【お節介怪談】リョウメンスクナ

中編6
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【お節介怪談】リョウメンスクナ

【注意】

こちらは自分の体験談やオリジナル作品ではございません。

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洒落怖を始め、インターネット上には様々な興味深い怪談や不思議な話がありますが、長編も多く、

「あらすじで知りたいんだけどな…」

「全部原文で読むのは勇気が…」

などといった人もいるのではないかと思い

お節介にも\結末までネタバレで/

できるだけ手軽に読めるよう心掛けお送りしたいと思います乁(-ω-乁)

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個人的な感想や考察は解説欄に記載致します!

それではどうぞ…

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【形式】

体験談(一度投稿は途切れ、少ししてリョウメンスクナについて話を聞く事ができ改めて投稿された)

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【投稿時期】

2005年9月

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【登場人物】

俺→投稿者。建築関係の仕事をしており、岩手の古い寺を解体中に結合双生児(胎内で結合して生まれた双子)と見られリョウメンスクナと呼ばれるミイラが入った箱と出会う。

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中国人バイト達→解体作業を共に行った2人のバイト。ミイラの箱を勝手に開けてしまう。

元住職→解体中の寺の元住職。80歳超えのようだが、リョウメンスクナの管理について歳とは思えない勢いで怒った事から、リョウメンスクナが如何に恐ろしいかを物語っている。

元住職の息子→父の跡を継ぐ予定だったが、詳しくは言わないものの自身の怠慢で寺は放置となり、ミイラもそのままになったと言う。

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物部天獄→読みは「もののべてんごく」

結合双生児からリョウメンスクナのミイラを作った人物とされるカルト教団の教祖。大正時代の人物で、元住職の息子により俺に語られる。純粋な日本人ではなかったと言われるとの事で、朝鮮人であったと暗に言われる。

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【前情報】

岐阜県の飛騨地域に伝わる実際の伝承で、日本書紀に両面宿儺(りょうめんすくな)という鬼神、怪人とされる人物が登場します。

フィクションでは神や妖怪などとして扱われる事が多いようですが、日本書紀によるとヒトであるとされているようで、この洒落怖『リョウメンスクナ』に登場するミイラのように、結合双生児の奇形であったのかもしれません。

伝承の両面宿儺は、基本的には「宿儺」とだけ呼ばれるが、顔が2つある点を強調し「両面」が通称としてつく場合があるそう。

また、悪い存在ではなく、悪鬼を退治したり、農業を指導したりと民に慕われた存在だと言います。

ちなみに、漫画『呪術廻戦』にリョウメンスクナが登場する事で話題になりましたが、邪悪な描き方をしている事から、洒落怖の『リョウメンスクナ』をモデルにしているのでは?と言われています。

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また、「俺」は結合双生児をシャム双生児と表現していますが、著名な結合双生児がシャム(タイ)出身であった事から言われる名称で、シャム自体は関係がありません。

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俺が古寺を解体していると、同僚から見て欲しい物があると呼ばれた。

行ってみると、人1人が余裕で入る大きさの古びた木箱があり、フタにはボロボロで所々しか読めない字が書かれた紙が貼られていた。

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「大正? 年? 七月? ノ呪法ヲモッテ、両面スクナヲ? 二封ズ」

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フタは釘で打ち付けられており、管理業者が元住職に確認してくれたところ、翌日、元住職が絶対に開けるなと言っていたと俺達に伝えられた。

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しかし、既に中国人バイト達が面白半分に開けてしまっており、当人達は放心状態で座っていた。

日本語が流暢な2人だが、一切しゃべらない。

2人は一応病院へ送られた。

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箱の中身は、シャム双生児と見られる奇形のミイラだった。

顔が2つあり、腕は左右2本ずつ、胴や脚は1人分であった。

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ミイラをどうするかと困っているところに、息子の運転で元住職がやってきて「開けたら終い」と物凄い剣幕で怒った。

更に元住職は息子に対し強い岩手弁で「あの時京都の寺に送ると言ったのに何故しなかったのか」と怒鳴った。

(寺の名前も言っていたようだが、俺は聞き取れなかった)

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元住職は、開けた者達はもう駄目だろうという事、俺達(現場でミイラを確認した者達)はお祓いはしてやるが長生きできないだろうという事を告げ、俺達のお祓いをしてからミイラの箱を車に積み帰って行った。

