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私とミカちゃんは小学五年生。
幼稚園のときから仲良しで、クラスも同じ。
家が隣同士だから登下校も一緒。
夏休み、海が見えるところで遊ぶのが好きだった。
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海の近くには老人ホームが建っている。
その老人ホームから毎日のように外出している一人のおじいさんがいた。
本当は外出してはいけないらしいが、認知症になっていて勝手に脱け出しているらしい。
今日も老人ホームから脱け出していた。
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テトラポットがある場所の近くに座り、クマのぬいぐるみを持ってニコニコしている。
同じ言葉ばかりくりかえしている。
「あっち向いてホイ♪あっち向いてホイ♪」
ぬいぐるみを動かしながら言っている姿は、小学生の私たちにとって少し不気味だった。
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「あのおじいさんまた来てるね。」
「変なの。」
おじいさんを見ながら話していると、老人ホームで働く人が走ってきた。
「〇〇さ~ん!帰りますよ~!」
老人ホームへ帰って行く間も、おじいさんは同じ言葉をくりかえしていた。
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二人でテトラポットのてっぺんまで登り海を眺める。
キラキラ光る海を眺めながら、時折飛んでくる水しぶきを浴びる。
二人ではしゃいでいると、ミカちゃんが足を滑らせてしまった。
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「ミカちゃん!!」
慌てて下を見るとテトラポットにしがみつくミカちゃんがいた。
幸いかすり傷だけで済んだようで胸を撫で下ろす。
ミカちゃんがいるところまで降りて、大丈夫?と声をかける。
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「ねぇコレ見て。」
ミカちゃんがテトラポットの隙間を指さす。
目を向けるとマネキンの頭部が転がっていた。
「うわぁ……気持ち悪~い……」
リアルな造りに不気味さを感じる。
二人で少しの間かたまっていると。
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「うわぁぁあ!!」
突然マネキンが動いてこっちを向いた。
バシャーーン!
驚いた拍子に海へ落ちた。
泳いで陸に上がる。
お互いびしょ濡れになった姿を見ながらマネキンのことを思い出す。
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マネキンが動いたのは波のせいだろうと二人で笑ってその日は帰った。
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数日後、また同じ場所にくるとパトカーが数台停まっていた。
ミカちゃんと目を合わせてどうしたのかな?と首を傾げる。
近くまでくると警察のお兄さんから近づいたらダメだよ!と叱られてしまった。
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老人ホームから声が聞こえる。
職員が数人いて警察から何かを聞かれてるようだ。
あのおじいさんもいる。
ニコニコしながら椅子に座る姿。
相変わらず変な人だね、と言いながらおじいさんが持っているものを見る。
私とミカちゃんは驚いた。
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おじいさんが持っていたのは数日前に私たちが見つけたマネキンだった。
どうしておじいさんが……??
それにこの騒ぎは何??
おじいさんが警察の人に連れられパトカーに乗り込む。
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私たちと目が合ったおじいさんが高笑いする。
枯れた声で笑うのをピタリとやめてニコニコしながら一言。
「あっち向いてホ~イ♪」
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『ニュースをお伝えします。
〇〇日の〇〇時頃、五人の切断された遺体が発見されました。
発見された遺体の箇所は頭部だけで、黒いビニール袋にいれられた状態で海に沈めてあったということです。
警察の調べによると、五人の遺体は〇〇年前から行方不明になっている〇〇さんとその家族だということです。
警察は、近くの老人ホームを利用している祖父、〇〇さんが何か知っていると見て聴取を行っていく方針です。』
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あの日から十年が経った今、この場所は埋め立て地になっている。
作者退会会員