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短編1
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不審火

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臼井さんは去年の暮れ、忘年会で遅くなり深夜一時頃、帰宅した。

タクシーを降り、ほろ酔い気分で自分のマンションに入ろうとすると、三階のベランダが妙に明るい。

ちらちらと何かが燃えている気配がした。

「それでもっとよく確かめようと思ったんです」

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彼女は建物を少し回り込んでみた。

確かに炎が見えた。

「火事だ」

彼女はエレベーターで三階ヘ行くと、燃えている部屋のチャイムを鳴らした。

寝ているのか誰も出てこない。

しかたなく彼女はドアを叩きはじめた。

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「うるさいねぇ」

不意に隣室のドアが開いた。

「燃えてるんでしょう。でもね、燃えてないから」

青白い顔をした女が面倒臭そうに言った。

「だからもう帰って良いよ、あんた」

「でも……」

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と、言いかけて気づいた。

その部屋は数ヶ月前に一家心中の出た部屋だった。

「わかるでしょう………」

彼女の気配を察した彼女は、そう言い残すとドアを閉めた。

臼井さんは慌てて自室に戻った。

それからたまに一人で居るのに人の気配がするようになった。

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