暗い部屋が一瞬だけ昼間の様に明るくなった。
頭だけを起こしてゆっくりと窓の方へ向けると、少し間を空けてまた空が白く光った。
僕は重い身体を引きずりながら、やっとの思いで窓の近くまで移動した。
汚れた窓を手でなぞると、ベランダにお母さんが立っていた。
お母さんのこんな笑顔を見たのは久しぶりで、妙に嬉しくなった僕は、空腹な事も忘れて急いで窓を開けた。
近くで見たお母さんの顔は青くて、開いた口からはあの時と同じように沢山の血が流れていた。
「お母さん、大丈夫?」
そう言った時、パッと空がまた白く光り、お母さんの姿は消えた。
ベランダの手摺から下を覗くと、玄関の前にお母さんが立っていた。
お母さんはしきりに折れ曲がった右手を動かして、僕に手招きをしている。
僕は窓を閉めて鍵をかけた。
お母さんは死んだんだ。
三年前に事故で死んで、お父さんも一週間前から家に帰ってこない。
それが例えお母さんであっても、勝手に外に出た事がバレたら、またお父さんに叱られる。
僕はベッドに横になると、暗い天井を見つめた。
こうしていればこれ以上お腹が空く事もないし、ましてや僕は一人でもない。
その内にお父さんも帰ってきてくれる。
「ごめんね」
僕がそう声をかけると、天井に浮かんだお婆ちゃんの顔がニンマリと微笑んだ。
さあ、ゲイムの続きを始めようか。
【了】
作者ロビンⓂ︎
もうすぐお盆ですね。
書いた自分でもよく分からないお噺をどうぞ…ひひ…
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