短編2
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法律相談 案件2

今回の相談は、30代半ばの女性からだった。なんでも、その女性は結婚しており、夫の実母についての相談だという。

「うちの義母のことなんですが」

「はい」

「その前に、義父はずいぶん前になくなっているらしくて、私が夫と知り合った時には、もう義母だけだったんですね。それで、その義母なんですが、先月、車も財布も携帯も何もかも自宅に残して、いきなり失踪したんです」

「えっ。認知症とかですか?」

「分からないですけど、そうかもしれません。そういうときって、遺産ってどうなるんですか?」

「えっと、基本的には、亡くなっているかどうか分からないので、すぐに相続ということにはならないんですが・・・どういう状況で失踪されたか、伺ってもよろしいですか?」

「先々月だったと思うんですが『お父さんが迎えに来た』って言い出したんですよ。お父さんっていうのは、義母の夫のことですね。うちは、義母とは同居してませんけど、月に一度くらい、義母は自宅がある〇×町から自分で車を運転して孫の顔を見にくるんですね。年齢のわりに凄く元気だったんですよ。」

「ええ」

「でも、先々月にうちに来た時は全然元気がなくて、『お父さんが迎えに来た』って」

「どういう意味ですか?」

「なんというか、私には詳しく聞いてないんですが、どうも、そのお父さんって方は不慮の事故で亡くなったらしくて、それで義母の心の中にも何かあったんじゃないですか?」

「そうですか・・・現状では、先ほども申しましたとおり、すぐに相続とはならないですね。今できることといえば、警察のほうに捜索願を」

「捜索願って、意味あるんですか?警察には相談しましたよ。意味わからないですけど、私が疑われて、何回も事情聴取されて指紋とかも取られたんですから。早く義母の財産を整理したいんですが、何か法的な手段はないですか?」

「え?あの、ちょっと無理かと」

「あー、そうですか。じゃあもう結構です。ありがとうございました」

「は、はい」

女性は、そそくさと相談料をおいて事務所を後にした。

付近の町の山中で、老女の遺体が発見されたのは、その数日後のことである。報道によれば、死後数か月が経過した遺体であり、遺体は損傷が激しく、死因は特定できないとのことであった。

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