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私が死んだ朝は、ちょうど17歳の誕生日だった。
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まだお互いを「友達」だと言い張っていたあの頃。
一緒になった帰り道、彼がふいに道端のネコに手を差し出すと、
ネコが彼の指を嗅いだ。
バレないように私も、彼の後頭部の香りを嗅いだ。
それから少し、夕暮れの川沿いで音楽について語り合ったりして、
なんとなくキスだけしてみた。
ほんとうになんとなく。
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みづからにないものを求め、そしてそれらについて知りたいと思う。
恋愛とはつまり、或る個人への知的好奇心の究極の形態なのだろうと感じる。
私は彼のことを何もかも知りたかった。
同じように彼も、私の何もかもを知ろうとしてくれた。
私の言語体系をもとにしたイデオロギーまでをも、彼は考えようとしてくれた。
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私が死んだ朝は、9月4日、ちょうど17歳の誕生日だった。
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知らない人に殺されたあとバラバラにされて、公園のゴミ箱に捨てられた。
でもべつに、そんなことはどうでもいい。
肉体が消えたことはとても残念だけれど、この想いは消えていない。
君の髪や耳や唇にさわるための、この肉体が消えたことはとても残念だけれど、この想いだけは消えない。
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あれから何年も経つので今、奥さんがいる君に、あんまり書くべきではないお手紙を少しだけ。
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私が死んだ朝は、ちょうど17歳の誕生日でした。
午前0時、君との通話で初めて、ほんとうに初めて異性に「だいすき」と言いました。
君も「だいすき」と言いました。覚えてるかな?
それから私はコンビニに行って、アイスを買って、帰りに殺されて、バラバラにされました。
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私が君としたかったこと:
動物園に行きたかった
水族館に行きたかった
ディズニーに行きたかった
映画館に行きたかった
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とにかくなんでもいい
君となら、どこへでも行きたかった
もっと もっとずぅっと一緒にいたかった
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私は今も、17歳。
作者肩コリ酷太郎
愛すること