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鬼ごっこ 【A子シリーズ】

中編4
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鬼ごっこ 【A子シリーズ】

大学三回生の春でした。

 アルバイトを終え、疲労困憊の私は、フラフラと家路を歩いていました。

 お腹も空いてるし、何か食べて帰るか……。

 そう思い立った私は、行きつけのカフェに足を向けました。

 落ち着いた外観の小洒落た店内に入ると、清潔感のある顔見知りのホールスタッフの女性がにこやかに笑顔を向けます。

 「いつものください」

 席に着くなり注文すると、「かしこまりました」とホールスタッフの女性がハキハキと言いました。

 「アタシも同じヤツ!」

 は?

 思わず顔を上げると、対面には薄ら笑いを浮かべる見飽きた顔がありました。

 「A子……何故ここに?」

 私が驚いていると、ニヤニヤしたままのA子が言います。

 「アンタのことなら何でも知ってるよ?」

 気持ち悪いことこの上ないA子が私を見つめていることが、ただただ不快な私は、目を合わせないようにバッグから文庫本を取り出しました。

 注文の品が届き、テーブルの上に並べられたのを見て、A子が劇画調になって叫びます。

 「何コレ!?肉がない!!」

 当たり前じゃん……和風きのこスパゲッティだもん。

 「ほら、ここにベーコンがあるじゃない?」

 「こんな削りカスみたいなのは、肉じゃない!!」

 うるさいな……。

 私は気が触れているように喚くA子を無視して、黙々と食べ始めました。

 結局、A子はハンバーグを追加注文し、先に食べ終わった私を待たせ、満足そうに食事していました。

 食事を済ませ、カフェの出口で、「それじゃあ」と手を振る私に、A子が言いました。

 「ちょっと、送るよ」

 居座るの間違いでしょ?

 疑心の目を向ける私に、A子がねっとりした笑みを向けて、私の腕を掴んでいます。

 しばらく歩いていると、路地の奥から女性の悲鳴が聴こえました。

 耳をつんざくような悲鳴を聞いて、私が身を強張らせていると、A子は路地へと駆け出します。

 慌てて後を追いかけた先には、うずくまる女性とA子がいました。

 「大丈夫?」

 知り合いみたいに声をかけるA子に、女性はコクコク頷いていましたが、左腕からダラダラと赤いモノが流れています。

 大丈夫じゃないじゃん!!

 そう思った私は、すぐに救急車を呼びました。

 「刺した人の顔は見た?」

 A子の問いに、女性は怯えながらコクコク頷きます。

 「分かった!」

 A子はそう言うと、すぐさま警察に電話しました。

 「あ?警察?通り魔が……そう、髪は短髪、頬はこけてて、不健康そうな人……今ね、〇〇通りを走ってて……あ!ナイフ棄てた!!」

 まるで一部始終を見ているかのように実況するA子を、私は呆然と見ていました。

 「……バカなヤツめ!!ヤツは自分のアパートに入っていったよ!!コーポ××の二階、203号室!!じゃあ、ヨロシクね」

 A子の実況中継を横目に、私はハンカチで女性の止血をしていると、救急車が到着し、女性を連れて行きました。

 そのすぐ後、警官が2名来て、私達に話しかけてきました。

 「通報してくれたのは、あなたですか?」

 警官の一人が私に話しかけてきましたが、残念ながら通報者は私ではありません。

 「お巡りさん!そっちじゃなくてアタシだよ」

 国家権力にすら馴れ馴れしいA子は、ある意味大物なのかも知れない……。

 そんなバカな考えが頭を過る中、A子はスラスラと状況を説明し始めました。

 「犯人は女性のストーカーで、女性の左腕を刺した後、悲鳴に怯んで逃げたんだ。ナイフはこの先の橋から投げ棄てて、そのままアパートに帰ったよ」

 「見てたんですか?」

 「まぁ…見てた……っちゃあ見てた」

 A子の証言を聞いて、警官が慌ただしく署に連絡したり、応援を呼んだりしているのを見ていると、しばらくして、犯人が逮捕されたことが聞こえました。

 人相も凶器も住居も全て、A子の言った通りでした。

 警官達に褒められ、後日、改めて捜査に協力することを約束し、その場から解放されました。

 帰りの道すがら、私はA子に訊きます。

 「A子って、亡くなった人が見えてるだけじゃないの?」

 私の問いにA子がプッと吹き出して答えます。

 「死んだ人『も』だよ。別に生きてても、強い感情が残ってるなら、辿ることもできるんだ……アタシは」

 ゾクッと背筋が寒くなる私をニヤリと見つめ、A子は続けます。

 「だからアタシは、鬼ごっこやかくれんぼで負けたことないんだよ?」

 ただの変な人じゃないことは身をもって知っていましたが、まさかこんなにトンでもないヤツだとは……。

 その後、被害女性や警察から金一封を賜り、大好きな焼き肉をたらふく食べたのは、言うまでもありません。

 私は、この犬よりも熊よりも鼻が利くA子から逃れることは死ぬまで出来ないんだろうなぁ……と、トングで肉を喰らうA子をぼんやり見つめていたのは、また別の話です。

Concrete
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特別枠に、外国人留学生のロビンミッシェルはいかがですか?(より目…ひひ…

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ろっこめ様
A子恐るべし…もう一生A子からは逃れなさそうですね…ろっこめ様は投稿ペースが早く、うらやましいです〜 これからも応援しています 私の作品にもコメントをくれてありがとうございます‼︎

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新着の怖い話の中から見つけ、最初から全て見させてもらいました☻
A子シリーズ大好きになりました、まさか幽霊だけでなく生きている人でもわかるとは..⁉︎
とても面白く楽しみな作品になりました、これからも応援してます!
また更新楽しみにしてます(^o^)/

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