遅くなりましたが続きです。
前編を読んでない方は是非、「みやびちゃん(前編)」を読んでね☆
そしてノートの続きから読むと、
「ここで1つ問題があり孤児院では「両親揃っての面談」が条件だった。両親、つまり私と彩になるのだが、これは実質不可能と言ってもいい。
何故なら、彩は必ず「雅という名の骨壺」を連れていくと言って聞かないだろう。
そして面談時に中身を見せながら「娘の雅ちゃんです!」なんて言おうものならすべてが終わる。
ここでも悩んだが、電車でかなり離れた駅まで行き、駅前で立っている娼婦に
「身体は売らなくていいから、この日に時間を売って欲しい」と頼みに行った。
一晩娼婦と過ごす料金の五倍の値段で数人交渉した結果、私と同世代か少し上位のお姉さんが引き受けてくれた。
この料金の内訳は、「同伴料金」「口裏を合わせるためにセリフを暗記する手間賃」「口止め料」だ。この料金とは別で交通費も支払っている。
迎えた面談の日、結果から言うと楽勝だった。
娼婦のお姉さんには事前に「妻が子供が出来ず病んでしまっているので、孤児を引き取ろうと思うのだが、面談が近づいてきたのに体調を崩して入院してしまった。」
「両親揃ってが条件なので、この機を逃すと次いつになるか分からないし、今回引き受ける予定の子どもがとてもいい子なんだ。だから協力して欲しい」とでっち上げた理由を付けて、平身低頭頼み込んだ。
よくよく考えるとものすごく怪しい話だが、お酒の席を利用したので
「良いね!お兄さん熱いね!喜んで協力するよ!!」と特に疑いもせず協力してくれた。
当日も最高の演技をしてくれたお陰で、すんなりと決まったのだ。
無事養子の受け入れも決まり、次にやるべきことは、あの目立つ「雅ちゃん」をどうするかだ。
今は骨壺に入っているが、そこそこ大きい。
例え外から来た人間が子供だとしても、「え?」と思うだろう。
養子の手続きや受け入れ準備で2か月後にお迎えする予定だ。
彩には「遠い親戚の子を育てる事になった。女の子だから雅のお姉ちゃんだ。私たちの子はまた落ち着いたら考えよう」と伝えてあり、「雅ちゃんにお姉ちゃんが・・・嬉しい!!!分かりました!私もしっかり稼がないとですね!!」とすんなり了承。
この物わかりの良い(?)点だけは毎回助かっている。
後日私は彩に、「雅もたまにはオシャレしたいだろう」と言い、一回り小さい箱を用意した。
デパートで買った女の子受けしそうな柄の箱。
これには彩も「あらあら!可愛くて良いですね!!」と乗り気だった。
「着替えさせて来るから待っててくれ」と言うと彩は「はーい!」とおとなしく待った。
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これは着替えと言う名の「お墓の引っ越し」だ。
箸で骨を拾い、丁寧に移す。すると小さい入れ物になったのと、壺から箱に形状が変わったため、入りきらない骨が有る。
「…済まない」と謝罪しながら、骨を折って詰めた。あの作業は本当に心が折れそうだった。
これを2か月間続け、最終的には8cm×8cmの正方形の箱で落ち着いた。」
このノートの横に有ったこの箱の事だ。
つまり夢で見た骨壺がこの箱という事になる。
・・・しかも中身は本物の人骨。
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ふと、ここに居る時間がかなり長くなってきている事に気づく。
裏口から入り、このノートを読み進めて既に50分は経っている。
本当は最後まで読みたいところではあるが、そろそろ幸太がしびれを切らす頃だろう。
かといってこのノートも箱も持ち出す事は出来ない。
・・・だって犯罪日記と、言い逃れ出来ないレベルの物的証拠だから。
案の定幸太から電話が掛かって来た。
幸太「どう?ゆっくり見れたー??」
私「あぁ、少ししたら出るよ。ありがとう」
幸太「ねえ、ちょっと先の自販機でジュース買ってきていい??喉乾いてさー」
