第3章  お狐様とおばあさま

長編52
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第3章  お狐様とおばあさま

この本篇を読む前に

「第1章 合成写真」

「第2章 ザリガニ事件」

の順にお読みいただくとより一層理解できると思います

さて・・・・交通事故の原因もはっきりと解明でき

まぁ一部いつおじさんの家から出たのかは未だに思い出せないけれど

お狐様が導いた結果の事故?であった

S君の母親の祖母に当たる人が原因となり私たち4人はいろいろな事象に巻き込まれてしまった

私たち4人はその祖母の兄妹の生まれ変わりではないかということで一応話は落ち着いた

わたしはふとこのおばあさんは何を私たちに訴えかけているのかと

思うことがある

それで私はS君にS君の母親の祖母のお墓参りと供養を8月15日のお盆にしたいと話をした

S君もやはり気になっていたらしく祖母の素性や兄妹たちの行く末が知りたいと思っていたらしい

それでS君の母親も参加してもらえないかとお話をしたらやはり母親も一連の出来事に一抹の不安があるらしく今後S子の身にどんな災いが起きるのかと心配でたまらないのと一度もあったことがない自分の祖母のことも知りたいということで快諾してくれた

祖母の実家のおじさんにもお話をしてお盆の日に祖母の菩提寺でお墓参りと供養をしたいとお話をしたら

おじさん夫婦も気になっているらしく快諾してくれた

もちろん妹たちは即OKが出た

おじさんのお姉さんも参加することでS子が大喜びしてた

「おっちーー、おばさんがくるーーうれしいぞぉーー」とおおはしゃぎ

その祖母の菩提寺はけっこうな山奥にあるらしく祖母の実家の家から車で1時間ほどだそうだ

元は祖母一族はその山の村からの出身らしい

S君はカメラの整備と掃除で忙しそうにしていた

S君から見ればご先祖の土地

1枚でも多く撮るんだ、と息巻いていた

S子はいつものごとく能天気なことばかり話してる

S君の母親は自分の娘ながら

「この子の能天気さ・・大丈夫かしらね」とたまに私に話しかけてくる

「この子、ちゃんとお嫁さんになれるかしらね、だれがいい人がもらってくれればいいけれど・・」と

私の顔をじっーと見ながら話す

「おっちーー私をお嫁にしたらお家が明るくなっていいことばかりだぞぉーーー」といつもの返事

それを聞くたびに母親はガクンと頭をうなだれて

「・・・・S子・・・あなたは・・・」と言いながら台所へ行ってしまう

「どうしたんだろうね、ママ、ね」と私に聞いてくる

私も「・・・・ね」と空返事

確かに家庭は明るくなるだろう・・・だが・・・明るすぎて・・・やめておこう

月日は過ぎ・・・8月に入り毎日が暑い日が続いていた

何事もなく過ぎていくのでかえってなにかしら嫌な予感が日々増大していった

特に私の妹は

「アニキ・・・何も起きないね・・・夢も普通の夢だし・・・毎日が平凡に過ぎていく

お盆の日に何かしら起きるのかな?」と聞いてきた

「ほんと・・・平々凡々・・・S君とほぼ日曜日にあちこち撮影していくけど何も起きない

これって・・・何かの予兆なのかな?あまりにも普通過ぎてちょっと怖いよな」と妹に

話をした

「だよね、アニキ」と返事をした

だが・・・その予感は大当たりする

さて・・・お盆の日

8月15日の朝

私たち5人はいつものレンタカーを借りて一路祖母の実家である京都へ向かった

S君の母親は久しぶりの祖母の家へ行くのか少し緊張した顔になっていた

S子はママが一緒なのが余計に能天気な話を披露していた

お盆なのでやはり高速は渋滞していた

暑いのと日ごろの疲れが出たのか私以外は全員寝てしまった

車のエアコンもちょうどいい具合の冷たさで寝るには最高の環境だ

もうそろそろ1時間になる

SAに入りS君を起こした

完全に寝ていてなかなか起きない

私も運転の疲れが出て少し寝てしまった

30分くらい寝ていたらしく

S君が

「ごめんな・・・寝ちゃってた・・・よっしーー交代交代」と言って運転手交代

その声にみんな目が覚めた

S君ママは疲れが取れたさわやかな顔になっていた

「あらいやだ・・私寝ちゃってたんだね・・・寝顔見られちゃった・・はずかしい」と

顔を隠した

S子が

「ママーーとてもかわいい寝顔だったぞぉーー」と余計なことを言ったためにさらに顔を隠してしまった

「S子!!余計なこと言うな!!」とS君の一声

「おっちーーー、えへへへ、ごめんよぉ」

能天気な返事

完全に車の中は緊張感が吹っ飛んだ

女子3人のおしゃべりはすごくよくしゃべるな、とS君と小声で話をしてたら

聞こえたらしく

「アニキたち、聞こえだぞーー、後が怖いぞ」

「S子なんか怖くはない・・・あはははは」

「ママーー、アニキがいじめたぞぉーーー」とママに話を振った

「S、あとでお話があります」とS君ににらみを利かせた

S君、正面に向いて運転に集中していた

みんな、クスクスと笑いをこらえていた

渋滞のせいで祖母の実家には午後2時ごろに着いた

おじさん夫婦を乗せて一路菩提寺へ向かった

途中でコンビニへ寄り住職のお土産と菓子やジュースなどを買い込んだ

無事に菩提寺へ着いた

ところがタイミングが悪く住職が留守だった

仕方がないので玄関で待つことにした

1時間ほど待ったが帰ってこない

おじさんが

「くそ坊主、どこいった・・・あいつはいつも時間を守ったことはない」と

ぼやいていた

とそのときに大おばさんがやってきた

息子さんの運転で来たようだ

「おっちーー着いたわ」

「明日、朝に迎えに来るんだぞ」と息子さんに言い息子さんは「分かった、明日の朝だな」と言い

帰っていった

「おっちーーー、大おばさまだぁーーーおひさーーー」とS子が大おばさまの傍へ駆け寄った

「おおっちーーー、Sちゃん、おひさーーー、Fちゃんもお元気そうでよかったわ」と私たちに挨拶をした、そして「あら・・・珍しいわね、何年ぶりかしらね」とS子ママとしばらく談笑していた

