これは、僕、薄塩、ピザポが高校1年生の時の出来事だ。やっと割り方最近の事を書ける。
テンションが上がりすぎて文章がグチャグチャになっていたらすまない。
時期は夏休み。7月もそろそろ終わる頃の話だ。
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その日、僕等(僕、薄塩、ピザポ、のり姉)は 泊まり掛けで海の近くの民宿に遊びに行く事になっていた。勿論、只の海遊びが目当てなのではない。
その民宿の近くに、少し曰く付きの廃墟があり、そこに探検に行くのだ。
1日目は探検。
2日目は海遊びと百物語。
3日目はお土産を買いに近くの魚市場へ。
何とも楽しげな計画である。
移動は電車を乗り継いで行く事になっていた。
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「暑いー。もう・・・あれだ・・・うん。説明するのが面倒!兎に角暑い!!」
「お前は毎年それか!」
「薄塩wwwおまwww」
「だらしないな~。一発行っとく?」
上から、薄塩、僕、ピザポ、のり姉の順である。
会話から分かって頂けただろうか?
本気で一発行ってしまいそうなのり姉を僕とピザポで宥める。
「お止めください。」
「死んでしまいます。」
のり姉は、不満げに口尖らせた。
「えー??」
もう一押しか。
「大丈夫です。のり姉がわざわざ手を下さずとも、放って置けば暑さで勝手に自滅致します。もう暫くの御辛抱を。」
「・・・それもそーだ。止めてあげる。」
のり姉が、納得した様に頷く。
僕は、恭しく礼をした。
「有り難う御座います。」
此処はある駅の前。
僕等は、目的地へと向かうバスを待っていた。
時刻は3時。
次のバスまでは、まだ30分も時間がある。
しかもこの駅は無人駅。
座る所はベンチが2つのみ。
かろうじて屋根があるものの、暑さはほぼ和らがない。
のり姉が、不機嫌そうに言う。
「コンソメ君、喉乾いた。」
僕はのり姉の機嫌を損なわない様に聞いた。
「自動販売機で何か買ってきますか?」
のり姉が答える。
「紅茶飲みたい。冷たい奴。」
僕はバッグから水筒と紙コップを取り出した。
「アールグレイで宜しければ。砂糖とミルクは如何なさいますか?」
「砂糖は少し。ミルクは要らない。」
「御意。」
角砂糖を1つコップに入れ、マドラーを差し、アイスティーを注ぐ。
手渡すと、のり姉は優雅に微笑んで見せた。
「ありがと。」
僕は、無言で軽く一礼した。
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何で僕がこんな執事紛いの事をしているかというと、それは一重に、今回の旅行で泊まる民宿の代金をのり姉が全員分負担してくれているからである。
あ、ついでにいうとこの間、薄塩は暑さの余り溶け出し、ピザポは団扇でのり姉に風を送る人間扇風機と化している。
のみ終えた紙コップを僕に返し、のり姉がゆったりと空を仰ぐ。
「バス、遅いなあ」
「左様で御座いますね。」
僕も空を見た。
このままでは、ピザポの腕と薄塩の命が危ない。
僕は、早く来い、と心の中で念じた。
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待っていたバスが来たのは、結局40分後の事だった。
薄塩はバブルスライムの様に溶け出し、
ピザポは右腕を掴んでプルプルとしている。
元気なのはのり姉だけだ。
僕?とうとう執事が天職な気がしてきた。
僕は、溶けている薄塩を引っ張り、バスへと乗り込んだ。
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流石にバスの中は涼しかった。
客は僕等以外には、地元の人らしき老婆しか乗っていない。まだ7月だし、何より今日が平日だからだろう。
冷えて固体に戻った薄塩が、大きく溜め息を吐いた。
「クーラー最高。」
団扇で扇ぐ必要の無くなったピザポも、手をグーパーしながら言う。
「全力で同意。」
僕?
