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大学2年の晩秋
大学の必修科目を殆どサボり、選択科目の授業は出ていた時のこと。
E(※ある人との出会い-3-参照)という子と会い、色々と話をすることになった。
当時の私は、ある人達からイジメを受けていた。その時に解決してくれたのが仲裁役のEで、何が不満でそういうことをしたのか、何を言いたかったのかを明確にさせ、穏便に話し合いを持ちかけた人だと思っていた。だが、EもEでその時の話し合いで私に直接不満を言ってきた人だ。ただ、話し合いと言っても多勢に無勢。逃げられないような場所で話し合い、言いたいことを直接ぶつけられ、最後に言いたいことはあるかと言われても、ないと答えるしかない状況だった。
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その話し合いが終わり、普通にしていても、無視されイライラしていたら私にぶつけるということをされ、機嫌がいい時にだけ仲良くされていた。そんな訳で私は、仲が良かった人達から孤立してしまい、一人になった。仲が良かった人達には、極力近付かないようにしていた。イジメた人が私と仲良くしていたグループに入ったからだ。Eは最初からそのグループにいた。
大学という場所で、同じ学年で同じ学部、その上、同じクラスなのだ。授業の時もご飯を食べる時も、一人。何百人という人の中で、一人にさせられる。授業に出なきゃいけないのは分かるけど、孤立させられる環境では、到底、学ぶものも学べることが出来ない。実際は、まだイジメが続いているのだった。
Eは、まだ程々に話が出来る相手だった。ただ、もうあまり良い印象は持っていない。状況に合わせ、人に合わせ、立ち回りが非常に上手い人だった。あの状況に何故便乗出来たのか、分からない。
でも、まだ私からしたら、Eはまだ冷静に話ができる相手でもあった。新しい彼氏とどんなことをしたのか、また、どんな人でどういうことをしてくれるのかを、バカ正直に話してしまった。
嘘は付く必要はないと、思ってしまった。
久しぶりに一人じゃない環境を味わいながら、ホッとしてしまったのだ。
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E:「それで、どんな人?」
私:「うん、包容力があって、優しい人かな」
E:「いいねー、あたしの彼氏は全然ダメ」
私:「まー、仕方ないじゃん。好きなんでしょ?」
E:「まぁねー。他は?」
私:「うーん、甘えさせてくれる人、かな?」
E:「ふーん…」
私:「でも、ちょっと怖いことがあった。」
E:「え?」
この時、Hさんと付き合ったキッカケ(※ある人との出会い-1〜4-参照)を話したのだ。
私の実家のことや私自身のことも…。
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E:「そっかー、怖い思いしたんだね」
私:「うん。」
E:「あたしの実家のO県で、氏子やってるんだよね」
私:「そうなの?」
E:「何か怖いことあったら言いなよ?」
私:「うん、ありがと」
そうして、話が終わった。
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数日後、彼氏であるHさんとお泊まりデートをしている時、異変が生じる。
H:「誰それ。」
私:「誰って…?」
H:「後ろ」
私:「?」
後ろ?
私の後ろに、誰がいるの?
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H:「…ちょっと、別の部屋に行ってて。」
私:「うん…」
しばらくすると、ノックが聞こえ、彼に来た。
H:「大丈夫。いいよ。」
私:「そっか。」
H:「やけにすんなり帰ったけどな。ムカつくくらい礼儀正しかった子が一人いたけどね。多分、その子達は今日の夜、うなされるだろ。」
私:「…そっか。どんな人達だった?」
H:「二人ともメガネかけてて、一人は普通の身長。もう一人は小柄の人」
私:「え…。」
H:「…誰なの?」
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知られたくない。私自身、放って置いた部分もあるから。あと2年も続くのだから、お互い、極力関わらない方がいいと考えていた。
恐らく、礼儀正しいのはyの方だろう。容姿は小柄でメガネをかけている。頭の回転が早い上に礼儀は行き届いており、大人受けは良い。
彼女達は、何を話したんだろう…
彼に全て話を聞いてもらった。
イジメのキッカケ
イジメの経過
イジメのピリオド
そして、今の現状
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黙って話を聞いていた彼は客観的に指摘する。
H:「それさ、牡丹の言葉に対して、過剰に反応しただけだよね?」
私:「…そうかもしれない。けど私は、思ったことを感じたことをそのまま言っちゃうから。」
H:「あー…なるほどな。ただ、その過剰に反応したことは、ちょっと異常だね。」
私:「そうなの?」
H:「普通、気に止めない。放っておいて、距離を取ったりするものだけど。あと、言われるのが嫌なら、その場で怒ればいい。それに、終わったことは終わった。なのに、何で今も引きづるんだ?」
私:「…分からない。」
H:「どっちもどっちだ。今の状況を放っておいてる牡丹も悪い。だから憑いてきたんだからな。」
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そうだ。私も私で悪いところはある。もしかしたら、知らない間にたくさん傷付けてしまっていたのかもしれない。だから仕返しと言わんばかりにイジメられ、こんな現状を作りだしてしまった…
H:「悪いけど、写メとかある?その人達の」
私:「あるけど、何で?」
H:「憑くのは良くない。いちいち祓うのも嫌だし、また憑いても困るから。祓う憑くの繰り返しはしたくないから、さっき見た子達なのか確認しておきたい。」