2時間ほどして住職が額の汗を拭きながら

「ああぁ・・・○○さん(おじさんの名前)、待たせて悪かったのぉ」とおじさんに挨拶をした

おじさんと住職とのやりとりでおじさんはあきらめたような顔で

「おまえ、どこ行ってた?」

「いや・・・・その・・・」

「いつものパチンコ屋だろ?」

「あ・・・」

「図星だな・・・おまえそのうち檀家衆から縁を切られるぞ」

「・・・・」

住職が照れ笑いしながら

「はずかしいところみられたかな」と笑ってた

住職は改めて

私たち8人を見ながら挨拶をした

住職が

「さぁさぁ・・・おあがりなさいな」

「仏間の所へ案内するね」

8人は廊下を渡り大きな仏壇が置いてある仏間へ案内された

広さは20畳ほどだろうが

真ん中に長いテーブルが置いてある

エアコンがよく効いていて火照った体がどんどん冷やされていくのがわかる

住職が冷たいお茶を持ってきた

「おっちーー、冷たいお茶だぞーーおいしいぞぉー」

「おいしいわ」

「おいしい」

と冷たく冷やされたお茶は乾いた喉を十分に潤した

次は水ようかんを住職が持ってきた

ひんやり冷えてておいしそうだ

「おっちーーーここの水ようかんはおひさしぶりだぁーー懐かしいなーー」

住職が

「え!・・・懐かしい?お嬢ちゃんはここはじめてだろ?」

あわててS子ママが

「いえいえ、この子はたまにこういうことを言うんですよ・・・能天気な娘で・・住職様気にしないで・・」とフォローをした

「そっかい、明るくていいお嬢さんだ、おかわりはいくらでもあるよ、どんどんお食べ」

「おっちーー、どんどんたべるぞぉーーー」とパクパクと食べだした

いずれは詳しいことを住職に話さなければいけないが今はその時ではないと感じた

本当に冷えてて甘さも控えめでおいしい水ようかんだった

玄関の開ける音がした

住職の奥さんが帰ってきた

「あれまぁ・・・こんな大人数で・・・今夜はとても賑やかになりそうだわ」といいながら

頭を下げた

S子が

「あれ、ママ、大丈夫?気分悪い?」

「大丈夫・・・少し疲れただけ・・・」

住職が

「奥さん、少し顔が赤いね、エアコンが一番よく効く部屋へ行くといい」といいながら

住職の奥さんに合図をした

「あれんまぁ、顔が赤い、熱をおびてるね、さぁ、奥さん、こちらへ」といいながら

S子ママを別の部屋へ案内して仏間から出て行った

普段そうそうに外出しないから

この暑さに体が追い付けなかったのだろう

普段の疲れが出たのだ

S子と大おばさんがおしゃべりをしはじめた

F子も加わりさらに賑やかになった

ふと外を見るとそこは日本庭園だった

松や庭石が整然と置かれて見るのも涼しい気な感じがする庭だ

その庭の奥は山になりうっそうとした樹林が生い茂っていた

ふと山の頂を見ると神社らしきものが見えた

S君が

「住職さん、あそこの山の上に神社らしきものが見えるけどあれは神社ですか?」と

住職に聞いた

「あれはたしかに神社だよ、ここの村の神社だ、お稲荷様を祀ってる」

「え!お稲荷様ですか・・・」

S君は私の方に向いて合図をした

つまり今からあそこへ行って撮影しようと合図を送ってきた

「住職さん、あそこへ行きたいのですが何か注意をしないといけない個所とかありますか?」

「ああ・・あそこは誰でも行けるから・・・ただ山道だから石ころやら砂利で歩きにくいよ」

「そうですか・・・いまからあの神社へ行きたいのですけれど」

「おおお、それはいいことだ、あそこの頂上からこの村全体が良く見える。絶景だよ」

「おし、行こう」

すると両妹もついていくことになった

4人で神社へ行くことになった

片道30分ほどでつくそうだ

4人はジュースとお菓子を少しもってピクニック気分で頂上へ向かった

寺を出て少し歩くと山の入り口があった

たしかに山道は歩きにくそうだ

ゆっくりと行くことにした

山の中腹あたりで腰を下ろした

日陰に入るとひんやりと空気が冷たかった

天然のクーラーだ

少し先に祠があった

S君気になり見に行くと一枚撮った

少し休んでからまた歩き出した

険しい道ではなかった

確かに誰でも行ける山道

頂上付近に出た

門があり遠くに狐の銅像が2体見えた

4人は門をくぐり中へ入った

普通のお稲荷様

適当な場所を選んで腰を下ろした

妹たちはお菓子とジュースを広げておしゃべりしていた

S君は手あたり次第写していた

汗もほぼ引き落ち着いてきた

私は村全体が見えるということでどこからみたら全体が見えるのか探した

あった!おおおーーたしかに山の下村全体が良く見えた

お寺もよく見えた

仏間からこちらをみてる大おばさんが見えた

景色がいい

S君を呼んだ

「おおお、絶景かな絶景かな、すごいな」

「おっちーーどうしたアニキたち」と妹たちが寄ってきた

「おっちーーーー、すんごくきれい・・・癒されるぅ」

「わぁ・・ホント、きれい・・・田んぼの稲がキラキラと光ってる」

もうS君夢中でシャッターを切っていた

すると・・・2体のキツネの銅像の間につむじ風が吹いた

(母様・・・例の4人が来たね)

(来たね・・ぼうや)

(元気そうでよかった)

(うん、母様)

「え!・・・お狐様の声が聞こえた」

「うん、聞こえた」

「俺も聞こえたぞ」

「私も聞こえた」

(おまえたち・・・遠くからよくきてくれた。これからおまえたちに頼みがある)

「え!・・・頼み?」

(そうだ・・・おまえたち・・・そこから下を見よ・・・小川で楽しそうに4人の子供たちがいるだろう)

「え!!、いつのまにいた?いまさっきはいなかったぞ」

「あ!ほんとだ」

「あ!!!あの子たち・・・・」

「おっちーーーー!!!!おばあさまたちだぁーーー」

(そうだ・・・おまえたちからすればご先祖様たちだ・・・おまえたちはあの4人の行く末は知っているだろう・・・)

「うん・・・おばあさまたち・・・かわいそすぎる」

「おっちーーー!!かわいそすぎるぞぉ」

(あの子たちの運命は変えられない・・せめて・・・私たちの世界へ来る前に少しでも夢を見させてあげてほしい・・・あの子たちの喜ぶ顔が見たい・・・)

「うーーん、でもどうしたら喜ぶんだろう」

「うううう、わかんない」

「おっちーー、わたしもわからない」

(深く考えなくてもいい・・・時間と空間を3日間だけ止める・・・上狐様のお力であの子たちをあなたがたの時空間へ行けるように私が頼んでおいた・・・あの子たちは毎日お腹を空かしている・・・さぁ・・・)

「時間を止める?空間を止める?」

「よくわからん」

(・・・もう時間が無い・・・まずはあの子たちを寺の前に連れてきなさい・・・門をくぐったらあなたたちの時空間へ出ます・・・まずはあの子たちの飢えを・・・)