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その後、中国人バイトの1人は病院で謎の心筋梗塞により死亡、もう1人は精神に異常をきたし精神病院へ移送された。

ミイラを見た作業員の内3人が謎の高熱で寝込み、俺は作業中に釘を踏み抜き5針縫った。

俺が思うに、物凄い形相であったこのシャム双生児のミイラは酷い差別で苦しみ死んでいったのでは無いだろうか。

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と、ここまでの投稿後、俺は元住職の息子に電話でミイラの曰くについて聞く約束を取り付けた。

元々は直接会うアポを取っていたが、父にバレるとまずいとギリ電話ならば…という事であった。

それでも全ては話さないと言った。

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大正時代頃、シャム双生児は岩手で生まれしばらく暮らしていたそうだが、生活に困った親に売られ見世物小屋に流れた後、カルト教団の教祖・物部天獄の目につき買われた。

この教団は本物の邪教で外法を行うそうだ。

※カルト教団は今もひっそり活動している可能性があると、住職の息子は教団名を伏せた。

シャム双生児は、物部天獄により無理に即身仏にされリョウメンスクナという呪仏及び本尊の扱いを受ける事になったのだが、"即身仏の作り方"が非常に残酷なもので…

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物部天獄はこのシャム双生児以外にも奇形の人を何人か購入し、部屋に閉じ込めヒトの蠱毒を行った。

※蠱毒とは、虫を複数壺に閉じ込め、共食いをさせて生き残った一匹を餓死させ、呪物とする儀式のようなもの。

しかも物部天獄は、シャム双生児以外の人々には致命傷を負わせ確実にシャム双生児が生き残るようにしていた。

住職の息子が思うに、阿修羅像のような神々しい姿に惹かれたのでは?という話だ。

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共食いをし、生き残ったシャム双生児は改めて別の部屋に閉じ込められ、自身の糞尿を食べてまで長期間必死に生きた末、餓死した。

物部天獄はシャム双生児を防腐処理し即身仏とし、伝承にある両面宿儺のような姿から、リョウメンスクナと名付け本尊とした。

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物部天獄は大勢の人を呪い殺す為の呪物(呪仏)を作り上げたかったのだと言う。

住職から息子が聞いた限りでは、日本の国家そのものを憎み、日本を呪う為の道具を作ったと。

日本への恨みは相当のものだったようで、ただ即身仏にしただけでなく、どこかの遺跡から盗んだ古代人(朝廷により滅ぼされた逆賊)の骨を粉砕してシャム双生児の腹に仕込んだそうだ。

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呪いだなんてにわかには信じられないと俺は言ったが、住職の息子は「私もそう思う」とは言いつつも、短い大正時代にはこれだけの災害があったと告げた。

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 1914(大正3)年:桜島の大噴火(負傷者 9600人)

 1914(大正3)年:秋田の大地震(死者 94人)

 1914(大正3)年:方城炭鉱の爆発(死者 687人)

 1916(大正5)年:函館の大火事

 1917(大正6)年:東日本の大水害(死者 1300人)

 1917(大正6)年:桐野炭鉱の爆発(死者 361人)

 1922(大正11)年:親不知のナダレによる列車事故(死者 130人)

 1923年(大正12年):9月1日、関東大震災、(死者・行方不明14万2千8百名)

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これらの災害は、各時期にリョウメンスクナが移動した場所で起きたという。

特に注目すべきは1923年9月1日の関東大震災で、この地震の直前に、物部天獄はリョウメンスクナの前で首を斬り自殺した。

死んだ場所は震源近くの相模湾沿岸当たりだったと言い、血文字の遺書には

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日 本 滅 ブ ベ シ

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と書かれていたそうだ。

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あくまで噂としては純粋な日本人ではなかったらしい。

何故現在リョウメンスクナが岩手にやって来たかは住職が話してくれなかったので息子は知らず、住職とはしばらく連絡が取れないそうだ(妙な車に後をつけられたりするようになったと聞いているそう)。

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俺は、全ては話せないと言ったのに何故ここまで話してくれたのかと住職の息子に尋ねた。

すると「(「俺」は)長生きできないと言っただろう」と告げ、もう電話してこないでねと終話した。

ちなみに息子が話したこの内容は全てでは無いし、俺も聞いた話をかいつまんで投稿している。

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