これは、自分の夢の話です。
夢の話は、当人しか怖くない、面白くないと、聞きますが、あえて、載せさせてください。
気がつくと、劇場に居ました。
知らない劇場で、友達と何かを見に来ているようだった。
その友達は、トイレに行き、それを待っている状態。
周りの人の会話から、公演時間は、すでに過ぎているらしく、他のお客は、苛立っていた。
暇を持て余し、携帯をいじっていると、周りのお客が立ち始め、出口に向かった。
クレームでも、言いに行くのかと、思っていると、メールが届いた。
一緒に来た友達から一言
『逃げろ』
それを読んだ瞬間、鋭い寒気と館内放送。
『ご来場のお客さまにお伝え致します。
お光様です。
繰り返し、お伝え致します。
お光様です。』
ガダッ、タッタッタッ、キー、バタンッ。
アナウンスをした従業員が逃げたのが分かった。
『お光様?なんだそりゃ?』
と、思いながら、周りを見ると、座席に居るのは、自分だけ。
出口の方を見ると、客たちが、我先にと、怒号を飛ばしながら、出口から出ようとしていた。
自分は、急に怖くなり、出口から外へ出た。
そこは、川沿いにある商店街だった。
知らない町だったが、逃げるには、橋を渡るか、船に乗るかしか、ないことは、知っていた。
劇場から近い、船着き場に行ったが扉は、閉められ、中には、誰も居なかった。
急いで橋の方に走ったが、門は、閉められ誰もいない。
他の道は、ないかと、商店街に戻ると、
さっきまで、逃げる人でいっぱいだった道路には、誰も居なくなっていた。
ふと、家に入ろうとしていたおじいさんを見つけ、声をかけた。
「すいません!これっていったいなんなんですか?お光様ってなんですか?」
「これだよ!!」
と、ビニール封筒を胸元に押し付けられ、おじいさんは、家に入った。
封筒の中には、『お光様』と書かれた紙、そして、押し花。
白と黄色の花びらが交互に8枚。
見たこともない花だった。
おじいさんの入った家からは、人気を感じなかった。
振り返り、商店街をよく見ると、
店は、開いていた。
閉まっている店もあるが、ほとんどは、開いている。
近くの八百屋に走り込んで、おばちゃんに聞いた。
「すいません!これっていったいなんなんですか?」
「お光様だよ。」
1年に1度、山に住んでいる、『お光様』と呼ばれる人達が町に降りて、食料を買っていくらしい。
「だからって、こんな大騒ぎ。」
お光様は、人では無いらしい。
「そうだ!あんた行くとこないならここにいていいよ。」
「ほんとですか?!お願いします。」
恐怖と不安から即答した。
「ここの店番してくれれいいから。値段は、品物に書いてある。電卓そこ。お釣の心配は、しなくていい。おまけとかしても問題ないから。私たちは、奥にいるから、声かけないで、よろしく。」
早口で言われ、おばちゃんは、奥の部屋に入った。
襖が閉まる時、部屋の中にいた子供が真顔でこっちを見ていた。
『声かけないで。』
はめられたのかと、思ったが、
それでも、誰かが近くにいる場所の方がよかった。
数分後、ビニールを擦るような音が聞こえ始めた。
すると、店の前を黒い大きなビニール袋を引きずりながら、
農作業用の服を着た人達が、歩いていた。
異様なのは、農作業用の帽子だ。
農作業用の帽子は、つばが広く、つばの左右を繋ぎ丸めて、筒状にし、顔への直射日光を防ぐ事ができるのだが、
お光様の帽子は、つばは、かなり長い。
ほぼ、筒を顔に付けてい感じだった。
すると、その中の2人が、こっちに来た。
手の震えが尋常じゃなかった。
その震えを押さえながら、対応した。
「い、いらっしゃいませ!」
「野菜ちょうだい。」
以外に普通のおばあさんの声だった。
「何にしますん、か?」
アゴの震えは、押さえきれない。
「今年は、何がよかったんだい?」
全然知らない。
「実は、自分、最近雇われて、まだ勉強中なんですよね。」
「そうなのかい。」
至って、普通の会話。
少しホッとした。
ふと、もう1人が居ないことに気づいた。
接客に集中し過ぎていたが、店に入ってきたのは、2人だった。
店を見回すと、奥の部屋に入いるための襖の下に、
さっきまで無かった、長靴が置かれていた。
部屋に入ったのかと、思っていると、
「お兄さん、イモちょうだい。」
震えは、だいぶ治まった。
が、お光様の姿を見ると、震えてくる。
袋が満杯になった辺りで、
「お会計は、これで」
と、大きめの巾着を渡された。
手の震えと、巾着の異常な重さに、思わず落としてしまった。
中身は、金だった。
大豆ほどの大きさの金の粒が入っていた。
「すいません!」
急いで、拾い集めていると、奥の部屋からもう1人のお光様が出てきた。
やっぱり、中に入ってたんだ。
と、思いながら金を拾った。
部屋から出てきたお光様が、自分の隣を通ろうとした時、
腕を捕まれた。
お光様にでは、なかった。
お光様が持っている、黒い袋から手が伸び、自分の腕を掴んでいた。
状況が理解できず、動けないまま、黒い袋に目をやった。
ボロボロのビニール袋。
その裂け目から、何か見えた。
歯をガダガタと音をたてて、こっちを見ている子供だった。
手のサイズから腕を掴んでいるのは、この子の手だとわかった。
それを見ても、動けずにいると、
買い物をしてたお光様が、その腕を
蹴り払った。
ガゴッ
聞いたこのない嫌な音。
声を出しかけた、瞬間、
お光様に、耳元で言われた。
「君は、まだ、大丈夫。」
そこで、叫びながら、目が覚めた。
服が湿るほどの汗
喉は、潰れるほど渇れていた
それ以降、その夢は、見ない。
が、時々、耳元で聞こえてくる。
『 まだ 』と。
作者赤屍
この夢を見た後、自分なりに調べたのでしたが、
お光様に関して、伝承や、怖い話は、存在しませんでした。
夢は、その人の記憶などから構成されると、聞きますが、自分がまったく知らないことが夢になるものなのかと、怖くなります。