私:「…ツイッターやLINEのアカウントに写メがあったかも」
主にイジメている人は、Fとyだが、仲裁役のEのことも話し、Eのことに彼は反応した。
Fは、LINEのアカウントから見つかったが、yは、見つからなかった。特徴を言ったら理解してくれたけれど…。
H:「Fっていう子、冴えないね。」
私:「毒吐かないの。」
H:「…さっきいたの、この子達だよ。」
私:「…そっか。」
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H:「Eっていう子の写メは?」
私:「確か、ツイッターにあるよ。」
H:「…見して。」
私:「はい。」
ツイッターを見せると、顔をしかめた。
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H:「…悪いけど、その子は気持ち悪い。」
私:「何で?」
H:「顔中に蟲がいて、蠢いている。」
私:「嘘でしょ?だって普通の写メだよ?」
H:「…だって、その子、写メの中でも蟲が蠢いている。あの一瞬の瞬間に。写真、ていうのは、どうしても誤魔化せない一面が滲み出る時もある。その写真の中でも蠢いているなら、相当な数の蟲がいて、本来の顔が見えてない。顔以外にも、蟲で埋まっているとしたら、相当な数を他人にばら撒いたりしてる。本人の意思に関係なくね。その子がいるだけで、誰かの悪口のオンパレードにだってなる。…心当たり、あるだろ?」
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…あることはある。しかも相当ある。
H:「あと、Eっていう子の彼氏は、もろにその子の影響受けてる。顔が老人になるアプリを使って撮った写メだけど、顔の中央に、大きなムカデがくっついてて、動いてる。Eっていう子と付き合い始めて、イライラすること、多くなってるんじゃない?」
私:「何で、知ってるの?」
H:「…その子の一番近くにいるから感情まで影響受けている。」
私:「そうなんだ。」
H:「ごめん、写メ消して。」
私:「分かった」
グロッキーにさせてしまった為、早々に消した後、私達は寝た。
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その夜、私は、うなされていた。
私は覚えてない。が、目覚めが気持ち悪く、変な夢を見た気がした…
私がうなされていることに気付き、彼氏は飛び起きた。
窓を引っ掻く音が聞こえ始め、私が激しくうなされていく程、窓は強く引っ掻かれていく。
彼はマズいと思い、起こしたという。
起きると音は消えた。
知り合いのお坊さんのYさん(※ある人との出会い-1〜4-参照)に連絡し、状況を説明すると、驚愕してしまった。その答えは、呪いを飛ばされている、と言われたからだった。
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生まれて初めて受ける呪い
原因は、私のイジメなのに
どうして私の預かり知らぬところで、こうなるんだろう…
原因は私なのに
私に向けられた呪い
その呪いが私の元に届かず、その力が私自身に対して発揮されなくとも、その恐怖は十分過ぎるほど、私を怯えさせた。
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H:「牡丹を庇った時、壁を引っ掻く音がしたよね?(※ある人との出会い-3-参照)」
私:「うん。」
H:「多分、一気に強まったんだよ。放って置けるほど弱ったんだ、最初は。こんな風になるなら、片付ければ良かった。牡丹、お前、気付いてたよな?何でその子だと思ったんだ?」
そんなに憎いんだろうか?
私が
そんなに恨んでいるんだろうか?
私を
Eに、何をしてしまったんだろう…
専門家に言われてしまうほど、禍々しいものを受ける私は、それだけのことをしたんだろうか…
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私:「あの子のLINEのタイムラインに書いてあったから。」
H:「何が書いてあった?」
私:「あの子の昔のこと。イジメられていたけど、反撃して、イジメっ子を川に突き落とした時からだったみたい。あの子の家は、氏子をやってて、その仏壇に向かって、拝んだらある日、それが叶ってしまった、て書いてあったの。」
H:「何を願った?」
私:「家が火事になるように願ったんだって。そしたら本当に火事になって。何度か、繰り返し気にくわない人をそうやって拝んだみたい。それが妙に気になって、多分、Eかな?って。」
H:「……相当だな。急に力が強まるのも納得がいく。飛ばしているものが、まずデカい。それに、その子がその仏壇を通して、契りを交わし、呪いの媒体そのものを飛ばすとは凄いな。しかも、仏壇に向かって拝むだけで契りを交わせるようになってる。」
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H:「あと、写真が蟲だらけなのは、何度も繰り返し色んな人を呪っているからだな。本人が呪いを送る道筋を作れるし、その道筋の役割はその蟲が果たしてる。凄い数をばら撒いているんだな。」
…何それ。
伝染病みたい。
H:「牡丹の場合は、牡丹が寝ている時にそういうモノが届く道筋が出来る。その道筋を使って、呪いを運ぶが今は出来ない。俺の家にいるから届けることが出来ずにいる。牡丹の家は、今まですんなり入っていたみたいだな。」
どういうこと?
嫌なら嫌って、あの時みたいに、袋叩きみたいな感じで言えばいいじゃない…
こんな…呪うんじゃなくて、直接言えばいいのに。
それとも、言いたくないほど、私を呪いたいのだろうか…
そんな考えがぐるぐると駆け巡った。
続く
作者退会会員
呪い…
それは殺意に似たモノか、それ以上のモノか…
はたまた別のモノか…
皆さんは、どれだと思いますか?
あと、皆さんは呪いたいほど憎い相手はいますか?
私はいますよ…。
こいつだけは許せないと思う相手を苦しめられるなら、どんな方法で苦しめますか?
そんな気持ちと、私が受けた呪いを考えながら、想像しながら、読んで頂けたら幸いです。