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中編3
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don't lose me

漆黒に包まれた世界にポツンと光の灯った箱がある。

空から見渡したらきっとそんな見え方がするのだろう。

公共交通機関まではメロスでも走破出来ないであろう開きがある。

迷い車が一台たどり着けばまだ多い方である丑三つ時。

もはやなぜ24時間営業を続けているか分からない。

まぁ、そのおかげで俺はこうしてこのコンビニで働くことが出来ているのだけども。

人と関わることが苦手だからこそ、この環境は俺にとって天国だ。

そもそもお客さんも来ないから接客をすることもない。

店員も俺一人しかいないから自分で好きなタイミングで仕事を進めることが出来る。

どうか潰れないでくれ。

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バックヤードからペットボトル飲料の補充を行っていた。

どこのコンビニにもあるような、棚に細かいローラーがついており、少し傾斜があるタイプの巨大冷蔵庫だ。

ガチャコン、ガチャコンと深夜のコンビニに虚しく補充の音が鳴り響く。

何も考えず、肩膝立ちでひたすら放り込んでいく。

ガチャコン、ガチャコン、ガチャコン。

するとその音の中にガチャっと店のガラス扉が開く音が混じった。

おっ今日は珍しくお客さんが来たと思い、俺は手を止めた。

こちらに向かってくる足音。

巨大な冷蔵庫の扉が開けられた。

棚の隙間から覗こうとしても、傾斜がある為見えずらい。

恰幅からするにちょっと太り気味の男性ということはわかった。

お茶のペットボトルが抜き取られ、冷蔵庫の扉が閉じられた。

そのままレジへと向かって行くようなので俺は慌てて立ち上がり、バックヤードから出た。

「申し訳ございません〜、お待たせいたしました〜」と言いながら俺もレジへと向かった。

陳列棚を抜けレジを見ると、そこには誰もいなかった。

開けっぱなしのガラス扉。

あれっと思い、出口に真っ直ぐ向かいながら格陳列棚を見渡していった。

いない・・!?

まさか、やられた?ペットボトルだけ抜き取ってそのまま出ていかれた?

どんだけスマートな万引きだよ。

腹が立った俺はそのまま外に出て辺りを見回した。

敷地から少し出てみたが、街頭が全然ない為、巨大怪獣が現れても見つけることが出来ないレベルの闇夜。人なんて絶対に見つけられない。

クソっと内心毒づきながら踵を返した。

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せめて犯人がどんな容貌かだけでも目に納めたくて、バックヤードに戻り、防犯カメラの映像を見ることにした。

椅子に座り、モニタを眺める。

男性が入店してきた時間まで巻き戻していく。

こいつか。

身長が結構高めで、180センチくらいはありそうだ。

隙間から眺めた通り、ちょっと太り気味である。

無地の濃灰色のTシャツに、ジーパン。

黒いリュックサックを背負っている。

長髪で顔を覆ってしまっており、ご尊顔を拝見出来なのが残念だ。

真ん中の通路から飲料コーナーへと向かい、お茶を抜き取った。

そのままレジへと向かっていくがレジを素通りして、出口へと向かっていく。

そのタイミングで俺がバックヤードから出来てきた。

俺が通路を抜ける直前のタイミングで、その男は反対側の陳列棚へとUターンした形でまた店の奥側へと進んでいく。

「ん、どういうことだ・・?まだいるってことか?」と俺はひとりごちた。

俺が出口へと向かうと男はバックヤード側の扉へと向かっていく。

そしてちょうど真ん中の陳列棚で俺たちは直線上の立ち位置となった。

俺の視界に入らないように、見計らってかの動きに見える。

恐る恐るバックヤードの出入り口の頭上に備えられているカメラの位置へと切り替えた。

そこには正面に映った男と、店外へと出て行く俺の後ろ姿が映る。

男は立ち止まり、リュックから何かを取り出す。

それは手斧のような造形をしている。

男がカメラ目線でこちらを見て、半月の様な口角でニヤッと嫌な笑みを浮かべて映像から消えていった。

そして、男が出て行く動きもないまま、店内へと戻ってきて脇目も振らずにバックヤードへと入っていく俺の姿が映っていた。

Concrete
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