また2体のキツネの銅像の間につむじ風が吹いた

「え!!・・・お狐様・・・」

「よっし、S君下へ降りよう」

「うん、降りてあの子たちの所へ行こう」

おばあさまたちのいる小川へ急いだ

4人の子供たちは川に入り遊んでいた

その光景を見て私たちもあの年頃の時にあの川でザリガニやらカエルなどを捕まえていたな

「タロウにいちゃん、そこにフナがいるよ」

「オアキ、どこだよ?」

「おっちーーー、ここにザリガニがいるぞぉーーー」

「おお、オハル、つかまえろよ」

「おっちーーー、ジロウにいちゃんのそばにでかいカエルがいるぞぉーー」

とギャギャと騒いでいた

私たちはしばらくその光景を見ていた

自然と涙が出てきた

私たち4人組もあの年頃にあんな感じで遊んでいた

でも・・・・おばあちゃんたち・・・・

涙を拭いてS子が声をかけた

「おっちーー、こんにちわ!おばあさまたち」

「おい!、S子!おばあさまたちじゃないぞ」

「あ!!!ごめん・・・」

一番上の男の子らしき子が

「おれら、おばあちゃんじゃない!あんたら誰?」

「ええ、ああぁ・・・(どうしよう、どう説明したらいいんだ?)」

「おっちーー、タロウにいちゃん、オハル、こわいよぉ」

「オハル、にいちゃんがついてるぞ」

「うん・・・」

あかん、完全に怖がらせてしまった

4人はお互いに身を寄せていた

特に女の子2人は完全にびびっている

能天気S子が

「おっちーーー、私たち、ぼうやたちの親戚筋だぞぉーーー」

「おっちーー???、おねえちゃん「おっちーーー」と言った」

「タロウにいちゃん、このおねえちゃん「おっちーー」と言ったよ」

「オハル・・・騙されたらダメだぞ」

「うん・・・でも・・・」

「おっちーー、おねえちゃんたちはあやしいもんじゃないぞぉーー」

「おっちーー、ここにお菓子と飲み物があるからお食べ」

4人の子供たちは見たこともないジュースやお菓子を見ていた

すると一番下の女の子が手を出した

S子がそぉーとその女の子に手渡した

「オハル!ダメだぞ、知らない人から物をもらったら母ちゃんに怒られるぞ」

「おっちーーー、でも・・・お腹空いてるぞぉーーー」

「オハル・・・兄ちゃんたちもお腹は空いてるけど・・・」

「おっちーーー、大丈夫だよ、親戚なんだからね」

「おっちーー、お食べ」

するとやはりお腹をすかしていたらしく

あっという間にポテトチップス1枚を食べてしまった

「おっちーーー!!おいしいぞぉーーー、にいちゃんたちもたべてみぃ」

「オアキも食べたい」

「ぼくもたべたい」

4人はやはりお腹を空かしていたらしい

ポテトチップス1袋をあっという間に食べつくしてしまった

ジュースも口につけて

「おいしいーーー」

と口々に叫んでいた

その光景を見ていたらまた涙が出てきた

「おっちーー、なんでおねえちゃんたち泣いているの?」と一番小さい女の子がS子に聞いてきた

「おっちーー、なんでもないぞぉーーー」

「そうだ!!!あそこのお寺にもっとおいしいものがあるからついてくるんだぞぉーー」

「おねえちゃんたちあそこのお寺に泊まってるんだよ」

「あ!あそこのお寺はよく遊びに行くよ、あそこの人なの?」と男の子が聞いてきた

「おっちーー、そうだよ」

すると4人組は警戒心がなくなったのか

S子のまわりに集まってきた

「おっちーー、おねえちゃん、お手てつないでー」と小さい女の子がS子の手を握った

「おっちーーー、いいぞぉーーー」

S子の体に4人組がまどわりついた

S子には表裏が無い

だからすぐに仲良しになれる

子供たちはお寺へ向かって歩き出した

「S子、ありがとな」

「アニキ、えへへへ・・・おばあちゃんの手、あったかい」

「そっか・・・」

寺の門に入った

素直に4人組はついてきた

「おっちーー、おねえちゃん、着いたね」

「おっちーー、着いた、着いた」

仏間でおじさん夫婦と大おばさんとS子ママが談笑していた

「あれ?玄関で誰かきたのかな?」

「人の声が聞こえたけど」

「小さい女の子の声も聞こえたね」

「住職さん、誰かきたみたいだよ」

住職は仏さまに手を合わせていた

「はい?え?そうですか・・・ちょっと見てきますね」

と玄関の方へ行った

「どなたですか?」

「おっちーーー住職様、私たちだよ、ただいまーーー」

「おっちーー、ジュウ・・・タダイマーーー」とS子の後にオハルちゃんも挨拶をした

「おおお、おかえりなさいませ」と言い玄関を開けた

「おっちーーー、かえってきたぞーーー」

「おっちーーー、カエッテ・・・タゾ」とオハルちゃんも真似をした

「おおお?ええ?・・・この子たちは・・・??」

住職は見慣れない4人の子供たちを見てびっくりしていた

玄関先でなにやら騒がしいのを聞いて

S子ママやおじさん夫婦や大おばさんがのぞきにきた

S子のまわりに4人組の子供たちがまどわりついていた

「おっちーーー!!!S子ちゃん、この子たちは誰なの?」

と大おばさんがS子に聞いた

「おっちーーー、大おばさま、よく見て」

「おっちーー、オオオバサマ・・・」とオハルちゃんも真似をした

「おっちーー!!!おっちーーと言った、まさか・・・そんなわけない・・・」

「大おばさま、そのまさかだぞぉーーー」

「オオ・・・マサカダゾォーー」とオハルちゃんも真似をした

「そんな・・・・私は夢でもみてるんじゃないかね・・・大おばさまが目の前に・・・」

大おばさんはその場で泣き崩れてしまった

おじさん夫婦も涙が出てきていた

S子ママは

「昔のあなたたちそっくり・・・」と4人組を見て泣き出した

住職夫婦は何が起きているのか理解できなかったらしく

唖然としていた

もう涙の大合唱

S子が

「ママ~~この子たち、お腹がすいているんだよ」

「おなかすているんだぞぉーー」とオハルちゃんも声を出した

あわてて4人組を仏間へ通した

「タロウにいちゃん、ここ、涼しいね、秋みたい・・」

「ほんとだ、涼しいなぁ・・」

「ひんやりしてる」

「おっちーーすずしいぞぉーー」

と4人組は口々に仏間の涼しさに驚いていた

住職の奥さんが慌ててお風呂の準備をしだした

S子ママは急いで台所へ行きそうめんをゆではじめた

おじさん夫婦は子供たちをテーブルへ着かせた

すぐに冷たいお茶を運んできた

「ジロウにいちゃん、おいしいね」

「おいしい、つめたい」

と喉が渇いていたのかおかわりをしていた

住職はまた仏さまに手を合わせていた

S君はその光景を写していた

すると台所からS子ママがそうめんのつゆを持ってきた

「おっちーー、今日はそうめんだぁーーー、暑いからちょうどいいんだぞぉーー」

「おにいちゃん・・・汁だけだよ・・・今日もまたお汁だけかなぁ・・・」

「オアキ・・・我慢しな・・・」

「うん・・・オアキ・・我慢する」

ちょうど住職の奥さんがきた

「お風呂の用意が出来たよ、子供たち、お風呂へ入ろうね」と言い

4人組をお風呂場へ連れて行った

S子が

「あの子たち・・なにかブツブツ言っていたね・・・お汁だけ・・とか」

「あの子たち、そうめんも知らないのかな?」

手を合わせていた住職が振り向き

「昔、おやじに聞いた話ではこの村は貧乏な村で作物がなかなか育たない土地柄なんだよ、年貢の取り立ても厳しくて百姓たちは食うものが無く草や汁だけの食事だったらしい」

「ええーーー、草だけ・・・汁だけ・・・おばあちゃんたち・・・かわいそう」

住職はまだあの子たちの素性を理解していないらしく首をかしげていた

私は住職に今までの経緯を詳しく話した

あの子たちの素性も併せて

「なんと!!、あの子たちはあなた方のご先祖様・・・なるほど・・・あの子たちの運命は・・・

あの格好を見て・・・不思議だと思っていました、今どきあのような格好はみることはないですからな、3日間の期限付きですか・・・短すぎますなぁ・・・分かりました、全面的に協力をしましょう、あとで家内にも詳しく話しますわい」と住職は理解してくれた

