「なぁ、これ何に見える?」
男は、1枚の絵を俺を含めた周りにいた数人の人に見せている。
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「…俺はウサギかな」
「へ?俺は猫に見えるぜ?」
「私は誰かの人の顔に見えるかな…」
「あ、私も私も!」
「何この絵!面白い(笑)」
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どうやら、人によって見えるものが違っているらしい。俗に言う、トリックアート?みたいなものなのだろうか。
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「な、面白いだろ!ちなみに俺も人の顔に見えたんだが、実はこの絵には、ある秘密があるんだ。」
男はそう、如何にも怪しげな話をする様に声を低くして言った。
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「秘密?」
その雰囲気に飲まれたのか、周りの輩も一緒になって声を低くして話に乗り出した。
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「あぁ、そうさ。皆がこうまで見えたものが違うってのは、気味が悪いと思わなかったか?…実はこの絵はな、その人の深層心理にある、ちょっとした一部分を写し出したものが見えるらしいんだよ。だから、皆が皆して見えたものが違うって訳。」
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…その話を聞いた俺は、正直信じられない気持ちでいた。
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だって…俺が見た絵は…
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俺が絵の中で立ってる
どこかの小屋の中みたいだ
絵の俺の足元には人の死骸が2つ
「お父さん」と「お母さん」
2年前に他界した俺の両親
叔父の話では、誰かに殺されたらしい
犯人は未だに見つかっていない
俺はその犯人を許せなかった
殺したいほど、許せなかった
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…犯人は見つかった。
おそらく俺だ。
なんで、今まで忘れていたのだろう。
なんで、俺が両親を殺したのだろう。
今となっては分からない、いや、思い出せない。
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そんな俺を、殺したい。
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話が終わって皆が教室を離れた後、俺は階段を一歩ずつ上へ上へと、ゆっくり、だが確実に上っていった。
作者赤庭玖繰
皆様、おはこんにちばんわ。
今回は、かなり久しぶりの投稿となります。
タイトルは、フランシス・ベーコンのイドラ論、「ノヴム・オルガヌム」より抜粋しました。
話を創作するのは、しばらくぶりの事ですが、簡潔に考えてみました。
お暇があれば、ご覧ください。