「今日はドライブ日和ですね」
「あぁ、わざわざ誘ってくれてありがとう。嬉しいよ」
「いえいえこちらこそ、わざわざ休みをあわせていただき、感謝してます」
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「えっとぉ~、それでぇ~、あのぉ~」
「あぁ、もしかして、このあいだの返事が聞きたいのかい?」
「あっ…はい…」
「もちろんOKだよ」
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「えっ!?ホントですか♪嬉しい♪ありがとうございます」
「実は僕も前から君のことが気になっていたんだ」
「えっ!?そうなんですか♪」
「だから、君から告白されたときは、本当に嬉しかったよ」
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「なんか、幸せすぎて夢みたい♪
でも、私と先輩が付き合っていることを、
会社のみんなが知ったらビックリするだろうなぁ」
「そうかもね。ハハハ」
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「ところで、そろそろ今日のドライブの目的地を教えてくれても良いんじゃないかな」
「そうですね。実は、鬼女(きめ)神社ってところなんですけど…」
「神社?初デートにしては、ずいぶんと渋いチョイスだね」
「そう言われると思いました」
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「でも、ここは隠れたパワースポットで、
知る人ぞ知るデートスポットでもあるんですよ」
「へぇ、そうなんだ。詳しく知りたいな」
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「言い伝えによると、その昔、ある男性に恋をした女性がいて、想いの強さのあまり、男性を殺して、その身体を食べてしまったらしいの」
「ずいぶんと怖い話だね」
「男性を食べてしまった女性は鬼のような妖怪に変化(へんげ)してしまい、その異様な姿から、村人たちに殺され、その魂を沈めるために、神社が建立され、女性の遺骨を御神体として崇めているらしいの」
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「なんか、デートスポットと言うよりは、心霊スポットだね」
「でも、男性を食べてしまってでも、ひとつになりたいと願った女性の強い意思が宿るこの神社は、
恋愛成就を願う女性の気持ちを後押ししてくれるパワースポットと信じられるようになっていったらしいの」
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「その女性は、鬼であると同時に、神でもあるんだね」
「そう。だから、願いかたによっては、一生の愛が約束されたり、
逆に、相手を呪い殺すこともできるって言われているの」
「ん~、やっぱり心霊スポットじゃん」
「いいの。彼氏ができたら、ここに来て一生の愛を誓うのが夢だったんだから」
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「さぁ、着きましたよぉ~」
「なんか、伝説のわりには、ありふれた感じの神社だね」
「じゃあ、お賽銭入れてお祈りしましょ♪」
『『末永く幸せでありますように。どうか二人をお見守り下さい』』
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「はい、これでよしっと」
「ところでさ、君は、
僕のどんなところを気に入ってくれたんだい?」
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「先輩って優しいですしね」
「先輩ってイケメンですしね」
「先輩って賢いですしね」
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彼女は、心の底から沸き上がる一途な想いの全てを、
それらの言葉に託した。
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晴れてカップルとなった二人だったが、その3日後のこと。
彼はショッピングモールで彼女と買い物中に、不運にも通り魔に襲われ、命を落とすこととなる。
その死に方はあまりにむごいものだった。
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通り魔にナイフで心臓を一突きされたあと、
吹き抜けから三階下に転落、
さらに逃げ惑う客の波に押し倒された大型ディスプレイに
押し潰されたのだ。
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彼は一瞬にして3度死んだのだった。
・・
・
作者とっつ
ありがたいことに定期講読の方が20人を超え、嬉しさのあまり、新作書いてみちゃいました。
今後ともご愛顧よろしくお願いします。
意味怖なので、一応、解説しておきます。
想いを込めた言葉のワンフレーズ「DEATH死ね(ですしね)」ってところが成就してしまったわけです。
神様ったら、おっちょこちょいですね。