そうこうしてるうちに4人組はお風呂場から出てきた

あいにく子供用の浴衣が無い

仕方なしに大きめだが大人の浴衣を着せた

「おにいちゃん、この服・・おおきすぎ」

「おっちーーー、おおきすぎぃーー」

と口々に文句を垂れていた

4人組をテーブルに着かせた

「あれ・・・にいちゃん・・汁の中に何か入ってるよ」

「ほんとだ・・・なんだろう・・・」

「おっちーー、はじめてみたぞぉーー」

S子が

「それはきゅうり、これはタマゴを細くしたものだよ」

「キュウリ・・・タマゴ・・・おいしいのかな?オアキ・・・はじめてみた」

「にいちゃんもはじめてみた」

S子ママが

「この麺をこのようにつけて食べてごらん」と言うと

4人組は次々につゆのなかに麺を入れた

「おしいい・・・にいちゃん、おいしい」

「オアキもおいしいーー」

「おっちーー、オハルもおいしいぞぉーー」

お腹が空いているのでどんどんおかわりをした

あっという間にそうめんはなくなった

S子が

「あーーー、ばあちゃんたちたべすぎぃーー、私たちの分が無いぞぉーーー」

S子ママが

「これ!S子、はしたない!この子たちはお腹空いていたんだから我慢しなさい」と怒られた

「うううう、ごめんなさい・・・我慢する」とS子は下を向いた

するとオハルちゃんが

「おねえちゃん・・・おなかすいてたの?オハルたべちゃった、ごめんよぉーー」とS子に謝っていた

「おばあちゃん・・いいんだよ・・・おなかいっぱいになった?」

「オハル・・おなかいっぱいだぞぉー」

「よかった」

「おねえちゃん・・オハル・・・おばあちゃんじゃないぞぉーーーオハルと言うんだぞぉーー」と

すると

「俺は・・・タロウと言うんだ、一番偉いんだ」

「ぼくは・・・ジロウ・・2番目に偉いんだ」

「わたしは・・3番目・・・オアキと言うんだよ」

「わたしは・・・4番目・・・一番小ちゃいんだ・・オハル」

と自己紹介をしてくれた

するとまた大おばさんが泣き出した

「大おじさま、大おばさまーー、わたしゃ・・・まだ夢を見てる気分だよ・・・目の前に・・・」と言うと

オアキちゃんが

「大おじさま?大おばさま?だれのこと?」と大おばさまに聞いてきた

「ううう・ごめんね・・・年寄りは涙もろいんだよ」とオアキちゃんに言い聞かせた

「おっちーーー、おばあちゃまは涙もろいんだぞぉーー」とオハルちゃんが言うと

子供たち以外は涙が出そうになった

住職の奥さんが

「さぁさぁ・・・子供たち・・・今日は疲れたでしょ・・・今日はここでお泊りしましょうね」と言うと

オハルちゃんが

「トト、カカさまはいつオハルたちをお家へ連れて帰るの?」と聞いてきた

これはやばい、ホームシックになってる

なんとかしなくちゃ

能天気S子の出番だ

「オハルちゃんたちは3日間ここでおとまりするんだぞぉーー、トト・カカ様は3日間ほど用事があってこられないんだぞぉーーー、おねえちゃんたちと一緒にお泊りするんだぞぉーー」と言うと

オアキちゃんが

「ええーーー、3日間も・・・オハル・・・我慢しようね」と言ってくれた

「おっちーーー、オハル、オアキねえちゃんのいいつけを守るんだぞぉーー」と納得してくれた

しかし・・・この「おっちーー」は・・・いったいどこの国の言葉だろう

元祖はオハルおばあちゃんらしいが・・・・「おっちーー」3姉妹が出来た

ゴタゴタとしているうちに陽は落ち

部屋が少しうす暗くなってきた

「もうそろそろ明かりをつけましょうかね」と住職の奥さんが言った

「にいちゃん・・・ロウソクもってきた?」とオアキちゃんがタロウにいちゃんに尋ねた

「ううん・・・もってきてないよ」と返事をした

「さて・・・」と住職の奥さんが蛍光灯のひもをひっぱった

パチンといった瞬間に蛍光灯が光り部屋が明るくなった

「わぁ!!!おにいちゃん、なんか点いたよ」

「わぁ・・まぶしい・・・」

「オハル・・・こわいょ」

「オアキも」

もう4兄妹ははじめてみる蛍光灯の光にびっくりしていた

4人は固まり蛍光灯をジィーーと見ていた

S子が

「これは蛍光灯と言って電気で光るんだぞぉーー」と言うと

「ケイコウトウ・・・デンキ・・・」とオアキちゃんが言うと

「そうだよ、部屋が明るくなったでしょ」と言うと

「うん・・・すごい・・・まぶしい・・部屋が明るいぞぉーー」とオハルちゃんが言った

住職の奥さんが8人分の布団を持ってきた

子供4人はこの仏間で寝ることにした

そして私たち4人もここで寝ることにした

もうひとり大おばさまも子供たちの横で寝たい、と言い出した

「わたしゃ・・・大おじさまや大おばさまの傍で寝たい」と言い出したのだ

「おばあちゃんが一緒だとうれしぞぉーー」とオハルちゃんが大喜びした

「わたしも、オアキもおばあちゃんと一緒に寝る」と大おばさんの手を握った

「うれしぃのぉ・・・おっちーー、夢のようじゃて」と大喜び

「それじゃもう1枚持ってきますね」と住職の奥さんは布団を取りに行った

夜の8時過ぎ・・・

外から虫の声が一層聞こえるようになった

子供たちはふかふかの布団でじゃれあっていた

「すごい、ふかふかしてる、つぶれてない」

「うん・・にいちゃん、ふかふか」

「オアキ、はじめてふかふかの布団をみたよ」

「おっちーー、ふかふか」と

はじめてのふかふか布団の上で兄妹たちはおしゃべりをしてた

S君のママが大おばさんと何か話してた

「さて、困ったわね、この子たちの服をどうしましょうか?」

「おっちーーー、息子に孫の服を持ってくるように電話で話すわ」

「そうですか、すいません。おねがいします」と

子供たちの服について話をしていた

大おばさんが電話で息子さんと話をしていた

「○○(大おばさんの息子)、今からでも孫の服、シャツなど下着類を3日分、男の子2人、女の子2人分、3日分だよ、え!んと・・・10歳と8歳と7歳と5歳位かな・・・10歳と8歳が男の子、7歳と5歳が女の子だよ、むぎ藁帽子4つ、サンダル子供用が4つ、大人用が5つ、それと煮干しを3袋、煮干しを入れる袋ももってきておくれ、それと薬局でハッカ油50mlのを買ってきておくれ、ハッカ油を入れるボトルを9個もな買ってきておくれ

え!!あ!そうだったわね・・・孫も大きかったわ・・・んじゃ、仕方ない、明日スーパーなど開いたらすぐに買ってきておくれ、午前中にはお寺まで持ってくるんだよ、もう時間が無いんだよ、ああ、それと浴衣も買ってきておくれ、そうそう、特に女の子用のはかわいい浴衣を買ってきておくれ・・・なに?親戚にそんな子供がいたかって?今できたんじゃよ・・なに?意味が分からんって?

