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中編4
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運命の赤い糸

皆様は「運命の赤い糸」ってご存知?

よく恋愛モノの小説とかで「あぁ…!私、あの人と運命の赤い糸で結ばれてるんだわ…!!」

って言ってるアレ。

これをリアルで言ってる人が居たらドン引きですが、もしこれを全く違うやり方でやった人が居たとしたら…?

これはそんなお話。

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うちのばーちゃんは戦争経験者で、第二次世界大戦時には既にじーちゃんと結婚してて、幸せな生活をしてたんだけど、ある日届いた「赤紙」によってその生活が一瞬で真っ暗になったそうだ。

じーちゃんは、「お前を置いて戦地に行くことになり申し訳ない…お国のために頑張ってくる」と真面目な性格ゆえにこれが口癖だった。

もちろんばーちゃんは名誉な事とは言えど、最愛の人を戦地に送り出すのは反対だった。

しかし当時に拒否権は無く、泣きたい気持ちを抑え笑顔で送り出すのがルールだ。

でなければ「非国民」のレッテルが貼られてしまう…。

渋々じーちゃんを見送ったばーちゃんは考えた・・・どうすればじーちゃんが無事家に帰って来れるか、を。

ここでふとある事に気付く。

戦時中でも手紙は出せたし、余程混戦時でなければ返事が返って来ていた。

そしてこの後ばーちゃんはとんでもない行動に出る。

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なんと自分の左手の小指を切断し、切り取った小指の端を血が出ないように白い縫い糸でぐるぐる巻きにして結び小さい木箱に入れ、「貴方の妻は私一人です。無事帰ってきて下さい。愛しております。」と手紙を添えて送ったのだ。

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それが無事に何も知らないじーちゃんの元に届き、箱を開け絶叫した。

結ばれた白い糸は、血を吸い真っ赤に染まっていた。

何事かと見に来た上官が箱の中身を見て絶句。

しばし考えた後、じーちゃんに対し「おい、幸夫。お前家に帰りたいか」と聞いてきた。

当然帰りたかったが、そんな事言えるはずない。

戦争中に奥さんのために戻るなんて有り得ない事だ。

愛する妻の切断された指を見た事にショックを受け、それでも涙ながらに「いいえ。私はお国の為にこの命捧げます」と言った。

おそらく当時ではこれが最も正解の回答だ。

それを伝えた所で、上官は言った。

「お前な、小指の無い女性がな、次に結婚出来る可能性はほぼ無いだろう。お前は確か子供も居なかったよな?では奥さんは死ぬまで一人で過ごす事になるかも知れない。それは本人も承知の上だと思うが、それでもお前の奥さんの覚悟は相当なものだろう。」

そう言ったあと上官は続けて、「次は第四基地にて補給が有るが、お前はそこで降りろ。負傷兵として処理してやるから、自分の家に帰るんだ。」と言った。

じーちゃんはかなり面を食らったらしく、「そういう訳にはいきません!!」

と渋ったが、同じ隊の仲間にも「まぁ負傷兵なら仕方ねぇわな。さっさと奥さんとこに帰ってやんな。」とか「俺ぁ独り身だからこの先に行ける、でもお前は行けねぇわな(笑)ま、奥さんによろしくな。」と諭された後、第四基地で降ろされ、仲間に別れを告げた。

最後に上官の「俺らが戦争してるのはな、正直国のためは建前。実際は大事なもん守るためだ。お前の守りたいもんが今後守れなくなる可能性が有るのなら、お前は今ここで戦争なんかしてる場合じゃない」

このご時世に、上官が絶対に口にしてはいけない言葉だが・・・この言葉を私は一生忘れない。

後になって聞いた話では、あの後戦況が悪くなった為にこの部隊は全員が特攻を仕掛け全滅してしまったそうだ。

この人たちにも家族があったろう・・・家に帰りたかったろう・・・自分だけが帰ってきてしまった罪悪感に胸が押しつぶされそうだった。

無事に帰路につき、家に帰れた時にばーちゃんは「あぁ、おまじないが効きましたね…!!」と涙を流したそうだ。

じーちゃん以外にこの地域で戦地から帰って来た人は居なかった。

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まぁ当たり前だが、戦地に居る家族に自分の小指を送り付ければ必ず帰って来れる・・・。なんてそんな都合のいい話がある訳がない。

じーちゃんの時は運良く、理解のある上官に当たっただけであって、普通は「お国のために命をかけて戦え」が戦争の基本ルールなのだから。

この話は亡くなったじーちゃんの家を片付けに行った時に見つけた手記に載ってたお話。

私は孫に当たるが、幼いころばーちゃんの小指が無い事について聞いたら

「あぁ、戦争でな、失ってしもた。でも決して後悔はしてないよ」と言っていた。

当時は何とも思わなかったが、ここに来てようやくその意味が分かった。

この手記には「おまじない」なんて可愛らしく書いてあるが、スマホなんかで「おまじない」を漢字変換してみて欲しい。

「おまじない」→「お呪い」→「呪い(のろい)」になるんだよ。

そう、これは一種の「呪い」だと思う。

「私の最愛の人を生きて返さなければ許さない」と言っているようにも取れる。

自分の身を切って、これから来るであろう運命を脅しているのだ。

この手記の最後のページには「里子(ばーちゃんの名前)には感謝している。赤い糸が結ばれた小指が私の運命を変えてくれたのだから」と書いてあった。

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「運命の赤い糸」には色んな起源や由来が有ると思う。

その中でも、このお話の内容も少なからず影響しているのではないかと私は思う。

だってどんな作品でも

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左 手 の 小 指 に 赤 い 糸 が 結 ん で あ る の だ か ら

Concrete
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