気づくと僕は祭りにいた。
服は浴衣、足にはサンダル、手にはうちわ、頭には狐のお面だ。
ここは何処だろう…どことなく懐かしい…どうせ夢…だが…夢オチじゃベタすぎるか?…少し歩こうか…
そう思って歩いていた。
右には屋台、左にも屋台、目の前には太鼓、太鼓囃子が聞こえてくる。
扇子を持った、女の人が舞っている。
ふと、いい匂いがする、焼き鳥だ。
一個五十円、安い、相当昔だ。
かなり賑わっている、これは大漁節、懐かしい…不意に涙が落ちた。
するとそこに、雰囲気がどことなく違う屋台があった。
行ってみると、お面や、ビー玉、かんざしに、メンコ、古書、よくわからない物などたくさんの物が売ってあった。
すると、屋台のおじさんが「へいへいいらっしゃい、こんな店に来るなんて、珍しいねぇ」と上機嫌に言う。
僕は「えぇ、まぁ…気づいたら祭りにいて…」と言った。
屋台のおじさんは「ほう、違う世界からの訪問者か、久しぶりに見たなぁ」と不思議そうに言う。
僕は「ここはいったい何処なんですか?」と聞くと、おじさんは「ここは世界ではない、思い出だ。人の中で創り上げられた一部分が集まり、この世界ができた。」と言う。
全く意味がわからないが「はぁ」と言った。
おじさんは「珍しいから今回はただだよっ」と大声を出す。
僕は「あ、すいません。ありがとうございます。」と引き腰で言った。
僕が最初のに目に着いたのが、大きなお守りだ、それを手に取り見てみるとおじさんが「おっ、いい物に目をつけるね、それは現実からこの世界を結ぶお守りさ、それを持っているとすぐ、この世界に来れるよ、ちくしょーもってけどろぼー」と嬉しそうに言った。
僕は「ありがとうございます。」と言い、出ようとした。
その時だ、おじさんが消えかけている。
おじさんが「おっと、もう時間のようだな、また会える日まで楽しみにしているよ」と言った。
目の前が真っ暗になったと同時に、目が覚めた。
朝の六時、どうやら夢だったようだ。
だが、あの時のことは鮮明に覚えている。
手に、違和感があったので、見てみると、あの時のお守りを持っていた。
あれは夢ではなかったのか…
あのおじさんの顔が浮かんだ。
何処からか太鼓囃子が聞こえてきた様な気がした…
作者MINT61147020