「夜分、すいません・・うちの人、来ていませんか?」
「いえ・・・」
「うちの人、いなくなったんです・・・」
「え!!!」
「いつ頃ですか?」
「10分前です・・・皆さんがお帰りになったころに・・・・」
「電話とかしました?」
「はい・・・ところが「通話中」になってて・・・」
「オヤジ・・・」
「やばいな・・・」
Tさん、どこへ行ったのか・・・
とりあえずはフロントへ連絡をした
やはり・・・ホテルからは出ていないようだ
くまなく・・・探すことは不可能・・・
他の客もいるし
困った
一応監視カメラを見せてもらったがTさんらしき人物が映っていない
おかしい
必ずどこかに映るはずだ
非常用出口から外へ出たのか・・・
このホテルは出入りに関してはすごいセキュリティになっている
非常用ドアを開けるとフロントのモニターで警告が出るシステムだ
その警告も出ていない
このホテルの中にいることは確実だと思う
2時間ほどが過ぎた
奥さんが何度もTさんに電話をかけていた
「何で・・・通話中なの・・・」
絶対におかしい・・・
「もうそろそろ警察へ連絡しよう」
「そうだな・・・」
私は最寄りの警察へ連絡をした
2人の警察官がやってきた
いろいろと聞かれた
すぐに行方不明者の手配をしてもらった
もう朝6時になった
警察の方も人数を増やしてホテルや近辺を聞き込みや捜索をしていた
しかし・・・Tさんが見つからない
私は警察にTさんの家にも警察官を派遣してほしいと頼んだ
Tさんの奥さんとオヤジと和尚様もパトカーに同乗してTさんの家へ向かった
Tさんの奥さんがカギを・・・もう開いていた・・・オヤジたちが慌てて逃げだしたから・・・
Tさんの奥さんが何度も呼んだが返事はなかった
もちろん家の中も捜索はした
誰もいなかった・・・
Tさんの奥さんの顔から血の気が引いていた
「とりあえずは・・・ホテルへ帰りましょう」と私は提案をした
みんな、黙っていた
Tさんはどこへ行ってしまったのか・・・
3日間、捜索をしたが結局Tさんは見つからなかった
Tさんの奥さんとTさんの両親は息子さんの元へ行くことになった
Tさんの家の怪異現象はその後、どうなったかはわからない
半年後・・・Tさんの奥さんから電話があった
Tさんは・・・あの家の中で全裸のまま死んでいたとのこと
奥さんと息子さんが掃除のために家に行きTさんを見つけたようだ
その連絡を受けてすぐにオヤジに話をした
「そっか・・・・見つかったか・・・せがれ・・・言いにくいが・・・Tさんは魔物に喰われたんだよ・・肉体じゃない・・魂を喰われたんだよ・・・恐らく、あの時のホテルから魔物に呼ばれたんだろうな・・・あの家・・・もう解体した方がいい・・もちろん、他人が言えるわけじゃないけどな・・・」
「オヤジ・・・」
私は一応、奥さんにあの家の経緯を話をした
奥さんは涙ながらに理解を示してくれた
楓やオヤジの言った通りだな・・・
作者名無しの幽霊
最悪の結末になってしまった・・・
悪霊ならオヤジたちは何とができるとは言っていたが魔物相手だとオヤジでさえ手に負えないと言っていた
悪霊と魔物の違いをオヤジは説明をしてくれたが全然わからん
楓もオヤジの話を聞いて何度も相槌をうっていた
「じいちゃんの言う通り・・・無理だよ・・・敵うわけがない・・・パパ・・・悪霊と魔物では住む世界も違うし力も全然違うんだよ・・・ましてや人間のことなど言うこと聞くはずはないから・・・今回は・・なんとかじいちゃんたち逃げてこれたけど・・・今度は間違いなく負けるよ・・・パパ、1か月の間は十分に用心してね・・・
次はパパを狙ってくるから・・・」
「え!!!マジかよ・・・」
「うん・・・」
「どうすりゃいいんだよ」
「パパ・・・夜の11時以降は絶対に家から出ないこと・・・家の中なら安全だよ・・・じいちゃんと私がいるからね・・・」
「わかった・・・まぁ・・・夜の11時以降は用事は無いからいいとは思うけど・・・」
「パパ・・・油断しちゃダメ・・・どんな手段で来るかわからないから」
「わ・・・わかった」
楓の恐ろしい話を聞いて内心、心臓が止まりそうになった
恐らく・・・夜は外への用事はないとおもうけど・・・・楓の話だと「普通に生活をしてればいい」と言っていたが・・・あんな怖い話を聞いて普通の生活などおくれないよ
まぁ・・・
およそ1か月が過ぎだが何事も起きることはなかった・・・
只・・・
私のスマホに死んだはずのTさんからの着信が1回だけ残っていた・・・
それも・・・留守電に・・・も
恐る恐る・・・聞いてみた・・・・
Tさんの悲鳴が入っていた・・・・
壮絶な断末魔の叫び声だった・・・
私はしばらく放心状態に陥ってしまった