おっちーー、よく聞け、今ここに大おじさまと大おばさまがいるんじゃよ

なに?大人なのになんで子供の服がいるかって?

つべこべいわんで買ってこりゃいい」と言いガチャンと受話器をおろした

大おばさんはすこし興奮気味で息子さんと話してた

まぁ無理もないまさかここにご先祖様がいるとはだれも思わない

私たち4人も順にお風呂へ入った

気持ちのいい風呂場

家より大きいので足を延ばしてはいれた

昼間の暑さのせいで汗が吹き出し気持ち悪かったから余計に心地よかった

外からの風と虫の声でより一層気持ちの良いお風呂だった

もう夜も10時ごろになり

外の景色はもう完全な暗闇

寺の周辺には人家が無く日本庭園の明かりがボォーと庭を照らしていた

本当に景色の良い場所だ

山の頂上の神社の明かりが良く見えた

エアコンの冷房もよく効いていたが外の風も少し冷たさが加わり

過ごしやすくなった

「よいしょ、もうそろそろエアコンを切りますね」と住職の奥さんがエアコンを切った

すると一層外からの風が入り顔に涼しい風があたった

「信じられない、昼間の暑さは何だったんだよ」

「おっちーーー、きもちいいーーー、少し庭へ出るぞぉー」といいながらS子が

日本庭園の庭へ出た

S君、夢中で写真を撮りまくった

「ううう・・・妹がモデルかぁ・・・・グラビアアイドルがいたらなぁ・・」

「おっちーー、アニキ、ここにグラビアイドルがいるじゃん、F子ちゃんも一緒に写してよ」とF子を呼んだ

「ううう・・・・ガクン・・・仕方ない・・・」

妹たちはいろいろなボーズを決めていた

「アニキ、まじめにやれーー、ママにいいつけるぞぉーーー」と脅かしをかけた

「うううう・・・・カメラがくさ・・・・る」と小さな声でぼやいてた

ふと仏間を見ると大おばさまと子供たちは寝てしまっていた

昼間の疲れが出たのだろう

というより今まで飢えでろくに食べ物を口にしていないし野良仕事のお手伝いもしてたはず

私たちの子供のころよりもこの子たちの体は小さくやせ細っていた

顔は私たち子供の時と似てるので余計にかわいそうに思う

おばあちゃんたちの苦労は私たちには絶対に分からない

住職の奥さんがおにぎりを持ってきてくれた

子供たちがすべてそうめんを食いつくしてしまったからお腹は空いていた

冷たいお茶とおにぎり

相性抜群

「おっちーーー、おなかすいていたんだぞぉーーおいしいぞぉーー」とS子の能天気な声

「S子!声が大きい、子供たちが起きるだろ」とS君に叱られた

「おっちーー、すまんだぞぉーー」と小さな声でS君を見て済まなさそうな顔をしてた

S子ママやおじさん夫婦と住職夫婦もおにぎりを食べていた

住職が

「改めてこの子たちを見てると今の日本がどれだけ豊かになったかわかりますわい

うちのおやじが昔のこの村の悲惨さを話した時にはそう実感はわかなかったけれど

今、この子たちを見てると本当に涙が出ますわい

この子たちをこのお寺に養子縁組として迎え入れたい気分ですわい」

と子供たちを見ながら私たちに話をした

「ありがたい言葉ですが・・・お狐様の話だと3日間の時間しかないそうです

私もこのお寺に養子縁組をしてもらいたい気分です

ですが、運命は変えられないとお狐様はおしゃいました」と私は住職に話した

「当然ですわな・・・このお寺に養子縁組をしたらあなた方子孫がいなくなりますからな

悔しいけれど仕方ないことですわい」

と住職はなんとか泣くのをこらえていた

「おっちーー、おばあちゃんたち、今の時代にずっといてほしいぞぉ

弟や妹ができておっちーうれしいぞぉーー

でも・・・・無理なんだよね・・・」とS子は下を向いた

さて、明日以降のスケジュールをどうするか寝る前にきめておいたほうがいいということで

あーでもないこーでもないとすこしもめた

「とりあえずはまだ子供たちは慣れていないのでお寺の近くの小川で遊ばせることにしましょう」と

S子ママが提案してきた

「たしかに、今、あの子たちを都会へ連れて行っても理解できないし怖がると思う」

「おっちーー、あそこの小川ならあの子たちがいちばんよくわかってるはず、と・・おもう・・

「確かにね、でも100年以上経っているからな・・・川の景色自体はそう変わってなかったけれどね」

「とりあえず午前中はあそこの川遊びで昼食を終えたらあの山の神社へピクニックということでいいじゃないかな」

賛成多数で1日目は決まった

2日目は恐らく子供たちも少し慣れただろうということで近くのコンビニへお菓子とジュースと昼食を買いに行くということで決まった

夜はお寿司を頼むことにした

あんまし今の食事を食べさせてもお腹を下す恐れがあるからと言う理由でさっぱりとしたものがいいと決めた

3日目は京都の街に出て街並みを散歩することにした

人や車など見慣れない風景に子供たちがどんな反応するか不安だったが

やはりおばあちゃんたちに「都会」というものを見せてあげたかった

昼はてんぷらやソバなどのお店で食事をすることにした

お昼からは車で京都の市街地をまわることにした

夕方にはお寺へ帰るということで予定が決まった

後は子供たちの反応を見て予定を変えることにした

蚊取り線香がよく効いているのか蚊が耳もとで聞こえなかった

いつもは蚊が飛んでいて手でシッシッとしていたが

ここはそういうことはない

そうこうしてるうちにS子ママやおじさん夫婦と住職夫婦はそれぞれの部屋へ戻った

私たちも布団へ転がるように入り込んだ

「子供たち、いや、おばあちゃんたち、どんな反応するかな?」とS君に聞いた

「わからない、とくにオアキちゃんやオハルちゃんが心配、途中で泣きださないか心配だ、

まぁ様子を見ながら予定を変えていけばいいや」

「だな・・・見るもの見るもの、はじめてなはずだから、怖がらなければいいけどな」

「うん・・・まぁとりあえずは寝よう」

昼間の疲れが出たのが深い眠りについた

朝6時ごろ・・・ふと目が覚めた

あわてて子供たちの方を見た

ちゃんと寝てた

よかった

ウトウトして朝7時になった

大おばさんと妹たちも起きた

S君はいびきをかいて寝てた

「おい!アニキ、起きろ、朝だぞぉーー」と大きな声でS君を起こした

「わぁ!なんだ?なに?」とまたウトウトしはじめた

S子の大きな声に子供たちが起きた

「??、ここどこ?にいちゃん?」

「アキコ、ここどこ?」

「オハル、わかんないぞぉー」

いつもの家ではなく見知らない部屋の様子に4人はびっくりしていた

S子が

「ここはお寺さんだよ、もう忘れたの?」

「オテラさん・・・」

「オテラ???」

「あ!おねえちゃん、思い出したぞぉーー」

「おねえちゃん、オアキも思い出した」

「アニキ、子供たち起きたぞぉーー、起きろーー」

「アニ・・キ・オキーーローー」とオハルちゃんも真似をした

「ん・・・S子?・・・」

「おおお、オハルちゃんか・・・オハヨ」

「オハヨ、アニキ・・・エヘヘヘ」と照れ笑いをした

子供たちは元気にはしゃぎだした

午前中の小川の遊びは無理ということになった

川の中に缶や空き瓶のガラス片などがある可能性がある

サンダルがない以上は無理

お寺の日本庭園でとりあえず遊ばせることにした

服やサンダルなど大おばさんの息子さんが来ないと何もできない

朝食はご飯と納豆とお味噌汁と沢庵

子供たちは白いご飯に大喜びしていた

聞くと3年も食べていないとのこと

納豆とお味噌汁もはじめてのようだ

たくあんもはじめてみた、と目を点にしていた

能天気S子が

「おばあちゃんたち・・・草や汁しか食べてないからね・・・無理もないかぁ・・」

「本当に昔は食べるものが無かったんだよ、戦前に生まれたからよくわかる、本当に食うものが無かった、大おばさまたちもどれだけお腹を空かしていたことやら・・」と大おばさまは涙を浮かべた

