これは、僕が高校1年生の時の話だ。
季節は冬。
《倉庫に居るモノ前編》
の続きである。
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・・・・・・・・・。
コンクリートで出来た直方体の倉庫が、目の前に建っている。
そして僕等は、その倉庫の直ぐ傍の街灯の光の下に居た。
「此処・・・ですね。」
木葉さんが頷きながら言った。
「外からは何も聞こえませんが・・・。」
確かに、至って静かだ。
耳を澄ませても波の音しか聞こえない。
「まぁでも、ここで間違い無いんでしょ?だったら取り敢えず入ろう。」
のり姉が扉の方へ向かおうとした。
「あ、一寸待って下さい。」
木葉さんがそれを引き留め、持っていた鞄から紙で出来ているらしい札を取り出す。
「此れを。」
僕等に一枚一枚手渡していく。
札は矢張紙製で、赤と黒で何やら文字が書かれていた。
「・・・御札。・・・・・・御払いか何かに、使うんですか?」
僕が聞くと、木葉さんは静かに頭を振った。
「いえ。其れは御守りですよ。」
ヒラリと自分の分の札を、よく見える様に目の高さまで持ち上げる。
「よく聞いて下さい。分からない所が有れば何回でも説明しますから。」
木葉さんが、札の真ん中辺りにある丸を指差す。
「此処に自分の息を吹き掛けて下さい。」
「・・・血液じゃないんだ?」
不思議そうにのり姉が言った。
確かに、血液の方が《それっぽい》感じがする。
「用途にも依ります。・・・此れは相手から見えなくする為の札ですからね。確かに、血液の方が純粋な効果としては大きいのですが・・・。」
ふぅ、と木葉さんが息を吐く。
「・・・どうにも、臭いが強いですからね。」
そして、何故かハッとして、気不味そうにのり姉の方を見る。
「・・・・・・・・・何?」
のり姉が木葉さんの視線に気付き、怪訝そうな顔になった。
木葉さんは困った様な感じでキョロキョロと目を動かした。
「えと、あの、そのぉ・・・・・・。」
顔を真っ赤にして、バタバタと手を振る。
「あの・・・えっとぉ・・・。」
「何?何が言いたいの?」
のり姉の眉間に皺が寄る。
「えーと、えーーとーー・・・。」
「はっきり言いなさい!!」
のり姉の言葉に、ビクッッ、と木葉さんが固まった。
「ご、ごめんなさい・・・。」
今にも泣き出しそうな声で謝る。
「言わなきゃ分からないでしょ。ほら、怒らないから。言って。」
のり姉が縮こまっている木葉さんに優しく呼び掛ける。
・・・・・・あれ、もしかして僕等に対するよりお姉さんぽくない?!
・・・失礼。個人的な思いが入った。
「その、そのー・・・。非常に不躾な質問だとは思うのですが・・・・・・。」
「うん、何?」
「あの、今月・・・えっとそのぉ・・・。」
「○理ならもう終わってるよ。」
「・・・うぇ?!」
いきなりサラッと言われて、木葉さんの目が点になった。
「あれ、違う?血液繋がりでそれかと思ったんだけど。」
のり姉がそう言うと、木葉さんは恥ずかしそうに顔を手で覆った。
「はい。それで正解です・・・。」
「あ、そう。なら良かった。・・・それじゃ、入ろうか。」
のり姉がまた倉庫へと向かおうとする。
「あ、待って下さい。少しだけ。手短に説明を終えますから。」
木葉さんが引き留め、そして続けた。
「この札は、一度でも手離してしまうと効力を失います。新しい札を持ち直しても、一度その札を使った相手には効かなくなります。あ、触れてしまった相手に対しての効力も消えてしまいます。どうぞ、肌身離さず、持っていて下さい。」
のり姉と僕等は大きく頷いた。
「・・・行こう。」
扉に手を掛ける。
ギィィィィ
錆び付いた扉が、嫌な音を立てながらゆっくりと開いた。
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・・・・・・・・・。
埃を被ったコンクリートの床。
元々は家財道具を置く倉庫だったのだろう。所々に壊れた椅子や机、箪笥等が転がっている。
奥には、やはり埃だらけの階段が見えた。
窓から入っている街灯の光だけが頼りだ。
街灯の場所が極近く在り、建物自体がそこまで大きくないので、周りが見えない訳では無いが・・・。
「目が慣れているとは言え・・・これは少し辛いな。」
僕は横に居る薄塩に小声で言った。
「・・・・・・。」
