「ねぇ、この学校の七不思議って知ってる?」
昼休みの教室。
唐突に口を開いたのは、大富豪で一番に上がり、手持ち無沙汰にしていた咲希(さき)だった。
「七不思議?なんだよ急に。」
そう答えたのは拓馬(たくま)。
前回平民で上がった彼は革命を起こし、見事富豪に成り上がった所だった。
「ちょ、革命とか、ふざけんなよ拓馬!」
喚いたのは剛(つよし)。元、富豪である。
「革命が起きると元、富豪は弱いよな。まぁ、頑張れ。」
拓馬は策略家らしく、眼鏡をくいっと指で上げニヤリと笑った。
くっそー、と嘆いている剛をおいて、咲希と拓馬は先程の話を続ける。
「この学校の七不思議ってさ、聞いた事ある?」
「そういえば...無いかもな。」
「でしょ?どの学校にも一つはあるものじゃなのに、変じゃない?」
小首を傾げる咲希に、拓馬もまぁな...と頷く。
「はいはーい、私知ってるよぉ?トイレの花子さん!」
そう手を上げて話に入ってきたのは、二度目の平民になった華(はな)。
「有名な七不思議だけど、うちの学校にはいない」
同じく二度目の平民となった瑞希(みずき)が、淡々とした口調で告げる。
「えぇ〜?花子さんいないのぉ?華、右から二番目のトイレ使わない様にしてたのに〜」
「居る訳無いでしょ。あと、花子さんは右から三番目の個室だから」
「そぉなんだぁ!流石みーたんだねぇ!」
「みーたんとか呼ぶな、気色悪い」
ぶりっ子な華とクールな毒舌瑞希の凸凹コンビのコントは、最早日常と化している。
「でも何で無いんだろうね?あ、上がれた」
スペードの5を出して上がった諒(りょう)はクラスの王子様的存在だ。
頭もそこそこ良く、優しい性格で、ついでに顔も整っている彼は「貧民かぁー」と言って、色素の薄い眉をハの字にして、へらっと笑った。
「ちくしょー!!富豪から大貧民とか転落人生かよー!!」バサッと机に捨てた剛の手札は、エースやキングばかりだった。拓馬の革命が効いたのか、剛は見事に堕ちていた。
「拓馬が革命とかするから...!」と騒いでいる剛を放置して、それでね?と咲希は話を戻した。
咲「一つも聞いた事無いなんて、おかしいと思わない?」
拓「まぁ...」
諒「ちょっと気になるね」
華「華、怖いの嫌ぁい」
瑞「私は華の話し方が嫌い」
剛「関係ねぇだろそれ(笑)」
復活した剛が話に加わり、「もしかしたら七不思議かも?」と言う候補が無いか、本格的に話を始めた。
諒「”走る二宮金次郎”はどうかな?」
拓「うちの学校に金次郎居ないぞ。クラークなら居るけどな。」
剛「夜な夜な走りながら、少年よぉぉぉぉぉ大志を抱けよぉぉぉぉぉ!!ってか?」
拓「馬鹿だろ。」
瑞「”十三階段”」
剛「うちの学校階段は全部十五段なんだぜ!!実証済み!!俺が!!」
拓「馬鹿だろ。」
華「”トイレの花子さん”はぁ?」
拓「さっき言ったろ。」
剛「わかった!!口裂k...拓「それは都市伝説だ。」
咲「あ!二階の美術準備室って”開かずの間”じゃないのかな?あそこ、鍵かかってないのに開かないよね?」
剛「あぁそれな、俺が一年の時に遊んでてライダーキックかましたら歪んで開かなくなったらしいぜ(笑)」
拓「おかげでこの間、近藤(美術教師)に頼まれて、くそ重たい備品窓から何往復もして運ばされたんだぞ。」
やはり皆が知っているのは、一般的に有名な七不思議であり、この学校の七不思議、と言う訳では無いものばかりだった。
「うーん...やっぱり無いのかなぁ...」
咲希が少し残念そうに呟いた。
「あ!じゃあさ!俺らで作っちゃえばいいんじゃねぇ!?」
剛の突飛な提案に皆、”は?”と言う表情だ。
「だからさ!無いものは作ればいいんだろ?だったら俺らが怖いとか、不気味だとか思った事を、ちょーっと脚色して、七不思議にしちまえばいいんだよ!!」
「なるほど!剛にしてはいい案ね!」と咲希。
「なんだか楽しそうだね」と涼。
「まぁ...悪くない」と瑞希。
「華も不思議作りたぁい♪」と、怖がりの華までが賛成意見だった。
剛「拓馬は?」
拓「俺は別に...。そこまで興味無いしな。」
「じゃあ決まりだね!早速今夜、調査しに行こうよ!」と、咲希。
拓「今夜?今からパパッと行くんじゃダメなのか?」
咲「七不思議が起きるのって大抵夜でしょ?それに、夜の方が不気味さが増すから、いい七不思議が出来ると思うの」
拓「いや、でも...」
珍しく拓馬が口籠った。
剛「拓馬ぁ〜、お前もしかして怖いの駄目なのか?」
拓「違ぇよ黙れ。」
非科学的なものは信じていない拓馬が渋る理由は、他にあった。
七不思議を作ろうと提案した際の剛の顔が、
一年の頃”校長の銅像の顔が実物より美化されているから、俺達で直してやろう!”と言って、油性ペンで落書きしに行った時と同じ顔をしていたのだ。
馬鹿みたいな嫌な予感がする。そう感じた為拓馬は、剛の提案に乗る事を躊躇したのだ。だが...
咲「駄目...かな?拓馬は皆のまとめ役みたいな感じだから、来てくれると凄く嬉しいんだけど...」
少し俯き、困った様に笑う咲希に淡い恋心を抱く拓馬は、こんな顔をされて断れる筈も無く...
拓「ぅ...まぁ...行ってもいいけど...。」
咲「本当に!?」
ありがとう!っと言った咲希は、可憐とも言える笑顔で、この笑顔を見て鼓動を速めた男子は、拓馬だけでは無かった筈だ。
結局咲希に押されて、今夜8時から学校に調査に行く事になった。
「じゃあ今夜8時に正門に集合ね。懐中電灯とか忘れない様に。以上!」と咲希が学級委員らしく締めくくった所で、始業の鐘が鳴った。
一応は同行を了承した拓馬だが、嫌な予感が消える事は無く、寧ろ現国教師に対して
「先生!今日も鬘のボリュームが素敵ですね!」
と言っている剛を見て、嫌な予感は膨れ上がるばかりだった。
作者退会会員
どうも。*chocolateと申します。
今回、自身初のシリーズものに挑戦してみたいと思います。
文章力は底辺ですが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
今回の話ですが、一応主人公は7人、と言う設定なのですが、拓馬視点が多く見られると思います。
理由は、自分の文章力不足です。申し訳ありません、暖かい目でスルーして下さい。
因みに後一人は次作に登場します。
その他不明な点や、誤字脱字などありましたらお申し付け下さい。アドバイスなどもいただけたら嬉しいです。