子供たちは白いご飯をおかわりして全部食べてしまった

住職の奥さんは久しぶりに、出した物が見事に無くなったのを見て大喜びしていた

「私たちの所に泊まるお子さんたちは好き嫌いがあるのか食べ残しが多い、食器を洗ってると空しくなるわ」と私たちに語り掛けた

ほぼ全員が朝食を終えそれぞれの用事をしはじめた

住職が朝の勤行をはじめた

すると子供たちがちょこんとすわって住職と同じ動きをしていた

後ろを振り向いた住職は子供たちに真似をされて少し照れていたが

気合を入れて勤行を始めた

洗濯された昨日の子供たちの服をS子ママがもってきた

「とりあえず、この服を着てお庭で遊ぼうね」と子供たちに呼びかけた

子供たちは素直に服を着て草履をはいて庭へ出て遊びだした

鬼ごっこやかくれんぼなどをしていた

すかさずS君カメラチャンスといいながら写していた

朝から蝉がやかましく鳴いていた

今日もこりゃ暑い日になりそうだ

しかし・・・鬼ごっこはいいけれど鬼となってるタロウ兄ちゃんの傍によっていっては鬼ごっこじゃないだろう・・・かくれんぼもオハルちゃん、頭をかくしてお尻が出てるし・・・

でも・・・この4人兄妹はいつもタロウ兄ちゃんの傍から離れない・・・タロウ兄ちゃんは弟や妹たちをちゃんと面等見てる・・・この子たちはいつも寄り添って生きてきたんだ

私たち4人も喧嘩はするがすぐ仲直りしていた

この子たちが私たちをいつも見守ってくれていたんだ

午前10時ごろになった

少し休憩をとることにした

おやつタイム

住職の奥さんがスイカを持ってきてくれた

4人組はスイカをジィーと見ていた

「この黒いものなに?いっぱいついてるよ」

「あかいのはじめてみた」

「おいしいのかな?」と

口々に話をしていた

「これはスイカだぞぉーー、おいしんだぞぉーー」とS子の一声

はじめて使うスプーンで赤く熟れている部分を次郎にいちゃんがすくってたべた

「おいしいーーー、あまーーい、にいちゃんたち、たべてみぃ」

「ジロウが言うのなら・・・、どれどれ、つめたーい、おいしい、はじめてたべた」

「オアキもたべる・・おいしい・・・つめたいよぉ、お口の中ヒンヤリしてる」

「オハルも・・・おっちーーー、おいしい、大きいお姉ちゃんたちもおたべ」

オハルちゃんから促されて私たち4人もスイカを食べた

ひんやりとして本当においしかった

冷水で一晩漬けていたそうだ

山水の澄んだ水で冷やされたから一層冷えておいしかった

ゆっくりとした時間が流れていった

玄関で大きな声が聞こえた

「すいませーーん、おふくろいますか?」

住職の奥さんが対応していた

どうやら大おばさんの息子さんが来たようだ

大おばさんが玄関へ向かった

「おそいのぉ、今までなにしてたの?もう午前11時じゃないかい、頼んだもの全部買ってきたのかい?」

「もちろんさ、何しろお店が開くのが遅いんだよ、仕方ないさ、荷物は全て玄関の所に置いたからさ・・俺、今からまだ用事があるんだよ、ここで、帰るわ」

「おまち、おまえ、大おばさまや大おじさまに挨拶無しで帰るのか?