「ああ良いよ」と言いノートを机の上に置いたときに、「カタン」という音がした。
スマホのライトを使ってノートを読んでいたが、電話に出たため手元の明かりが無かった。
机に有った例の箱にノートが当たって下に落としてしまったらしい。
私「やっべ・・・!!!!」
幸太「どうしたの??」
私「い、いや何でもない、ジュース俺の分もよろしく」
と伝え電話を切った。
急いで机を照らすと、箱が無い。
床を照らしたら少し離れたところに落ちていた。
「すんませんすんません・・・・!!!!」と拾い上げ、慎重に机に戻した。
その時ノートから一枚はみ出した紙が目に入り「その箱は絶対」という文字が見えた。
ノートからその紙を抜き取り照らしてみたところ、
「その箱は絶対にその場所から動かしてはならない」と書いてあった。
私「・・・・・最初のページに書いてくれよ」
そしてその下には、「雅ちゃんが来る」
と書いてある。
「・・・・・・・・え」
雅ちゃん、この箱の中身の子。
頬を冷たい汗が伝った。
「そ・・・そんな訳な・・・」と言いかけた時、
shake
「ガラガラガラ」
と扉が開く音がした。
「こ・・・幸太・・・だよな」
すぐ幸太に電話を掛けると、2コール目で出た。
「あ、終わった??すぐ戻るね!そこの自販機で昔の同級生に逢っちゃって話し込んじゃってさー!ごめんね!すぐだから!」
と電話が切れた。
下に居るのは幸太じゃない・・・。
すぐまた幸太からの着信が。
幸太「ねぇ、雅兄ちゃんどこに居るの?」
何かが家の中に居る・・・そんな恐怖からものすごい小声で話した。
私「まだ家の中だよ」
幸太「あれ?兄ちゃん?雅兄ちゃん??電波悪いのかなぁ・・・裏口鍵掛かってるし、どこ行ったんだよー・・・」
そして電話は切れた。
私「裏口の鍵が…掛かってる?」
鍵は外からかけるタイプの南京錠だ。中から鍵は掛けられない。
ここに来て最悪の事に気づく。
「南京錠の鍵を私が持っている事」に。
まさか閉じ込められるとは思っていなかったから、鍵を持って入ってしまった。
こうなると幸太に連絡が取れても窓を割って入ってもらうしかない。
もう一度電話を掛けようと試みたが、何故か「圏外」の表示になった。
「やばいやばいやばい!!!!!」
救出は見込めない・・・だいたい家の中には誰かが・・・・。
・・・あれ?・・・そもそも何で外の鍵が掛かってるんだ?
誰かが入ったなら外の南京錠はそのままのハズだ。
2人で来て、1人が中に入りもう1人が鍵を掛けた?そんな事する??
そんな事を考えていた時、そう言えば、裏口のドア・・・開いた音はしたが、閉まる音がしなかった。
古いドアだからそれなりに音が出る。「ガラガラガラ」と開ける時の音は確かに聞いたがその後音は聞いていない。
普通だったら「開けっ放し」の状態だ。だが閉めてないのにドア閉まってて、ご丁寧に外から鍵まで掛かってるってことは・・・・。
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答えは一つしかない・・・「雅ちゃん」が来たんだ。
階段を恐る恐る覗くと、下の明かりが見える。
勢いよく飛び出していけば出られるだろうか・・・・・怖い。
「ズ・・・ズズ・・・」
何か這うような音が聞こえる。
本格的にヤバい・・・今日ここで死ぬかもしれない。
そんな事を考えていると、電波が回復したのか電話が入った。
私「やった!助けが呼べる!!」
表示は幸太だった。
音を立てないように部屋の奥まで小走りで行き、通話ボタンを押した。
私「もしもし!?幸太!今俺・・・」
「み・・・・・ザザッ」
私「幸太?幸太!!」
「ザザッ・・・・・」
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「み ぃ ー つ け た」
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血の気が引くのが分かる。
