あれは今から三年前のことかな。
大学生だった俺は、実家から出てアパートで一人暮らししてたのね。
親からの仕送りもあったし、バイトもしてたんだけど。学費もあったし、毎晩のように飲み会にも行ってたから、金なくてさ。
結局は家賃を切り詰めるしかなかった。すんげえボロいアパートに住んでたんだよ。三年半も。
そのアパート、壁も薄いから隣の部屋の生活音とか丸聞こえなのね。掃除機やテレビの音が煩かったし、風呂に水を溜めてるのか、ジャーって音も気になって仕方なかった。仕方ないんだけどね。お互い様だからさ。
そんなある日のこと。
夜寝てたら、鼻の頭にポツリと冷たい水(?)が垂れてきたんだよ。その日は雨降ってたし、俺は最上階の三階に住んでたから「あー、雨漏りか……」と思ったわけ。しかもその水、妙に生臭かったんだ。
でも、目を開けて確認するのも面倒臭かったし、眠たかったから、その日はそのまま寝たんだよね。
で、翌日。夜になって寝てたら、やっぱり鼻の頭にポツリとくるんだよね。これには流石にあれってなった。だって雨降ってなかったし。
おかしいなあと思って目を開けたんだ。そしたらさ、何が見えたと思う?
……女がいたんだよ。天井裏から顔だけ逆さまに出してさ。長い黒髪を垂らした女が。
そいつ、頬がパンパンに膨れてた。餌を溜め込んだハムスターみたいな顔になっててさ。頬が下に垂れ下がってて、下膨れみたいになってた。
そいつの口からチョロチョロ垂れてきた水が、俺の顔に落ちてきてたんだよ。
作者まめのすけ。-2