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中編3
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猫とドルイド

かつて村の英雄と称えられたドルイドの男には、もうほとんど魔力が残されていない。ある日、そんな彼の家に一匹の黒猫が訪ねてきた。

「魔法士様、私は元々人間だったのですが、魔族に騙されて猫の姿に変えられてしまいました。どうかお助けください」

猫は人の言葉でそう言いながら頭を下げた。

男は困惑したが、とりあえず猫を家に上げてからこう説明した。

「もうワシに当時のような魔力は残っておらん。魔力さえあれば元の姿に戻すことも可能だが、今のワシには出来ぬことじゃ。済まんが他を当たってくれ」

男は申し訳なさそうに言うとため息を吐いた。

黒猫も男の心中を察したようで、「すみませんでした」と言うとその日は帰っていった。

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それから数日後、再びあの黒猫がドルイドの家を訪問した。男は猫を家に上げ、話を聞いた。

「やはり私を元に戻せるのはあなた様しか居ません。どうかお願いします」

黒猫はそう言って頭を下げた。

男は困ったような顔で、なぜ自分でなければだめなのかと猫に訊ねてみた。すると猫は照れ臭そうに笑い、こう言った。

「実は私、まだ幼い頃にあなた様の手で魔族から救われた者なのです。なので、きっとあなた様なら私を助けて下さると思い…すみません、勝手なことを」

男は思い出した。

20年程前、村の幼い娘が魔族に拐われた事件が起きたのだ。その時に男はたった一人で魔族に戦いを挑み、見事勝利した。その時に助けた少女が、きっとこの黒猫なのだと、男は思い出して涙を流した。20年前に助けた少女が、またこうして自分に助けを求めている。男は出来る限りのことをしようと思った。

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男はありったけの魔力を使い、なんとか黒猫を元の姿へ戻すことに成功した。当時幼かった彼女は美しい女性へと成長していたが、服を着ていなかったので身体の所々に痣や火傷の痕があるのが分かった。魔族にやられたのだろうか?男はそう思い女性へ訊こうとしたが、その瞬間、女性の目は男を睨み付けた。

女性は裸のまま男を押し倒し、首を絞めた。

「なぜ…じゃ」

男が訊くと、女性は悪意に満ちた表情でこう言った。

「20年前、私は両親から虐待を受けていた。そんな時に魔族が私を拐ったの。魔族は私を性玩具として迎え入れた。それでもごはんはくれたし、寝るときは温かいベッドで寝かせてくれた」

女性は涙を流しながら続けた。

「魔族は私が身体さえ使わせてくれてれば気が済んだの。それ以外の時は優しくしてくれた。それなのに…アンタは魔族を殺して私の生活を奪った!」

女性の首を絞める力が強くなっているのが分かる。

「家に戻された私はまた虐待を受けた。だから家出したの。そしてもう一度私の身体を使ってくれる魔族を探した。そしたらこのザマよ、一回きり使われたら猫にされて捨てられたわ。だから姿を戻してもらうついでにアンタを殺しに来たの」

女性はアハハハハと奇声のような笑い声を上げ、男に顔を近づけた。

「アンタは私の楽園を奪った。ぶち壊したの!!だから今ここで殺してあげる…ヒヒヒ」

男の意識が遠ざかって行く中、最後に視界へ映ったものは、魔族のように醜い顔で笑う女性の姿だった。

Concrete
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