わたしゃ、大おばさまにどれだけ幼少の時にかわいがられたかお前も知ってるだろ、

この罰あたりもんがぁ」

「おふくろ・・その大おじや大おばって誰だよ?俺が知ってるおじやおばは今日はこの寺にいないはずだ」

「とにかくあがれ、バカ息子」

「バカ息子はないだろ、おふくろ・・・」

と玄関先で親子喧嘩をはじめた

とっさに住職の奥さんが

「まぁまぁ・・・とにかく〇〇さん(大おばの息子の名前)あがればわかるから」

「まぁ・・・おじゃまします」

といいながらおば親子は仏間に来た

「おふくろ・・どこに大おじや大おばがいる?」

「おまえ・・・罰当たりもんがぁーーー目の前にいるじゃろ」

「え?いるって子供が4人いるだけだぞ」

「バカ息子、この子が大おじさまや大おばさまじゃ」

「はぁ?・・・おふくろ・・・とうとうボケがはじまったな・・・それともこの暑さで頭いかれたか」

「ばかたれがぁーー、わしゃボケてはないし、暑さでいかれてないわ、この馬鹿息子」

「おふくろよ・・その馬鹿息子だけはやめてくれ・・・悪い冗談もやめてくれ」

「おっちーーー、ばかたれーー、冗談ではなく、目の前にいるじゃろ」

オハルちゃんが大おば親子のやり取りを聞いていてなにかに面白いのか笑いだした

「おっちーーー、オハル・・おばあちゃんたちおもしろい・・・」

「オアキも・・・」

「おれもだ」

「おいらも」

「おっちーーー!?え?・・・・おふくろ、短時間で「おっちー」をおしえたのか?その「おっちー」は目障りだから使うな、と言ってるじゃないか」

「わしゃ・・おしえておらんわ・・・むしろ、大おばさまの口癖を真似してたら癖になったんだよ、おっちーー、まだわからんのかぁ、このばかたれがぁーー」

とうとう4人組は腹を抱えて笑い出した

能天気S子が

「おっちーーーー、おじさん、その女の子が大ばあちゃんだよ」

「おっちーーー!!??、おふくろ・・・この子にも教えたのか?」

「ばかたれ、この子は産まれた時から「おっちー」だよ」

「はぁ?・・・ようわからん・・・おふくろ・・俺は帰るわ・・・疲れた・・・じゃあな」と言って

さっさとお寺から出て行った

「バカ息子・・・ごめんなさい、大おじさま、大おばさま、わしゃの息子だけど出来が悪いぃ」といいながらオハルちゃんの小ちゃな手を握って謝っていた

「おばあちゃん・・・だいじょうぶ?」

「オハル大おばちゃま・・・優しい子だね」

色々な荷物が玄関に置いてあった

手分けしてとりあえず仏間へ全部持ってきた

「すごい量の荷物だな」

「これ息子さんが全部買ってきたり用意してくれたんだ」

「短時間でね、すごいな」

と大おばさんの息子さんへのねぎらいの言葉をかけていた

まずは子供たちの服を新しい服に着替えさせた

「やっぱ・・・現代っ子と全然変わらない」

「背が小さいのと体が細い以外はホント、変わらないね」

「おっちーーー、昔の私たちだぁーーー」

本当に変わらない、背が小さいのとやせ細った体は仕方ないが本当に洋服が似合う

とくにオアキちゃんとオハルちゃんは本当にかわいい

「オハル・・・初めてこんなかわいい服を着たよ・・・オアキおねえちゃんもかわいいぞぉーー」

「オアキも初めて着た、オハル、かわいい」

「おっちーー、タロウ兄ちゃん、ジロウ兄ちゃん、かっこいいぞぉーーー」

「えへへへ・・・照れるな」

「おいらも照れる」

と4人はすごく気に入ったみたいではしゃいでいた

S子ママが

「あらぁ・・・本当によく似合うわね、昔のあなたたちだよ、懐かしいね」と

私たちに向かってオハルちゃんたちのかわいい服を見て昔を思い出しだそうだ

「おっちーーー、大おばさま、大おじさまたち、よくまぁ似合うねぇ・・かわいいしかっこいい」

と大おばさまもあまりのかわいさに目を細めていた

S君もうシャッターの押しまくり

「これはいいチャンスだ、いい被写体だよ」といいながら夢中にシャッターを切っていた

もうお昼も過ぎ

昼食の時間

昼食は「冷やし中華」にした

台所でS子ママと住職の奥さんが忙しそうに料理を作っていた

なにしろ13人分、おそらく子供たちはお代わりをするだろうからとりあえず17食分を作り始めた

ストックしていた冷やし中華セットがすべて無くなってしまった

トマト、キュウリ、タマゴなどの材料もストックしていた分がすべて無くなった

「こりゃ、今日の夕方までにスーパーに行って材料を買わないとね」と

住職の奥さんがS子ママと話していた

「ですよね、大所帯になってしまいましたから、私もお手伝いをします」

「いいのよ、奥さん、奥さんはお客様・・・そうだね、やはり奥さんは料理を手伝ってもらいましょうか」

「はい、料理なら任せておいてください」

もう午後も1時過ぎに冷やし中華がテーブルの上に並んだ

子供たちは目が点になっていた

はじめてみる料理

「おっ!なんかつめたさそうな感じだよ、タロウ兄ちゃん」

「ほんと、おいしそうな臭いがする」

「おっちーーー、おいしそうな臭いがするんだぞぉーーー」

「オアキも・・・」

住職の奥さんが

「さぁさぁ、おたべ、おかわりはあるよ、遠慮しなくていいから、どんどんお食べ」

子供たちは箸を冷やし麺にはさんで食べだした

「おっちーー、冷たくておいしいぞぉーーー」

「おらも、おいしい」

「おいしい、なんか固いものが口に入った・・つめ~~た~~い」

「オアキ・・・なかなかつかめれない・・・」

つるつると箸からこぼれてオアキちゃんは悪戦苦闘

あわててタロウにいちゃんが横へ行き

「こうやってつかむんだぞ、オアキ、そうそう、そのまま口へ入れてみぃ」

「オアキ・・・食べれたーーー、おいしいーーー、タロウ兄ちゃん、ありがと」

「オアキねえちゃん、いいなぁ、タロウ兄ちゃんにおしえてもらって、うらやましいぞぉーー」

「オハル・・・えへへへ」とオアキちゃんは照れ笑いをしてた

本当においしい冷やし中華

さすがS子ママ

やはり子供たちはおかわりをした

S君、夢中でシャッターを押しまくっていた

その間にS君の冷やし中華はS子に全部食べられていた

「さぁて・・チャンスを全部写した・・・おいしい冷やし中華をたべよ・・・あれ?