が、薄塩は何も言わなかった。
僕は更に言った。
「懐中電灯は・・・・・・流石にバレるか。」
「・・・・・・。」
薄塩は、また何も言わない。
「・・・薄塩?」
そっと薄塩の顔を覗き込む。
「・・・・・・。」
薄塩の顔は、真っ青になっていた。
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「薄塩?どうした?」
腕を持って軽く揺すると、薄塩は一言
「・・・・・・・・・気持ち悪い。」
とだけ言った。
僕の頭に《霊障》と言う文字が浮かぶ。
慌ててピザポの方を見る。
此方も口を押さえ、目に涙を浮かべていた。
「木葉さん・・・!これは・・・・・・?!」
僕が不安になりながら聞くと、木葉さんは事も無げに言った。
「まぁ、グロいですからね。」
「え?」
「グロ過ぎて気分が悪くなったんでしょう。」
木葉さんの隣に居るのり姉も、うんうんと頷く。
「あれは正直、フィルターの無い薄塩とピザポ君にはキツすぎたかもねー。」
「一つの塊に、二、三人がグチャグチャ状態ですもんね。私には鮮明には見えないのですが、それでも気持ち悪いです。」
え?グチャグチャ状態?!
なにそれ!聞いてないよ!!
僕が驚きのあまり口をパクパクさせていると、不思議そうな顔をして、木葉さんが聞いた。
「・・・・・・コンソメ君には、どう見えているんですか?あ、もしかして、見えていないんですか?」
・・・違う。
別に見えていない訳では無い。
あのズルズルと嫌な音を立てて蠢いている塊なら、僕にだって見えている。
ただ・・・・・・。
僕に見えている物は、あまりに馬鹿らしいのだ。
馬鹿らし過ぎて、怖さが皆無なのだ。
「僕の目には・・・・・・。」
意を決して言う。
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「僕の目には、巨大なスライムが沢山居る様に見えます。」
「・・・え?」
二人の目が点になった。
・・・・・・だから、あまり言いたくなかったのに。
「超有名ゲームの看板キャラクターの、青くて目が大きくてプルプルしている頭が尖った、あのスライムです。」
こうして話をしている間にも、また一匹のスライムが、ズルズルとのり姉の後ろを通過する。
「大きさ的にはキングスライムですが、ヒゲと王冠がありませんね。」
木葉さんは、ただ呆れた様な顔で
「そう・・・ですか。」
と言った。
のり姉は苦しそうに、クツクツと笑っている。
僕が少しだけ不貞腐れてそっぽを向くと、隅の壁際で音も無くピザポが吐いていた。
僕は《こんな奴等で大丈夫か?》と、メンバーに一抹の不安を抱えながら、顔をしかめた。
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・・・・・・・・・。
「さて・・・と。」
沈黙を破ったのは木葉さんだった。
「見た目が見た目ですが、此れなら何とかなりそうですね。」
そしておもむろにガチャガチャと一つの窓の鍵の部分を弄りだす。
・・・どうやら開かない様だ。
すると、今度は持っていたバッグから何やら幅の広いテープを取り出し、窓にベタベタと張り付けた。
・・・・・・もう、その窓はテープで殆ど向こう側が見えなくなっている。
おもむろに木葉さんが、手に持っていたバールで窓ガラスを割った。
ゴンッ!
鈍い音を立てて、ガラスにヒビが入る。
スライム達は気が付いていない。
音に反応しないのだろうか。
木葉さんはそのまま、ベリッとテープを剥がす。
窓ガラスには、見事に大きな穴が開いていた。
「ちょ、木葉さん?!」
「・・・・・・どうしました?」
思わず僕が呼び掛けると、木葉さんは不思議そうな顔をして此方を見る。
「何してるんですか!」
そう言うと、益々木葉さんは不思議そうな顔になった。
「何って・・・・・・空気を通す穴を作っています。あ、向こう側にも開けねば。」
「・・・・・・え?」
テープにくっついているガラスの破片をテープごと丸め、移動して、今度は反対側の壁にある窓にテープを貼る。
木葉さんは言った。
「空気の澱みは気の澱みですからね。風の通り道を作ります。・・・あ、窓の事ならば気にしないで下さい。どうせ此処、使われてませんし。後からどうにでもなりますから。」
そしてまた、バールをガラスへと打ち付ける。
ドゴッ!
