子供の頃って、漠然とした不思議な思い出がありませんか?
居ないはずの友人がいたり、おかしな人らしきものを見たり。
これはそんな話ですので、特にオチはありませんし、言うなればただの記憶語りですがおひとつ。
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私は北海道の漁師町に生まれました。
漁師町と言っても、賑わいのない、廃れたど田舎。バスは1日数本程度。駅と言えば街の中央にある駅を指す。有名なものは魚介類。それから自然。
そんな町ですから、ある程度の季節になると不審者や、馬鹿な都会人や若者がよく集まっていました。
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私の実家はわずか数件のみのご近所さんに囲まれています。
幼馴染はほぼ全員男。年下の女の子がいましたが、私は彼女が苦手で、男とばかり遊んでいました。
小学生男児のやることなぞたかがしれていますし、妙にしっかりした高校生の幼馴染もいたことから、夜に飛び出しても親からは文句のひとつ言われたことがありませんでした。
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ある秋口の夜のことでした。
いつものように持参したタオルに身を包んで遊ぶ私を、姉と高校生の幼馴染二人が見ていた時のことでした。
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我が家のすぐ目の前には、古びたバス停があります。と言っても現役です。問題はそこではなく、その向かいの街灯の下でした。
オレンジ色の光のもとで、まるでスポットライトを浴びるかのように佇んでいたのは長い髪の毛で顔の見えない、巨大な白い女。
でも、当時の私は怖い!とは思わずただただその奇妙な光景を三人に伝えたのです。
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「変な人がいる!」
「どこ見ていってんの」
「怖いって」
男二人は笑いながら、ちょこまか動く私を捕まえてそう言いました。
見えていないのか、変なの、と思ったのを覚えています。
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けれどそれよりも記憶に残っているのが、見上げた姉の顔。
あの、憎々しいものを見るような、おぞましい、顔。
作者中崎べろる
実話とフェイクが入り乱れております。
今思い出すとおしっこちびりそうになります。トイレが1人で行けなくなりそうな。