壱
呑みの席で心霊スポットに行こう!と盛り上がり現地に到着した僕ら4人、だが妙な事に言い出しっぺの5人目の顔を誰も思い出せないのだが。
弐
廃民宿に宿泊する人影たち、割れたガラス窓の全てから此方を覗く彼等に気づいたのはどうやら僕だけだったようだ。
参
突然ネットでもヒットしないような情報をペラペラと語り出す友人A、よく見ると彼の目玉はグルグルと回転していた。
死
受け付けと思われるカウンターに赤いペンキで擲(なぐり)書きされた「いらっしゃいませ、お二階へどうぞ」の文字、いよいよ僕が昨夜見た夢の内容とデジャブする。
伍
ミシミシと狭い急階段を一列になり上っていく、途中ガリガリに痩せこけた老人が降りてくるが当たり前のように僕たちをすり抜けていった。
轆
階段を上り切った僕らは廊下の奥に佇む数人の人影と目が合う、等身大の鏡だと気づきホッとするが帰りに見た時にはそこに鏡など無かった。
七
荒れた広間に足を踏み入れた瞬間空気が重くなり壁に掛けてあった額縁が独りでに床に落ちた、粉々になった硝子の中には先ほどすれ違った老人が写っていた。
八
廊下を這い回る草履の音に恐れる僕ら全員のスマホに非通知のバイブ音が一斉に鳴り響く、意を決して僕が出ると実母の泣き声で「お納めください、お納めください、お納めください」と繰り返されて切れた。
苦
不意に廊下を這っていた草履が広間に入ってきたので慌てて隣りの和室に逃げ込むと、参人の黒僧侶が丸くなり数珠をガリガリとさせながら低い声で念仏を唱えていた。
拾
逃げ出した建物の外で携帯用の塩を全員の身体と車に撒き散らし二階を見上げるとあの老人が柔かな笑顔で手を振っていた。噂によると民宿はその数ヶ月後に取り壊されたそうだ。
作者ロビンⓂ︎
やあ、流行りに敏感なロビたんだ。
一行怪談、慌てて書いたのでもし成立してなかったら申し訳ありません!…ひ…
ルール
・題名は入らない
・文章に句点は一つ
・詩ではなく物語である
・物語の中でも怪談に近い
・以上を踏まえた、一続きの文章である
『夢十夜(一行怪談)』(Glue様)
http://kowabana.jp/stories/28296
『一行怪談』(綿貫 一様)
http://kowabana.jp/stories/28315
『壱行怪談』(よもつひらさか様)
http://kowabana.jp/stories/28316