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中編3
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渦の中心

高校のときの話です。

地方都市にあった高校でしたが、1年生で新しく班になった6人の中の1人のT君が、片道2時間も係る、ものすごい田舎の子でした。

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面白そうだという事になって、班全員で遊びに行く事になりました。

電車で支線に乗り渓谷の様な場所を延々と走ります。

「なんか涼しく感じるなぁ」

「おい、ここ、パスポートが必要なんじゃないか」

楽しくて盛り上がりました。

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木造の古い駅舎に着くと、T君が迎えに来てました。

「よくきたね」

「おい、T。遠過ぎるだろ」と友達が言うと、T君は申し訳無さそうに口を開きます。

「あ、ここからまだバスに乗るんだ…」

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乗った駅で買ってきたドリンクも全て飲み終わった頃、誰も乗ってない古いバスが到着しました。

「ちぇっ…どんだけ待たすんだよ」

僕たち以外誰も乗らずに出発です。

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山道を走り、バス停の標識以外何も無いバス停で降りました。

「すげぇ田舎だな」

「もう昼過ぎだよ」

静かすぎて「シーン」という音が聞こえるほどでした。

そこから6人で歩き始めました。

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「なぁ。どれぐらい係るの?」

「いやぁ。20分ぐらいだよ」

「20分!もう帰るわ」

「あ、バスはもう20時まで無いよ」T君。

「おいT。これ軟禁だぞ!」

馬鹿話をしながら歩く6人。

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畑で野良仕事をしている人が見えます。

「あ、第一村人発見!」

僕もなんか楽しい事を言おうと考え

「ねぇT君。さっきツチノコいたよ」と言ってみました。

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その言葉に、一緒に来た友達が反応しました。

「おう!さっきいたな!そこの畑で」と乗っかりました。

笑いながら、みんなで言い始めました。

「俺も見た。T、カッパもいるんじゃない?」とみんなでからかいました。

「カンベンしてよ。そんなのいないよ」とT君。

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ようやくT君の家に着きました。

お寺の様に、平屋で大きな家でした。

「わぁすげぇ!」

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そこからは、ゲームで盛り上がったり、近くの川で泳いだりしました。

20時までバスが無い事を知っていたので、ご飯もごちそうになったり、T君の部屋で映画を見たりしました。

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19時も廻り「そろそろ帰るか」という事になりました。

真っ暗な山道を遊び疲れた僕たちは、口数すくなに歩きました。

バス停に近付くにつれ、賑やかな声が聞こえてきます。

「あれ…。なんだ。大勢の人がいる」とT君。

「珍しいの?」

「いや。お祭りの時しかないよ。こんな事」

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老若男女、真っ暗な中にたくさんの人が動いています。

誰もいなかったバス停の辺りは、ものすごい人です。

なんか普通の状態では無い様に映りました。

焦っているというか、忙しそうというか…。

「すみません。何かあったのですか?」とT君がお百姓さんに聞きました。

すると衝撃的な言葉が返ってきました。

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「ツチノコを見たんだ!」

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「え…。いつ?」

「今日の昼ごろ」

「おい…。KOJIのウソから始まったんじゃねぇか」

「やめてよ。ただのギャグじゃん…」

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一人のお百姓さんが、 朝のぼくたちの軽口を聞いて、何かの動物をツチノコと思った様です。

それを家族に言ったら、一家総出で探し始めた様です。

それを見た他の家族もツチノコを見た気になり、大騒ぎになってしまった様です。

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僕の小さな一言が、とんでもない事を引き起こしていました。

村人全員が「見た!」「見た!」と…。

ものすごく怖くなり、すごい人数の村人をかき分け、知らないフリをしてバスに乗った僕たちでした。

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集団催眠というか、集団デマというか…。

余計な事を言うんじゃないと反省した出来事でした。

Concrete
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@Y・Y さま
T君に聞いたら、翌日には全員が我に返った様に熱が冷めて、全くツチノコ騒動を忘れてしまった様な雰囲気だったそうです(苦笑)
その後もT君は皆勤でした。

いつもコメントありがとうございます!

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