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幾つか母の事は話に出していますが、まだまだあります。母の話。
人間五十年、オカルトをこよなく愛し、毎月ホラー漫画雑誌を買ったり、ほん怖を買ったり、テレビの心霊特番は欠かさず見、廃墟探検とかスポット探索とかやるのは抵抗が無い。
出来る事なら、お化けが見える吸血鬼になってみたいと語るお茶目な乙女。
そんな母は、人生で一回しかお化けを見た事がないと悔やんでる。
今回はその母が見た、人生でたった一回の実体験。
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母が中学生の頃の話。
母の生家は今現在もある、とても古いお家です。
小さな山の中に、ポツポツと数件の家が集落の様に並び、夜は街灯も少なく薄暗い場所。
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その日の夕方、母は学校から帰ると居間にゴロンと横になりました。
とても眠かったのだそうです。
暫くすると、なんだか眠たいのに寝つきが悪いと言う状態に気が付いて、イライラし出したそうです。
「はぁ、もう、眠たいのに」
ゴロンと寝返りを打って縁側の窓を見ると、擦りガラスの方にモヤモヤとしたモノが見えたそうです。
(あれ、なんだろうなぁ……)
そう思ったのも束の間、そのモヤはクルンく丸まって黒い球体になったかと思うと、母へ目がけて猛スピードで向かってきます。
けれど、猛スピードでこっちに来ることは分かるんですが、なんでかスローモーションで見えたそうです。
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その球体は母の頭上にポンと跳ね上がると、今度は天井から母に向かって迫って来ました。
「うをっ!」と、母は思ったそうです。
その球体は、よく見れば『お姫様の生首』。
時代劇やバカ殿に出来るような立派な簪を髪に刺し、和髪を綺麗に結ったお姫様の首。
首はニタニタニタ~……ニタァ~……と不気味に笑い、母に迫りくる。
顔面蒼白で血の気がなく、歯が少し黄色く見えたそう。でも紅が真っ赤に引かれていた。
母は、悲鳴を上げて目を閉じた所、今度は笑い声が聞こえ、スゥッと生首は消えたそうです。
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「アレは怖かったなぁ。でも、あれ一回きりなのよねぇ。もっとこう、怖い話として面白くなるような経験がしたいわぁ。こう拝み屋さんとかが来て、ハァーッ!とかやるの、ハーッ!て」
映画「陰陽師」で野村萬斎さんがやっていたような仕草を真似て、母は笑っていた。
そんな怖い体験、命に関わりそうなので勘弁して下さい……。
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そんな母から、つい今しがた電話があった。
被災地である母の実家は今、怖い話の宝庫だったりする。
(震災で亡くなった方達を娯楽として語るつもりは無いが、彼らの無念を示す一つの話として、何れ書き起こしたいと思います)
先程、O町に祖母と二人で行って来たのだそうだ。
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母「宵、宵っ!」
私「何、ママン、どうしたの?」
母「今ね、お婆ちゃんとO町のトンネルを通って帰って来たの」
私(この下りは、怖い話だろうなぁ……)「うん、それで?」
母「お婆ちゃん、トンネルの中では黙っていたのにさ、出た瞬間こう言うのよ」
私「う、うん……」
母「『あんれぇ、今、子供の声が聞こえながったが? 二回』だってっ!怖い怖いっ」
私「震災の後だからねぇ……」(怖い言う割に興奮していませんか……ママン)
母「夏休みに来るんでしょ、宵が行ったら何かないかなぁ……楽しみだねぇ」
私「ハッ?(|| ゚Д゚)!!」
母「楽しみだねぇ~。夜は流石に怖いけれど、頑張ってみようかなぁ」
夏休み、私は無事に過ごせるんでしょうか、心配です……。
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作者宵子
毎度お馴染み、ママンのお話。もうシリーズ化しようかと思う(笑)
奇しくもオカルト好きが祟って、結果的に娘を占い師に育てちゃったママン。
オカルトが大好きなのに、人間50年、一度しかお化けを見た事がないと悔やむママン。
ママンの念願叶って娘が怖い思いしている真っ最中、決まって「なにバカやってんの?」と言うママン。
そんなママンのお話。