これは、私が結婚して新居を探してた時の事。
郊外の中古借家を見つけた。
4DKの一軒家で家賃45000円。
掘出し物だと思い旦那と一緒に見に行った。
玄関を入ると広いリビング、10畳はある広さだった。
お風呂は古いタイル張りで湯沸し器の横の壁が穴が空いている。
ガッカリする気持ちを察した不動産業者はリフォームは好きな様にして構わないと言ったがそんな気はなかった。
何より気になったのは2階。
玄関から入って1番奥に階段がある。
階段に近ずくにつれヒンヤリした空気が2階から降りて来るのがわかった。
旦那も気がついているみたいだった。
なかなか2階に行こうとしない。
業者は2階の部屋は広くてキレイだと勧めてきた。
一応みるだけと、旦那と一緒に階段を登ろうとした。
階段の上はとても暗く、何も見えない。
が、声が聞こえてきた。
男の呻き声が…
業者には聞こえないようだった。
ゆっくりと階段を登り、最初の部屋に入る。
空気が歪んでる感じ、急に気持ち悪くなった。
ヤバイ、ヤバイ、何かいる!
視界の端に見えているモノ。
身体が凍りついたように動かない。
視界の端には、こっちに向かって近づいてくる何か。
目線だけを向けて確認しようとした時だった。
それはものすごいスピードで迫ってきた!
髪を振り乱し包丁を振り回し顔をズタズタに切り裂かれた女だった。
もうダメだ!
そう思ったが、女は私をすり抜け消えて行った。
旦那も同じモノを見たらしく固まっていた。
「どうですか?広いでしょう?」
業者に声をかけられ、やっと動ける様になった私たちは、もう帰ろうとした。
もう1部屋、と業者におされ、ここまできたら一緒かぁ、なんて旦那とほとんどヤケクソ気味で次の部屋に向った。
部屋に入るとさっきの呻き声の主がいた。
さっきの女はこいつに殺されたんだろうと思った。
女は男に向かって包丁を振り回しているから。
よく見ると男の顔や手は切り傷だらけだった。
男は何かブツブツ言っているが聞き取れない。
もう、イイだろう。
帰ろう。
私も旦那もこんな所は住むところじゃないと、とっくにわかっていた。
業者には他の物件も見せて欲しいからと、早々に立ち去りたい一心で店に戻るよう言った。
そそくさと、退散しようと階段を降りる。
リビングを通り玄関で靴を履いていたその時、男が急に現れて叫びながら向かって来た。
「なんで死なないんだ〜〜〜〜〜!」
私と旦那は転がるように外に出た。
後日、無事に引越しを済ませ、あの物件の事は忘れかけていた。
ある日、友人の車で出掛けた時、偶然あの物件の前を通った。
あの物件はまだ空き家のままだった。
私と旦那は顔を見合わせ同じ事を考えている事を確認しあった。
「まだ、殺し続けているんだ。」
作者伽羅
怖いですよ〜!
部屋探しは気をつけてくださいね。
ちなみに今の住まいは家鳴りがすごいです。