今の声は電話口から聞こえたんじゃない・・・・私の後ろから聞こえた。
ドクンドクン・・・振り返れない。
身体が動かない・・・だって後ろに居るんだろ・・・。
私「助けて・・・助けて助けて助けて・・・・」
「ヒタッ・・・」
肩に冷たい何かが乗った・・・
恐る恐る視線をやると
私「真っ黒い・・・子供の・・・手・・・・だ」
そのあと何か言っていた気がしたが、記憶はない。
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目が覚めたのは病院のベットの1室だった。
看護師さんが私が目覚めた事に気付き、パタパタと走って行った。
すぐに主治医らしき人が部屋に入って来て、「雅さん、具合はいかがですか?」と聞いてきた。
そんな事を聞かれても、まだ脳が現状に追いついて来ていないので「悪くないと思います。」
とだけ答えた。
医「ご家族に連絡しました。直ぐ向かうと聞いています」医師はそう言い私の血圧を測った。
主治医は「気分が優れなければ、すぐナースコールを押して下さいね」と言い病室を後にした。
しばらく経って病室に最初に到着したのは幸太だった。
幸太「雅兄さん!調子どう!!?」
大袈裟にベッドに近付き、私の顔色を伺った。
私「あぁ、心配掛けて申し訳なかった。大丈夫だよ。」
そう答え、気になったので今日が何日かを聞くと、「兄さん、あの日から1週間寝てたんだよ・・・」
私「い、1週間!!?」
や、ヤバい。そんなに経ってたのか・・・会社は無断欠・・・と最悪な事態になったと考えていると、
幸太「あ、そう言えば雅兄さんの会社には連絡してあるよ。親戚の家で引越し手伝ってたら、熱中症で倒れて入院したって事伝えたから、無断欠勤にはなってないよ」
と朗報が伝えられた。
私「良かった助かった・・・ありがと」
私が安堵していると、幸太は「雅兄さん・・・聞きたい事が有るんだけど・・いい?」
いつにもなく真剣な表情の幸太。言いたい事は何となく分かっているが、先にこちらが気になってる事を尋ねた。
私「良いけど、その前に教えて欲しい。俺あの日どこでどうなってたんだ?」
幸太「あの後、裏口を見に行ったら鍵が掛かってたから、外に出たものだと思ってしばらく探してたんだ。電話も繋がらなかったし」
幸太「で、どうしても見つからなかったから、じいちゃんばあちゃんの家に戻ったら玄関が少し開いててね。中を見たら雅兄さんが倒れてたんだ。だから救急車呼んだんだよ」
私「玄関が開いてた・・・(開けた覚えはない、最初から開いていたのか・・・あるいは)
幸太「脱水症状と意識が無い状態だったから即入院。全然目が覚めないから気が気じゃなかったけど・・・目が覚めてよかった・・・!!!」
涙を拭いながらそう告げる幸太を見て、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
私の好奇心によって迷惑をかけてしまったのだから・・・。
そうこうしている内に、今度は母が病室に入って来た。
母「雅!良かった!目が覚めたのね!心配したんだから!!!」
そう言いながらバッと抱きしめてくれた。
今回色々知ってしまったが、それでも母は大好きな母のままだ。
母「あー良かった!!あ、幸太、急いできたから着替え持ってくるの忘れちゃった。この子のアパートに行って取ってきてくれない?玄関に置いてあると思うから」
幸太「良いよ!行ってくる!雅兄ちゃん、また後でお話しようね!!」
と大きく手を振りながら病室を後にした。
・・・今更だけど、あいつ本っ当に良い弟だよなぁ・・・としみじみ思っていると、
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母「ねぇ、どこまで見た?」
急に母が口を開いた。
私「え」
突然部屋の空気が変わった気がした。どこまで・・・見たか・・・?