「目的のバス停から民宿までは、大体10分ほど歩くそうです。」
「そう。民宿の人には何時に着くか言った?」
「少々遅れていますので、バスを降りたら一応連絡を入れておいた方が宜しいかと。」
「分かった。よろしくね?」
「御意。」
まだ執事やってる。
その内、のり姉はコクリコクリと居眠りを始めた。
見ているこっちまで眠くなる。
・・・・・・。
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ハッッ(゜ロ゜)
どうやら僕は眠ってしまったらしい。
取り敢えず、隣にいるはずののり姉に詫びを入れる。
「申し訳御座いません。」
・・・返事は帰って来ない。
僕が横を見ると、のり姉は居なかった。
いつの間にか老婆も降り、車内には僕等だけになっていた。
驚いて、今度は斜め前を確認する。
今度は居た。
薄塩とピザポが、まだ呑気にグースカ眠っていた。
「おい、起きろ。起きろってば。」
取り敢えず二人を起こす。
「んん。ん?コンちゃん?何で俺ん家に・・・。」
「此処はお前の家じゃない。」
「・・・すみません。許して下さい。」
「薄塩、僕はのり姉じゃないぞ。謝るな。」
・・・窓の外に、真っ赤な夕陽が見える。
目が覚めたらしいピザポが、慌てて言った。
「うわ!早く降りなきゃバス代が偉いことに!」
タイミング良く、車内アナウンスが響く。
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「え~。次は~、きさらぎ~きさらぎ~。お降りのかたは~お忘れものの無い様~お気をつけ下さ~い。」
ピザポが、バスの停止ボタンを押した。
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僕等が降りたバス停は、およそ海からはかけ離れた所にあった。
「多分置いてかれたんだろうな。俺等。」
薄塩が言う。
民家も見当たらないし、大体ここは何処だろう。
夕陽はもう落ち始めている・・・。
「え?」
僕は思わず声をあげた。
「どーした?」
「なんぞー?」
二人が不思議そうに聞いてきた。
「夕陽なんて、おかしくないか?」
「へ?」
「は?」
「だって・・・僕等がバスに乗ったのは。どんなに遅かったとしても、4時だろ?今は何時だ?」
ピザポが慌ててスマホを取り出す。
「・・・7時。」
「ほら、おかしいだろ?幾ら何でも、三時間も走り続けるか?」
薄塩が、反論をする。
「循環バスじゃ・・・。」
「違う。循環バスじゃない。」
僕等の間に、嫌な空気が流れた。
気を取り直す様に、ピザポが言う。
「と、取り敢えず、のり姉に連絡取ろうぜ?今頃もう着いてるだろうし。」
「あ、ああ。そうだな。」
ピザポがスマホを弄る。暫く弄っていたが・・・
「繋がんないんですけど・・・。」
「・・・嘘だろ。」
僕等もスマホを取り出す。
「何でっ・・・これ・・・。」
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僕等のスマホは、何故か圏外でも無いのに繋がらなくなっていた。
「こんなことなら・・・」
ピザポが、悔しげな顔をした。
停車ボタンを押した事を責めているのだろうか。
「別に、お前の所為じゃ・・・。」
「こんなことなら・・・soft○ankにしておくんだった・・・!!」
「そっちかよ!!馬鹿!!」
薄塩が、グッと親指を立てた。
「コンソメ、ナイスツッコミ!」
「五月蝿い!」
なんだこの空気!
ピザポが叫ぶ
「いいぜ、てめえがあくまでシリアスな空気で行くってなら、まずはそのふざけたシリアスをぶち殺す!!」
これには流石の僕も吹き出した。
「おい、何処の幻想殺しだww」
薄塩がハッとして言う。
「これがほんとのシリアスブレイカー!!」
「DA☆MA☆RE☆」
なんだこのノリ。
いつの間にか三人とも笑っていた。
「もうやだwwなにこの空気ww」
それから暫く、僕等は笑っていた。
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「さて、まずは状況整理な。」
僕等は何故か円陣を組みながら話し合った。
まずは僕から。
「ピザポ、スマホは?」
「電波は有るのに繋がりません!」
「薄塩、時間は?」
「只今7時半!次のバスがもう来てもいい頃なのに、一向に来る気配がありません!」
次は薄塩。
「コンソメ、此処は?」
「アナウンスでは《きさらぎ》と言っていましたが、看板にも何も書いていないし、マップにも載っていません!」
「ピザポ、2chには通じたか?」
「通じましたが、スレッドが立てられません!」
続いてピザポ。
「薄塩、持ち物は?」
「百物語および廃墟探検用の道具があります!」
「コンちゃん、都市伝説は?」
「多分関連しています!只、此処は駅ではありません!」
最後に皆で腰を落とす。薄塩が声を掛ける。
「と、いう事は~?」
せーのっ
「「「死亡フラグ決定☆」」」
・・・なんだこのノリ。
ピザポが聞いてきた。
「で、これからどうする?」
薄塩が、うーん、と唸る。
「都市伝説、見たろ?下手に動くのも危険だ。」
僕は、耳を澄ませ、言った。
「鈴とか太鼓は、まだ聞こえて来ないな。」
さて、どうするーー?
