「ーーーーーってことなんだよ。」
「ふーん。」
俺が事のあらましを話終えると、縁さんは軽く鼻を鳴らして一言
「放って置けばいいのに。」
と言った。
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思わず立ち上がり、声を荒げてしまう。
「はぁ?!」
「頭の悪そうな声を出すんじゃないよ。」
呆れ顔でたしなめられたが、納得がいかない。
「木葉が大変なことになってるんだって!!」
「実害は無いじゃないか。今の所。」
「だから黒い・・・」
「吐瀉物が黒く染まっただけだろ?」
「ぐっっ・・・・・・・・・」
言い淀んだ理由は、他でもない、木葉が隣に居るからだ。
涙も黒くなっていたこと。其れを張本人たるこいつは知らない。俺が教えなかったからだ。と言うか、無事に帰宅することが出来てホッとしている木葉に、そんな不安要素にしかならない情報は伝えられなかった。
そして、其れを今更言う積もりも無いので、隠したまま食い下がる。
「・・・でもさ、何か嫌な物が入ってきたから、こんなことになってんだろ。」
「其れが身体から出てったから、黒いのが出たんだろ。接触した訳でもないのなら構う必要は無いんじゃないかな。抑、君達が見たような形が定まってない奴は、大抵、他人に害を与えられるような力を持っていないものなんだ。・・・木葉君がダメージを受けたのは体質的に免疫が無かったからだと思うよ。」
「でも、近所の爺さんがそいつと擦れ違った瞬間、熱中症で倒れて・・・」
「冬なら未だしも、夏の熱中症なんてそう珍しいものでもない。老人なら尚更ね。」
何処までも反論をする気らしい。
・・・・・・もし、本当に害の無いものならば、此処で引き下がっても俺としては一向に構わない。
けれど、問題は別の所にある。
「・・・・・・縁さん。」
「はいはい。どうした?」
そう、俺の隣でずっと黙って茶を飲んでいたこいつ。こいつこそ問題なのだ。
「何か隠してますね。」
「そんなことはないね。君達こそ、よっぽど其の黒い人影とやらを悪者にしたいみたいだ。」
縁さんの言葉を聞いた木葉が、薄く微笑む。
「縁さん。」
「だから、どうしたって?」
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「僕も、真白君も、《人影》だなんて一言も言ってませんよ。」
一瞬の沈黙。
縁さんが小声で
「あっ、いけねっ。」
と老人らしくない口調で呟いた。
作者紺野
ごめんなさい。色々あって遅くなりました。しかも短いですすみません