これは箱の事か・・・それともノートか・・・そもそも2階の存在の事か・・・。
少し沈黙が有った後、母が続けた。
母「2階にノートが有ったでしょ」
私「・・・・!!!!!」
完全にバレてる。
バレてる以上隠しても無駄だと思った私は「・・・うん」と静かに答えた。
母「・・・でしょうね。あの日幸太が救急車を呼んだ日、私もあの家に向かったのよ。救急車には幸太に付き添ってもらって、私は戸締りとご近所に挨拶してたんだけど、2階への階段が出てたわ。もちろん元に戻しといたけど。」
逆に母が発見してくれてよかったと喜ぶべきなんだろうか。
まぁ事情を知ってる身内以外が、あの箱やノートを見れば、一発で新聞に載るレベルだ。
母「ごめんなさい」
急に母が頭を下げた。急にどうしたのかと「何で謝ってるの?今回のは俺が勝手に・・・」
母「あなたに雅と名前を付けたのは私なの」
私「・・・・えええええ!!!!」
私に名前を付けてくれたのはじいちゃんだと聞いていた。
だけどあのノートを見てからはずっと思ってはいた事がある。
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「何故、自分の亡くなった子供と同じ名前を、血は繋がってないとはいえ孫に付けるのか」と。
母「名前を付けたのは私なんだけど、お父さんが「私が名前を付けたことにしなさい、理由はいずれ話す日が来る。」って言われて何の事か分からなかったけど・・・あのノートを見たら納得だわ。」
母「それで、あのノートを見た上でなんだけど、まず私が養子に引き取られてから、それはもうたくさんの愛情を注いでもらって育ててもらった。だからあの2人は私の本当のお父さんとお母さんだと思ってるし、今でもずっと感謝してるのよ」
そっか・・・あれからじいちゃん頑張ったんだな。
決してじいちゃんのやった事は許されることではないが、妻を愛し、子を愛した故の行いだった。
もっとも、幸せの最中にこの件がバレなくて良かったな・・・。不謹慎だが少しそう思った。
母「それでね、成人して結婚したしてあなたをお腹にを授かったのだけど、実家に帰った時に、この子の名前を決めなきゃな。って話になったの、あなたのお父さんは仕事馬鹿であてになんないから、愚痴もかねて。それでお父さんは買い物に出てたからお母さんに相談したのね」
母曰く、養子になった時、最初にばあちゃんを見たときは少し違和感が有ったらしい。
大事そうに箱を抱いて、それに向かって話しかけているのだから。
じいちゃんに聞いても「ばあちゃんはちょっと心が安定しないから、そっとしといてやってくれ。あの箱は壊したらばあちゃんが泣いちゃうから、絶対に触るなよ」と釘を刺されていたらしい。
それでもじいちゃんもばあちゃんも優しかったし、徐々に馴染んでいったそう。
母「で、お母さんにお腹の子どもの名前どうしようかなぁって相談したら、「その子は男の子なの?女の子なの?」と聞かれたから、男の子だよ。って教えてあげたのね」
そしたら「みやびちゃん・・・みやびちゃんはどうかしら」
もちろん母は「男の子って言ってるじゃんか~」と反論はしたが、「あら、男の子だからってたくましい名前を付けなきゃいけない決まりはないわ。それに絶対いい子に育つわよ」
当時より奇抜な行動・言動も減っており、ある時期に心療内科に通うようになってから、ばあちゃんは言動もはっきりしつつ穏やかになっていったらしい。
母自身も、「みやびちゃん」と言う名前はたびたび耳にしたが、誰なのかは教えて貰えなかったので、よっぽど仲が良かった友達か、昔お世話になった人か位にしか思っていなかったそう。
おそらく詳細を知るのをじいちゃんが妨害してたんだろう。
母「お母さんにそう言われて妙に納得しちゃったら、お父さんに相談するの忘れちゃって・・・いざ出産してあなたが生まれた時にうちの両親を呼んだの」
母「お父さんが「おめでとう!この子の名前は決まったのか?」と聞かれたから「みやびちゃんだよ」って教えてあげたら、一気にお父さんの表情が曇ったの」
「そのあとボソッと、「悪い事はできんもんだな・・・」ってつぶやいてた」
まぁそりゃそうだよな。それで私は完全にとばっちりを受ける訳だが。
母「それからあなたを連れて実家に戻ると、お父さんが「勘弁してくれ」みたいな目であなたを見る姿に耐えられなくなって、次第にあなたを実家へは連れて行かなくなったの」
母「そのあと幸太が生まれて、実家に行ったときに、お父さんが幸太には「おぉ!ゆっくりしていきなさい!!」とあからさまに反応が違うから「・・・何かあるな」とは思っていたけど・・・」
私「で・・・あのノートを見つけたんだね」