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沈黙を破り、最初に口を開いたのは薄塩だった。
「結界を張るって、どうだ?」
僕とピザポは、驚いて薄塩の方を見た。
「薄塩!お前結界とか張れるのか?!」
薄塩は、何だか苦い顔で言った。
「いや、俺一人で張れる訳じゃない。かなりキツいだろうな。リスクもある。」
ピザポが静かに言う。
「・・・どんな方法?」
薄塩が言う。
「方法は幾つかある。・・・只、チャンスは一度だな。」
薄塩が言う結界とは、この様な物だった。
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必要な物は根気と体力。
する事は一つ。これは、選択肢が幾つかある。中でも代表的な物は、
・尻取り
・歌
・マジカルバナナ
・山手線ゲーム
等だ。この中から一つを選ぶ。
重要な事は一つだけ。
絶対に途切れない様にすること。
今回の場合は、夜明けまで。
夜明けまで頑張って、助かった人が居た例があり、自分達もおそらく夜明けまで粘れば助かるかもしれない為。
だが、リスクもある。
まず、純粋に体力が持つかどうかだ。だが、これはまだどうにかなる。問題はこの次だ。
この結界は、途切れる事無く言葉を続ける事で他の物をシャットアウトするのだが、声を出し続けるということは当然、相手に自分達の位置を教える事になる。
つまり、途切れてしまったら一貫の終わりだ。
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そこまで話して薄塩は、もう一度こちらを見た。
「・・・さあ、どうする?」
ゴクリ、と唾を飲み込む。
「やらなかった場合、帰れる確率は?」
僕は聞いてみた。
「・・・まず、無いだろうな。・・・前に助かった人は、まだ外界と繋がれていた。・・・俺達は、それが無い。」
ピザポが、突然笑い出した。
「何その非日常www俺等、旅行に行こうとしてたんだよねwwいきなり命の危機とかwww」
一通り笑ってから、小さく息を吐く。
「でも、やるしかねーんだよな。」
薄塩が、頷いてこちらを向く。
「コンソメ・・・。」
僕も大きく頷いた。
「ああ。・・・帰ろう。」
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結界を張り始めるのは、日が落ちて、危険度が上がってからという事になった。
今回僕等が選んだのは、《歌》
一人一人順番に、歌を歌っていく。
本来は尻取りが一番効果があるらしいのだが、途切れずに夜明けまで続かせるのは、ほぼ不可能だ。
「カラオケのオールだと思えばいいんだって!」
ピザポが言った。
・・・そろそろ、日が暮れる。
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暫くすると日は沈み、夜が訪れた。
バス停の屋根からぶら下がっている裸電球だけが、唯一の灯りだった。
薄塩が、言う。
「・・・始めるか。」
順番は、ピザポ、薄塩、僕。
「どうせなら・・・楽しんでこーぜ。」
ピザポが、エアーマイクを持った。
左手で、音楽プレイヤーのボタンを押す。
右手のマイク(エアー)を高く上げ、ピザポが高らかに宣言した。
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「それでは聴いて下さい!如月アテン○ョン」
「Wow 行き先はどうしよう~♪」
僕&薄塩( *・ω・)
「きさらぎだけにwww」
「本当に楽しんでるだろお前www」
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「そろそろ僕の番か。」
ピザポの歌も、もうすぐ終わる。
僕はマイクを持ち(勿論エアー)、自分の音楽プレイヤーをセットした。
ピザポの歌が、終わった。
「歌います!メラン○リック」
「全然掴めない♪きーみのーこと♪」
薄塩&ピザポ( ; ゜Д゜)
「え?!ちょ、コンちゃんwww」
「グッジョブwwコンソメwwww」
・・・別に、僕の知っている曲の中で一番なんか・・・明るい歌がこれだっただけだ。
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僕の歌も終盤に差し掛かり、今度は薄塩が準備を始めた。
僕が歌を終える。
「ここであえての!恋は混○の奴隷也」
「這いよりますか?生のうねり!」
僕&ピザポ(*゜Q゜*)
「マジでwww」
「まさかのニャル子さんwww」
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そんな感じで、大分歌っていたが、その異変は、突如として現れた。
聞こえてくる歌とは別に、何かの声と、鈴の様なチャリンチャリンという音が聞こえて来たのだ。
薄塩が、真面目そうな顔になった。
「・・・来たな。」
僕も、音に耳を澄ませた。
サイトでは、太鼓の様な音も聞こえて来たが、それは無かった。
鈴の音も何だか妙に安っぽく、例えるなら・・・そう、タンバリンの鈴を鳴らしている様な感じだ。
裸電球の灯りの下、見える範囲はそれだけだ。
段々と声は近付いてくる。
声と言っても、言葉を成していない。
所々で高くなったり低くなったりする声は、どうやら複数の様だ。
ピザポの歌が終わった。
次は僕の番だ。
歌いながら、辺りをよく見回す。
何処にいる・・・?