続いてベリッとテープを剥がす。
此方側の窓にも、大きな穴が開いた。
「・・・此れで良し、と。」
冷たい風が中へ吹き込み、生ぬるい空気が反対側から押し出される。
「良しって何が・・・!」
振り向いて、僕は唖然とした。
さっきまでズルズルとその身体を引き摺っていたスライム達が、一気に三分の一程度に減っている。
「・・・・・・嘘?!」
「多いんですよねぇ。その場の雰囲気に流されて居座っちゃう人達。」
「え、ちょっと待ってなにそれ?!」
「国民性何ですかねぇ。・・・・・・現にほら、場の空気を変えただけで、こんなに数が減りました。」
「なにそれどゆこと?!」
「嗚呼、でも、矢張残ってしまう人も居ますね。困った人達です。」
木葉さんがテクテクと歩き、一匹のスライムへと近寄る。
「よいしょっと。」
無造作にバールを振り上げて、次の瞬間。
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ベリッッ
と、スライムの一部をバールで剥がした。
「え・・・えええええええ?!」
剥がされた部分はまた小さな一匹のスライムとなり、ブルブルとその身体を揺らした。
大きかったスライムは、二回り小さくなって、これまたブルブルと揺れている。
そのうち、小さい方のスライムがじわりと闇に溶け、消えた。
「よし、どんどん行きましょう。」
ベリッッ、ベリッッ、ベリベリッッ!
木葉さんが凄い勢いでスライム達を分裂させて行く。
じわり、じわり、じわり、じわりじわり。
分裂させられたスライムが消える。
そして、気が付くと
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一階のスライム達は、もう一匹も居なくなっていた。
「・・・ふぅ!」
木葉さんが息を吐いた。
のり姉は木葉さんがバールを振り回している間、ずっとニヤニヤしながらそれを見ていた。
ピザポと薄塩は相変わらず顔面蒼白で無言だ。
「・・・・・・どうして消えたんですか?」
僕は木葉さんに聞いた。
木葉さんはヒョイと肩を竦めた。
「言ったでしょう?何人がグチャグチャだと。剥がしてバラバラにしてしまえば、恐るるに足りません。・・・・・・此れもお国柄ですかね。」
もう一度小さく息を吐く。
「さて、次は二階ですね。」
そして、さっさと二階へ向かい始めてしまった。
階段を上る背中に呼び掛ける。
「木葉さーん。」
「・・・ん。何ですか?」
「怖くはないんですかー?」
木葉さんが、階段の途中でクルリと此方を向いた。
「それが《仕事中とプライベートの違い》と言う物ですよ。コンソメ君。」
「一人前の大人になるにあたって、覚えておいた方が良いです。」
ニヤリと笑い、また階段を上り始める。
残された僕等も顔を見合せ、階段を上りだした。
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・・・・・・・・・。
二階へと上ると、其処には一匹のスライムが居た。
ただ・・・・・・。
「うわぁぁぁ!!」
大きい。もの凄く大きい。
頭が天井に付き、壁一面に広がっている。
もうスライムとしての形は保って居らず、膨張し、溶け出し、歪みきっている。
動くことはもう出来ないらしく、グチャグチャとその身体を溶かしながら揺れるだけだ。
「気持ち悪っっ!!」
直ぐ隣に居た薄塩が、ガシッと僕の腕を掴んだ。
「・・・薄塩?」
「説明する。」
ギリギリと腕を締め付けながら、薄塩は言う。
「・・・・・・十数・・・いや、二十数人いるな。溶けて縺れてる。もう引き剥がすのは無理だと思う。合体した一つの肉塊になってるから。」
「・・・痛い。どうしたんだ一体。」
僕が聞くと、薄塩は軽く頭を振った。
「・・・何でもない。」
パッと手を離す。
そして、青ざめた顔で僕を見た。
「なぁ、コンソメ。コンソメにはあれ、何に見える?」
僕は答えた。
「・・・スライム。大分気持ち悪いけど。」
それを聞くと、薄塩は静かに目を伏せた。
「・・・・・・ぅいな。」
「え?」
「危うい。」
そして、いきなり自分の頬を、両手で挟む様にして叩いた。
パシッパシッパシッパシッ
何回も連続で頬を打つ。
「・・・良し!」
「え?」
「落ち着いた。出来る事をする。」
「それって・・・?」
