霊子は頭を抱えていた。
「ん~何でだろ。
これに一体
どんな意味があるっていうの?」
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彼女は、
死者からのメッセージを受けとることができる
特殊な能力の持ち主。
いわゆる霊能力者だ。
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その能力は、
物心がついた頃には、
すでに備わっていた。
彼女は、
生まれながらの本物の霊能力者であった。
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そんな彼女だが、
今、仕事上で
非常に頭を痛めている事柄がある。
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日頃から心霊写真の鑑定を行っているのだが、
数週間ほど前から、
怒濤のごとく
心霊写真の鑑定依頼が
殺到するようになったのだ。
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しかし、彼女を悩ませているのは、
決して依頼件数の多さではない。
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依頼のひとつひとつが、
とにかく、
いつもと勝手が異なるのである。
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通常、本物の心霊写真であれば、
そこに写った霊体から、
何かしらのメッセージが発せられているものだ。
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しかし、
今、寄せられている心霊写真は
本物の心霊写真であるにも関わらず、
メッセージを一切受けとることが出来ないのだ。
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奇妙な共通点はもうひとつあった。
写り込んでいる霊体は
地縛霊や守護霊、
悪霊などさまざまだが、
シチュエーションがどれも似通っている、
ということだ。
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なぜか、
写り込んだ霊体は、
感情を圧し殺したような表情で、
人や物の陰から
顔を覗かせている、
というものである。
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彼女には、
この奇妙な現象の理由が
どうしても解き明かせず、
かれこれ数週間も
頭を抱えていたのである。
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本物の霊能師というプライドがある彼女には
強いポリシーがある。
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それは、
霊から受け取ったメッセージを、
嘘偽りなく、
依頼者に伝えるということである。
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それが、結果として
依頼者を傷つけたり、
悲しませることが
あったとしても…。
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そんな彼女にとって、
そもそもメッセージすら
受けとることが出来ないという、
現在の状況は
非常に耐え難いものだった。
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「この奇妙な現象の理由を
何としても突き止めたい」
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そう強く願う一方で、
その解決の糸口すら見いだせない
自分自身の不甲斐なさや無力さに
押し潰されそうになっていた。
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息が詰まりそうになった彼女は、
気晴らしにテレビのスイッチを入れ、
沈み込むようにして
ソファに腰を掛けた。
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その時だった!!
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たまたまテレビに映り込んできた映像と、
例の心霊写真の一枚一枚とが、
激しくフラッシュバックを起こし、
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彼女の脳裏に
稲妻のような激しさで、
奇妙な現象の答えを
導き出したのだった。
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そして、
彼女は腹を抱えて大声で笑った。
彼女は悟った。
「最初から意味なんて無かったのね…」
と…。
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笑い疲れ、落ち着きを取り戻した彼女は、
ひとり、呟いた。
「霊の世界でも
トレンドに乗っかるってことがあるのね。
やっぱり奥が深い世界だわ」
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「でもね…」と、彼女。
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「真実を話したところで
依頼者は絶対に信じてくれないし、
怒らせてしまうに決まってる…」
彼女は
再び頭を抱え込んでしまうのだった。
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そんな彼女の背中に、
テレビ画面から発せられた「そのフレーズ」が、
何度もこだましていた。
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「はいっ!
ひょっこりはん!」
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作者とっつ
勢いで、もういっちょ新作いってみました。
ネタ作品ですけどね♪