私が初めて、「そういうもの」を見た時の話です。
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小学校1年生の時、友達の家でファミコンをして遊んでいました。その子の家は、6階建ての団地の5階でした。
テレビに向かって右側にベランダがあり、網戸ごしに、向かいの団地の、ベランダのない、小さな窓が並んでいる面が見えました。
私がゲームオーバーになり、友達の番になったので、何気なく外に目をやりました。
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すると、腰までの長い髪で、ふくらはぎぐらいまでの黒いワンピースを着た女が、
1階の窓のひさしの部分から、となりの窓の方へ足をかけようとしているのが見えました。
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私は笑いながら、「あの人鍵を忘れたのかな?」と言いました。すると友達はゲームに夢中で、「え?」と言っただけでした。
ただ、何かがおかしいと思いました。よく見るとその女ははだしで、しかも窓のない、平らな壁の部分を、ゆっくり、
なんというか…機械的な動きで、全く力をかけずに、「くまで」の様な手の形で登っているように見えたのです。
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友達がゲームをとめ、「どこ?」と聞いてきたので、私は外を向いたまま「あの人」と言うと、友達は首をのばして向かいの団地を見て、
「だれもいないじゃん」と言いました。
その間も、女はゆっくり登っていっていて、私たちと同じ高さまで近づいてきていました。
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「え?あの人だよ!」と言いながらゆびを指すと、女の動きが、ぴたっと止まりました。
その時、(あ…聞かれた…)と思いました。距離からして、絶対にそんなことはある筈がないのに、はっきりとそう思ったのです。
そしてなぜか、見たくないのに、まるで固定されたように、目を逸らせないのです。
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息苦しくなりながら見ていると、女がゆっくり、こちらに顔を向けるように動き始めたのが見えたので、怖くなった私は「なんでもない!」と言い、テレビの方に頭をふり、友達もゲームを再開しました。
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目を逸らせられた事に少しほっとしながらも、まだ怖かったので、友達の話に返事もできずうつむいたままでいると、ふいにテレビ台のガラスが目に入りました。
そこにはベランダと部屋との境目が映っていたのですが、今度はそこから目を逸らせなくなりました。
(ああまただ…どうしよう…)と思い、ぎゅっと目をつぶり、ゆっくり開いて見てみると
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白い足首が立っていました。
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shake
驚いて思い切り息を吸ったところで意識が途絶え、気がつくとわたしは汗びっしょりで、その場であお向けになっていました。
玄関からバタバタと、私の母が入って来るのが見えました。後で聞くと、私は失神したらしく、心配した友達のお母さんが、母に連絡をしてくれたようでした。
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帰り道、何があったのか聞かれても、口にするのが怖かったので、何も言えないまま母にしがみついて家まで帰りました。
あの時見た
あの異様に白い足首を、
まだ忘れることができません。
作者もくれん