「取り敢えず、ゲ○吐いてるピザポを下に連れて行く。お前も来いな。どうせ此処ではする事無いから。」
そう言って薄塩は、やっぱり隅で吐いていたピザポを指で摘まみ、なるたけ触れない様にしながら階段を下りて行った。
後ろでは、何やら木葉さんとのり姉が相談をしている。
《確かに、此処に居ても僕に出来る事何て無いな。》と思った僕は、薄塩達を追って階段の方へ向かおうとした。
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・・・・・・・・・。
ズルリ
僕が階段を降りようとすると、僕の直ぐ右横に何処かに隠れていたのか、一匹のスライムが現れた。
僕は驚きのあまり尻餅を突いてしまった。
ヒラリ、とポケットから札が落ちる。
「あ・・・!!」
ズルリ
スライムが縦にグチャグチャ音を立てて伸び、僕の目の前を覆う様にして覗き込む。
「ヒッッ・・・・・・!!」
僕の頭にふと、
コンソメ:死因:スライムによる襲撃
と言う一文が浮かんだ。
思わず吹き出しそうになったが、笑っている場合では無い!
しかし、動こうとしても足を捻ったらしく立てない!!
ズルリ
スライムがデロリと、僕の顔に近付いた。
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・・・・・・・・・。
視界の端に、スニーカーが見えた。
僕は咄嗟に目を瞑った。
グチャ!
大きな音に思わず目を開く。
「集団で強がられるのも迷惑ですが、単体で粋がられるのも、うざったいんですよねぇ。」
目の前に居たのはあのスライムではなく木葉さんだった。
「怪我はありませんか?」
「あ、はい。」
捻った右足が痛むが、これはスライムの所為では無く、ただの自爆だ。
「立てます?」
「大丈夫です。触られても障られてもいない様です。」
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リン
不意に鈴の音が聞こえた。
「・・・彼方も始まりましたね。」
オォオオォオオォオォォォオオオォォォォ
風の音にも聞こえる低い音も聞こえ出した。
木葉さんがのり姉と巨大スライムの方を向き、僕も釣られてそっちを向いた。
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最後に見えたのは、小さな黄色い鈴。
本当に、自分の学習能力の低さには嫌気が差す。
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僕の意識は飛んだ。
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・・・・・・・・・。
「・・・・君!コンソメ君!!コンソメ君!!」
僕が目を覚ますと、僕はコンクリート床に寝かされていて、木葉さんが僕の名前を大声で連呼していた。
「・・・あー・・・また気を失ってましたか。迷惑掛けてすみません。」
誤りながら起き上がり、木葉さんの方を見る。
「コンソメ君・・・!!良かった!本当に・・・良かった・・・!!」
「こ、木葉さん?」
木葉さんは何故かボロ泣きだった。
「私の所為でコンソメ君が・・・死んで・・・・・・・・・御免なさい・・・。」
途切れ途切れではあるが、どうやらこの人は何か勘違いをしているらしい。
「御免なさい・・・!!」
泣きながら何回も何回も僕に謝る木葉さんは、さっきまでとはまるで別人の様だった。
「木葉さんの所為では無いです。本当ですよ。助けてくれて、ありがとうございます。」
木葉さんは何かを言おうとしたらしいが、結局何も言わずにまたボロボロと涙を溢した。
僕は泣きながら何故か嘔吐き出した木葉さんの背を叩きながら、僕はその直ぐ後ろでニヤニヤしているのり姉を睨み付けた。
「・・・どうして、気絶した理由を説明しなかったんですか。」
のり姉はニヤリと笑い、キッパリと言い放った。
「理由なんて《萌えるから》の一択でしょーよ。」
「・・・・・・・・・。」
「それよか、あの子どうする?」
のり姉が顎で指した方向を見ると、フワフワとした・・・まるでロリータ服の様なドレスを身に纏った女の子が、割れたガラス窓に腰掛けていた。
※二階は最初から窓が割れていました。
