かつて付き合っていたS君の話。
S君とは幼馴染みで、幼稚園の時から一緒でした。小学校、中学校までも同じで、高校、中学は別々でしたが。高校に入ってすぐ、S君から告白され、私達は付き合うようになりました。
S君には不思議な癖がありました。デートをしている時も、ちらちらと空を見上げているのです。最初は天気の心配をしているのかと思いましたが、晴れていようが雨が降ってこようが、しきりに空を見上げていました。
気になった私は、S君に聞いてみたのです。
「いつも空を見上げてるけど、どうしたの?何かあるの?」
S君は少し困ったように笑いながら答えてくれました。
「信じて貰えないかもしれないけど……空を見上げていると、なくした物が落ちてくるんだ」
S君によれば、最初は小学生の時だったといいます。大切にしていたビー玉をなくしてしまい、酷く落ち込んでいたのですが。ふと空を見上げてあちら、なくしたはずのビー玉が落ちてきたそうです。
他にも、なくしたはずの野球帽、ミニカー、片方の靴下、サッカーボールなど……それらの物が空から落ちてきたのだそうです。
「まさかあ。そんなことあるわけないじゃん。絶対嘘。信じられないもん」
現実主義だった私は一笑に付しました。空からなくした物が落ちてくるなんて……どう考えても現実的じゃないじゃないですか。あり得ません。
S君は寂しそうな表情を浮かべ、私を見つめて言いました。
「君も信じるはずだよ。きっと……」
それから一年後。私はS君の訃報を知りました。
大学からの帰り道、帰路についていたS君の頭上に「あるもの」が落ちてきて、S君に直撃。彼は首の骨を折って即死だったと……。目撃者はそう話しているそうです。
その「あるもの」とはーーー何だったと思いますか?
かつてS君を捨てた、彼の母親だったんです。
作者まめのすけ。-3