母「そ。2階が有るのをたまたま見つけちゃって、ノートの内容にも正直ビックリしちゃってさ。これまであの2人がやって来た事や、私が養子に選ばれた理由も全部ひっくるめて」
母「ただね、あなたに付けた名前が知らなかったとは言え、亡くなった子の名前と一緒にしてしまったのと、あの時お父さんに相談してれば・・・っていう後悔はずっと有る。」
母「だから・・・ゴメン。あなたになんて言えばいいかわかんなかった。言わない選択肢も有ったけど、隠したままじゃ・・・でも言葉がずっと見つかんなくて・・・」
母の頬に涙が伝う。
この件については、私より母の方がショックが大きかったと思う。
私「でもさ、先にあのノートを母が見つけたんなら、処分することも出来たでしょ?何で2階に置いたままにしたの?」
母「あんなの外に持ち出せないわよ・・・物騒だし。今回あの家を取り壊すけど、重機で派手に壊してもらうよう頼んであるから、外には出ないでしょ」
私「確かに・・・あ、じゃあ箱もずっとあの位置に有るんだ?」
母「箱?あぁ遺骨が入ったやつね・・・。アレは家と一緒に潰しちゃうとマズいと思ったから、おばあちゃんが亡くなった時に一緒にお墓に入れたわよ。入れ物変えて分かんないようにして、無事に今はお墓の中よ。」
私「・・・・・・・・・え?」
あの2階にはノートと一緒に箱も有ったず・・・。
でも母は今はお墓の中に有るって・・・じゃあ私が落としたあの箱は・・・あと・・あの黒い手の「みやびちゃん」・・・あれは夢じゃないと思う・・・だが。
やめよう・・・今日母は真実を話してくれた。
怖い目には有ったが、わざわざ掘り下げて母に不安を与えるのは良くない。
私「・・・そ、それで家は取り壊したの?」
母「無事、あなたが入院してる間に作業が終わって、今更地よ。一応お寺の住職呼んでお経は上げて貰ったけどね」
そこまでしてもらったなら、もう何も心配する事も無いだろう・・・。
そこに幸太が戻ってきて、「何々?何の話??俺も混ぜてよ!!」と着替えを持って戻って来た。
母「あんたたちが早く嫁さん貰わないかって話よ」
幸太「げーーー!やっぱいいや!!」
私「あはははは」
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無事退院した後は特に何事もなく過ごし、私は35歳、幸太は29歳になった。
その1年後、幸太が素敵な女性と無事結婚。幸太には幸せになって欲しいな・・・。
これまで色々有ったが、幸太にはあのノートの事や、母親のこれまでについては明かしていない。知らない方が幸せな事だって有るからな・・・。
しかし結婚・・・私はまだそういう浮いた話はまだないが、とりあえず仕事と趣味に没頭してるからまだそういうのはいいや。
いつか良縁に恵まれますように!!
それから少しして、幸太と奥さんの間に子供が生まれた。元気な女の子らしい。
私は仕事の都合でなかなか会いに行けなかったが、久しぶりに幸太と休みを合わせて会うことにした。
そこで初めて幸太の愛娘を見る事ができた。
まだベビーベットでキャッキャ言いながら微笑んでいる…なんて尊い・・・。
幸太「雅兄さん、元気そうで何よりだよ!!」
私「幸太もな。美人の奥さんに可愛い娘ちゃん、名前みゆちゃんだっけ?こういう生活も良いなぁ。」
幸太「兄さんも早く結婚しろよー。」
私「俺にまだ家庭は早いよ。」
幸太「あ、一度うちの娘抱っこしてやってくれよ。きっと家庭欲しくなるぞー!」
そうしてやや強引に抱っこする事になったが、・・・抱っこってどうやるんだ。
緊張する・・・。
ほら、と幸太が私の腕にみゆちゃんを乗せてくれた。
私「ななな、泣いたらどうするんだ?」
幸太「その時は代わるけど・・・めっちゃ懐いてるね??」
みゆちゃんは泣く所か、私の腕の中でもキャッキャッと楽しそうに笑っている。
私「可愛い・・・!!」
幸太「だろーー!?自慢の娘だよ!!」
幸太嫁「幸太ー?ちょっとだけ手伝ってくれなーい?」
キッチンの方から奥さんの呼ぶ声がする。
幸太「あ、ちょっと行ってくるね、みゆを頼んだ!」
私「おいおい・・・!!」
そうして幸太はキッチンの方へ歩いて行った。
抱っこするのは良いが、同じ姿勢だとさすがに腕がつりそうだ・・・なるべくみゆちゃんを刺激しないように楽な体制に持ち変える。
すると頭が私の顔に近い位置に来て、みゆちゃんと目が合った。
私「わーーー可愛いぃぃぃーーーーー!(小声)」
みゆちゃんはちっちゃく何か声を出している。
耳を近づけ「何々~?何て言ってるのー??」
すぅっ・・・と息を吸い込んだみゆちゃんは言った。
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「み ぃ ー つ け た」
作者雅