髪はどうやら金色らしく、海からの風を受けてふわふわと靡いている。
目の色は・・・よく分からないが、取り敢えず、日本人では無く、ヨーロッパ系の顔立ちだった。
歳は・・・・・・まだ幼い。精々小学校の三・四年生程だろう。
彼女は不機嫌そうな顔で此方を見ていたが、軈てすくっと窓の縁で立ち上がった。
「チッッ!」
此れ見よがしに、その愛らしく幼い顔に似合わない大きな舌打ちを一回。
「□□□□□□□□□□。」
そして、何語かは分からなかったが、何か一言二言言って、そっとスカートの裾を両手で持ち、此方に一礼した。
強い潮風が吹き込む。
彼女のドレスと髪が風を孕んで膨らむ。
僕はゆっくりと瞬きをして・・・・・・・・・。
目を開けると、彼女はもう居なくなっていた。
彼女の居た場所には、小さな指輪が一つ、置いてあるだけだった。
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・・・・・・・・・。
帰り道。
目の前をのり姉と木葉さんが歩いている。
「・・・木葉君。これ、聞いてみて。」
《・・・・・・君!コンソメ君!!コンソメ君!!起きて下さい!!起きて、死なないで下さい!!コンソメ君!!コンソメ君ってば!!》
「・・・録音、していたんですか。」
「うん。驚いた?」
「其処迄は。如何にも貴女らしいとは、思いましたが。」
「だろうね。」
「はい。・・・・・・驚いて欲しかったですか?」
「ううん。変わらないね。木葉君。」
「そうでしょうか。」
「うん。変わらないよ。」
・・・何だかいい雰囲気である。
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「コンちゃん、なんかご機嫌だね。」
「んー。」
僕はピザポの背中の上でバタバタと足を揺らした。
「ちょ、コンちゃん止めて。痛いから。」
「ん。ごめん。」
僕等はのり姉と木葉さんの数メートル後を歩いている。
そして、僕は暗い夜道を歩くのは危険だと言う理由から、ピザポに背負って貰っていた。
僕とピザポの少しだけ後を歩いているのは薄塩だ。
少しだけ膨れている理由は・・・・・・。
まぁ、察して頂きたい。
「薄塩もそうムスッとしないで、子供じゃあるまいし。」
「五月蝿い。この○ロ製造マシーンが。」
「酷いな!」
「知るかボケ。」
やっぱり機嫌が悪い。
僕は手を伸ばし、薄塩のつむじを押した。
「止めろコンソメ。」
「姉の幸せくらい応援してやれよ。縮め!」
「だって、あの人が相手だと姉貴はきっと今より我が儘放題になるだろ。誰が縮むかチビ!」
「それでも、選ぶのはのり姉だし、僕等はそれを祝って応援すべきだろ。誰がチビだ狐目!」
「・・・・それはそうだけど、頼り無いだろあの人。お前だよお前!」
「大丈夫だよ。一応は弟分だからな。太鼓判を押してやる。・・・覚悟、決めろ。OK表へ出ろ!」
「・・・分かった。俺も腹括る。此処は既に表だチビ!バーカ!!」
「二人共マジで落ち着いて。」
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・・・・・・海の音が遠ざかる。
結局、あの少女と木葉さんの元へ訪れた男性との関係は今も謎のままだ。
指輪は二つで一組のペアリングだったらしく、片方には青、もう片方には赤の宝石が使われていた。
繋がりが有るのは確かだろう。
鑑定の結果、ペアリングは数百年前のフランスの品らしい。
道理で言葉が全く分からない訳だ。
価値は両方で・・・。いや、これは野暮と言う物だろう。
只、貴方が骨董品屋か何かで、赤と青のペアリングを見たとしたら、それはもしかすると、・・・・・・
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・・・・・・・・・。
廃倉庫を出た後、薄塩家の前で僕等は木葉さんに御茶でも飲んで行く様に勧め、のり姉と木葉さんを家に残してコンビニへ向かい、三時間程時間を潰して帰った。
しかし、木葉さんは見事なまでに何の手出しもしなかったので、後日、僕からの説教を受けたのだが・・・それは最早怖い話でも何でも無いので、今回は此処で筆を置かせて頂く。
作者紺野
どうも。紺野です。
お久し振りです。
次回から年を越します。
話はまだまだ続きます。
良かったら、お付き合い下さい。