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ユラリ
闇の中、何かが動いた。
立って居たのは、サーカスとかにいる、ピエロだった。
背は、恐らく僕より大分低い。年齢にして大体小学生位だろう。
手に持っていたのは、やはりタンバリンだった。
ブツブツと、何かを呟いている。
ピエロが、ゆっくりと顔を上げた。
その顔には、
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目が、一つしかなかった。
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一つ目小僧なる妖怪を、ご存知だろうか。
僕が見た物は、正にそれだった。
だが、違う。
恐ろしさが、全然違う。
ニヤリと笑った口元。
ゆらゆらと揺れ、その度にチャリチャリと鳴るタンバリン。
何より、あり得ないほどの大きさの、眼球。
真っ直ぐに、此方を見ている。
それでも歌を止めなかったのは、本当にファインプレーだったと思う。
よく見ると、ピエロは何人もいる。
その全員が、小学生位の身長だった。
そして、その全員が・・・僕等と違っていた。
目が多い者。
腕が多い者。
中には、頭が歪に膨らみ、その中に二つの顔がある者も居た。
ピエロ達は、電球の灯りの中には、入って来なかった。結界が効いているのだろうか。
僕が終わり、薄塩が歌を始める。
ゆらゆら、ピエロ達が此方に手を伸ばした。
ピザポが、いつの間にか泣き出していた。
当たり前だ。
僕も泣きたい。
「どうしても怖かったら、目、瞑ってろ。」
ピザポが、背中に顔を押し付けてきた。
「・・・ごめん。格好付けといてなんだけど、やっぱ、楽しめないわ。」
「当たり前だ。馬鹿。」
「・・・だな。」
薄塩も、辛そうだ。
「・・・頑張ってくれよ。頼むから。」
薄塩が、ぎこちなくだが、此方に微笑んで見せた。
薄塩が、歌い終えた。
「白いイヤホンを、耳に当てー・・・」
背中に顔を押し付けたまま、ピザポが歌い始める。
チルドレ○レコードだ。
「・・・今の俺達に、ぴったりだな。」
薄塩が、少し嬉しげに言う。
夜明けは、まだまだ遠い。
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どれだけ歌を歌っただろう。
空が明るくなって来ていた。
揺れていたピエロ達が薄くなり始めた。
一体、また一体と、ピエロが消えていく。
僕等は、からからになっている喉で必死に歌い続けた。
最後に残ったのは、一番最初からいた、一つ目のピエロだった。
スッと、薄闇に光が差す。
じっと此方を見ていた瞳が、静かに綴じられた。
僕等は全員、涙でグシャグシャになっていた。
どっと眠気が来る。
僕等は、三人ほぼ同時に眠りに落ちていった。
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目を覚ますと、そこはバスの中だった。
「・・・夢か?」
両隣を見ると、そこには、
グースカ眠っている、ピザポと薄塩。
のり姉は、居なかった。
スマホを見ると、昨日の4時10分。
社内アナウンスが響く。
「次は~○○~。○○~。お降りの方は、お忘れ物の無い様、お気をつけ下さ~い。」
あ、降りるバス停、2つも過ぎてる。
僕は、慌ててボタンを押し、二人を起こした。
「え?ここ・・・。」
「何で・・・?」
どうやら二人も、昨日の事は覚えている様だ。
バスが止まる。
二人を引き摺る様にしてバスを降りた。
僕等がバスを降りると、
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のり姉が仁王立ちして、僕等を待っていた。
「やあ。少年達。」
ニヤリと笑顔。
「お帰り。」
・・・僕等は、顔を見合わせた。
僕は、苦い顔をして言った。
「唯今戻りました。」
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一体、あのピエロ達は何だったのだろう。
三人一緒に夢を見たんだろうか。
のり姉はニヤニヤするだけで、何も教えてくれなかった。
いや、夢じゃない。
空になった水筒と、渇れた喉。電池の残量がもう無い音楽プレイヤーが、それを教えてくれた。
何にせよ・・・。
旅行は、まだ始まったばかりだ。
「ほら、行くよ。」
颯爽と歩いているのり姉の元へ、僕等は足を速めて歩いて行った。
作者紺野
どうも。あくまで紺野です。
この旅行、この他も色々と凄かったです。
只、1話で書ききる力がぼくには無いです!
なので、幾つかに分けて書かせて頂きます。
あのピエロ達の事は、次回書きます。
話はまだまだ続きます。良かったら、お付き合い下さいませ。