中編3
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丑三つの隣人

午前2時。

アパートの部屋で1人、世にも奇妙な物語を見ていた。めちゃめちゃ面白いな。気がつけばこんな時間になってしまった。夜更かしは独り者の特権だ。

あ、酒が無くなった、腹も減ったな……。コンビニ行くか。ビールとカップ麺を買おう。部屋の電気を消して行く、節電だ。玄関の灯りも消す。一瞬真っ暗になったがドアを開ければ通路の照明がすぐに射し込んできた。不自由なく履物をつっかけ外へ出る。このアパートの廊下は外廊下だ。掃除がされていないから足の下がジャリジャリしている。裸足にサンダルだからペッタペッタと音がする。真夜中は小さな音でも大きく聞こえるものだな。しかし薄暗いなぁ、まだ蛍光灯だよ、早くLEDライトにしろ。

今夜は生ぬるい風があった。身体にまとわりつくようで気持ち悪い。

「薄気味悪い夜だな」

戸締りをしようと鍵を取り出した。ディンプルキーだ。

「……?」

変な気配がする……。さぁーっと毛が逆立った。痒みのような寒気がしてブルッと肩がすくんだ。

「……」

ん? 誰か来た? え? 誰? スゥーッと音もなく現れた。

「……あ⁈」

あああ、何だ、お隣さんか、びっくりした。気のいいおじさんだよ。

「こんばんは、午前様ですか? 大変ですね」

ン? シカトか? 無言で通り過ぎた。顔色が物凄く悪い……。後ろ姿もどことなく幽霊のように影が薄い。

「……まぁいいや」

ガチャリと鍵を回す。

ンン? アレ? お隣さんこの前、心筋梗塞だか脳梗塞だかで病院に担ぎ込まれなかった? 退院したのか? 

左隣を見た、いない。薄暗い蛍光灯の下には誰もいなかった。

「……」

もう部屋に入ったのか? 嫌、鍵を回してドアを開け閉めする音が聞こえなかったし、わずか数秒で中に入れるものか?

「……」

そういや、来た時にも足音が聞こえなかった。この廊下は民家側の壁が高いからわりと音が響くんだが……。煙のように現れて消えてしまったというのか……。

ふわ~と発光体が現れた。

「……?」

上へ、左へ、ふわ~り、ふわ~り。目で追っていくと最後はアパートに吸い込まれていった。

ゾクッ。

さっきの痒みのような寒気が再び襲った、今度は3倍だ。

ゾクッゾクッゾクッゾクッゾクッ。震えが止まらず両肩を抱いた。

「……」

ハッとした。お隣さんはその後、入院先で亡くなったんじゃ……?

ゾクッ。

その時、パチッと蛍光灯が明滅した。

手足が一気に冷たくなった。腹に氷を詰め込まれたように身体が芯から冷え、氷水のような汗が頬を伝った。

そうだ、思い出した。つい最近親族の方が来ていた、それは遺品整理の為じゃなかったか?

こんな挨拶もしたな……。

『生前はお世話になりました』

『ご愁傷様です』

……アワワワ、

そそうだ、坊さんも来ていたじゃないか。

『かんじーざいぼーさつ、ぎょうじんはんにゃらはーらーみーたー……』

ゾワッと鳥肌が立った。

ひえええー! 出た!! 幽霊!!

コンビニどころじゃない、オレは部屋へ戻ろうと急ぎ鍵を回し、ドアを開けた。

闇の中、そこには、

「ギョッ⁈」

隣人がいた。

「!!」

―ごめん、間違えた

ウワアァァァーー!!

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