僕の分は?」

「おっちーーー、アニキ、おいしかったぞぉーー、アニキの分も私が食べてあげた、感謝するんだぞぉーーー」

「ええええ!!!おい、S子、誰が食べていいって言った?俺の分を返せよ」

「だって、アニキ、カメラに夢中だったから、お腹空かしてないと思って食べてあげたんだぞ」

「おまえなぁ・・・俺だってお腹空いていたんだぞ、返せよ、S子!」

「無理だぞぉーー、お腹の中に納まったぞ、明日、出てくるから、それまで我慢なアニキ」

「あほー、もういいや、S子と関わるとロクなことないや」

すかさずオハルちゃんがS君のそばにきて

「大きなお兄ちゃん、かわいそぅ」とS君の頭をナデナデした

「ううう・・ありがと、オハルちゃん」

「えへへへ・・・照れるんだぞぉー、オアキ、大きなお兄ちゃんから「ありがと」と言われたぞぉーーー」

と満面な笑顔で喜んでいた

「アニキ、何照れてるんだ?かわいいんだぞぉーー」と能天気S子の余計な一声で

さらにS君顔が真っ赤になった

大爆笑の渦になった

住職の奥さんが

「やはり、子供がいると賑やかだね、これが大人ばっかだと少しつまんないからね

この子たちは本当に素直でいい子たちばかりだよ、いいつけもちゃんと守るしお食事も残さず食べてくれたしうれしいかぎりだよ」と大きな声で話した

「オアキ・・・ちゃんといいつけまもるもん」

「オハルも、ちゃんと守るぞぉーー」

食事も終わり

オハルちゃんとオアキちゃんは大おばさんの横に座って雑談をしていた

大おばさん、オハル・オアキちゃんの小ぃちゃな手をさすりながら話に夢中になっていた

タロウ・ジロウ兄弟はじゃれあいをしていた

台所から水筒と煮干しの袋をもって

「今から、あの山の頂上の神社までピクニックだよ、子供たち」と

住職の奥さんが子供たちに言った

「ピクニック?おいらたち、あそこの神社までピクニック?」

「ピクニックってなに?オアキ、はじめてきいた」

「おっちーーピクニックだぞぉーー」

子供たちに水筒と煮干しの袋をそれぞれ持たせた

それと麦わら帽子を4人の子供たちの頭にのせた

S君、「シャッターチャンス」と言いながら撮りまくっていた

「わぁ・・おおきなぼうし、オアキ、うれしい」

「おっちーーー、おおきなぼうし、オハルもうれしいぞぉーーー」

「おっちーーー、おばあちゃんは行かないの?」

と大おばさんに語り掛けた

「わしゃ・・・もう年寄りだて・・こんな暑い時間に外へ出たら倒れるんじゃよ、

オハル大おばさん、わしゃ・・留守番じゃて」とオハルちゃんに申し訳なさそうな顔をしていた

「ええ、オハル、おばあちゃんがこないとつまんないぞぉ、一緒に行きたいぞぉーー」と

催促をしてきた

「ごめんよぉ・・オハル大おばさん、無理じゃよ、オハル大おばさんたちだけで楽しんでおくれ」と

オハルちゃんに言い聞かせた

「オハル・・さびしいぞぉーー、でもわかったぞぉーー、おばあちゃんは留守番だぞぉーー」と納得してくれたみたい

外はもう真夏の太陽が容赦なく照り付けていた

水筒だけでは足りないはずとジュースとお菓子も持っていくことにした

サンダルを履かせ少し歩かせた

やはり慣れていないのか歩行がおかしい

「おっちーーー、なんかへんだぞ、あるきにくいぞーー、草履がいいぞぉーー」とオハルちゃんが文句を言い出した

しかし、サンダルでの歩行を練習させないと草履ではあの山道ではすぐに壊れる

靴でも良かったのだが靴を履くと靴下もはかないといけなくなる

慣れない靴だとかかとが痛くなる

そうおもいサンダルにしたのだ

そうこうしているうちにオアキちゃんが石ころにつまづいて転んでしまった

「イタイヨォーー、オアキ、アンヨガイタイヨォーー」と泣き出した

するとタロウにいちゃんがすぐにオアキちゃんの傍に駆け寄って

「オアキ、痛いか?、どこが痛い?ここ?」

「オアキ、ココガイタイヨォー」と指をさしてタロウ兄ちゃんに教えた

「オアキ、ここだな、兄ちゃんが唾を付けたるからな」と言い

オアキちゃんの擦りむいた傷口につばをつけた

「タロウ兄ちゃん、ヒリヒリする、イタイヨォーー」

あわてて住職の奥さんが傷薬をもってきてくれた

「あらまぁ、オアキちゃん、どれどれ、この赤チンを付けてあげるね」と言い

赤チンを傷口につけた

「オアキ、おばちゃん、イタイイタイ、ヒリヒリするぅ」

と住職の奥さんに抗議をした

「イタイノイタイノトンデイケーー」と住職の奥さんが大きな声をあげた

「イタイノ・・トンデ・・ケーー」とオハルちゃんも真似して大きな声を出した

「絆創膏を貼るね」と住職の奥さんはオアキちゃんの傷口に絆創膏を貼った

「オアキ・・・もう痛くないよ・・不思議」と言いながら自分の傷口を見ていた

だいぶサンダルにも慣れてきた

少し休憩してからいよいよピクニック

タロウ兄ちゃんを先頭に順に並んで山の頂上の神社を目指した

ゆっくりとゆっくりと山道を歩いた

中腹あたりで一旦休憩をした

4兄妹は元気そのもの、おしゃべりをしてた

4人にジュースを配りみんな喜んでいた

S君、いつものごとくシャッターを切っていた

休憩を終わり山の上の神社へ

門をくぐって腰を休めた

4人兄妹たちは走り回っていた

1時間ほどして帰る準備を始めた

「おっちーー、もう帰るの?オハル、まだここにいたいよぉーー」

「俺もここで遊びたい」

「おらもだ」

「オアキも・・・遊びたい」

まぁ、そんなに寺まで遠くないのでさらに1時間ほど神社で遊んだ

おやつとジュースが底をついた

もうそろそろ午後4時になるもう

下山しないと

「もうそろそろ下山するからね」

「忘れ物ないようにね」

「おっちーーー、みんな、帰るんだぞぉーー」とS子の声掛けで山を下りた

だいぶ太陽が傾いてきたが蒸し暑さはなかなか解消されない

水筒のお茶もなくなりかけてきた

やっと麓まで下りた

お寺までもう少しだ

寺の門をくぐり

「ただいまーー」

「おっちーー、帰ってきたぞぉーーー」

「おっちーー、カエッテ・・・だぞぉーー」とオハルちゃんも元気に挨拶をした

「あらまぁ・・・子供たち、洋服が泥だらけ、結構派手に遊んだね」と住職の奥さんが子供たちを見て笑っていた

「おっちーー、アソンダゾー」とオハルちゃん

「オアキもあそんだ」

「お風呂の用意はできてるから子供たちはお風呂入ろうね」と子供立ちに声をかけた

泥だらけの服のままお風呂場へ走っていった

私たちは仏間へ行き腰を下ろした

「子供たち、元気だね、疲れてないのかな?」

「おっちーーー、私は疲れてないぞぉーーー」と能天気S子

「S子、おまえは悩みもないだろ」とS君が嫌味を言った

「アニキーーー、私だって悩みはあるんだぞぉーー、乙女の悩みはあるのさ」

「オトメ?へぇ?おまえ乙女なの?単なるガキだと思ってた」

「アニキ、ひどいぞぉー、もうアニキとは口を利かないぞぉ」

「あはははは、S子、おまえが口を閉ざすことなどありえん」

「・・・・・」

「うわぁ・・マジで口を閉じた」

いつもの兄妹漫才で大笑いした

子供たちがお風呂場から出てきた

それぞれ大おばさんの息子さんが買ってきた浴衣を着た

タロウ・ジロウ兄弟は今流行りのアニメキャラクターが入った浴衣

オアキ・オハル姉妹はかわいい女の子のアニメキャラクターが入った浴衣をそれぞれ着せた

「うわぁ・・オアキ・・この服・・・かわいい」

「おっちーーー、オハルもかわいい」

「おいらのはなんかよくわからない絵がついてる」

「俺のもだ」

本当によく似合う

オアキ・オハルちゃんの浴衣姿は本当にかわいい

S君またしてもシャッターの連射

「あれんまぁ・・・大おじさま、大おばさま、よく似合うのぉ・・・かわいいのぉ」と

大おばさまはあまりにもオアキ・オハルちゃんがかわいいのか

「わしゃもそういうのを着たかった・・・でもわしゃの家は貧乏で親に頼んでも買ってもらえなかった

いいなぁ・・大おじさま・大おばさまたち、うらやましい」とボソッと話した

「おっちーー、おばあちゃんは着たことないの?」

「ない、ない、オハル大おばちゃま、わしゃ、着たことが無いんだよ」

「そっかぁ・・・かわいそう、おばあちゃん、オハルの服、着せてあげたい」

「ありがと、オハル大おばちゃま、優しい子だよ」とオハルちゃんの手をさすった

「オアキもおばあちゃんに着せてあげたい」

「オアキ大おばちゃままで・・・ありがたいのぉ・・・わしゃ、幸せ者だ」と喜んでいた

今日の夕食は

このお寺の精進料理

豪華さはないが涼しげな料理が並んだ

子供たちは残さず食べた

あっさりとした味付けでこの暑い日の晩にはうってつけだった

住職の奥さんが布団を持ってきた

子供たちは布団を並べて順に布団に寝転んだ

おしゃべりをはじめた

大おばさまも布団に寝転んで子供たちのお相手をしていた

まるでおばあちゃんと孫のような感じ

実際は逆なのだが・・・・

完全に陽は落ちた

外の風がひんやりとしてもうエアコンはいらない

エアコンを切り外から流れてくる涼しい風が部屋全体をかけめぐった

「本当に涼しい風だね」

「山から下りてくる風かな」

「おっちーーー、涼しい、汗がスゥーと引いていくんだぞ」

「だよね、昼間のあの蒸し暑さは何?という感じ」

私たち4人組は縁側に座って庭を見ていた

山の上の神社の明かりが余計によくみえた

後2日でこの子たちとお別れ

明日も子供たちの喜ぶ顔が見たい

2日目

朝7時ごろに目が覚めた

昨日の疲れが少し残ってる

S子の大きな声で子供たちまで起きてきた

まさに人間目覚まし時計だ

朝食済ませ

今日は車でコンビニへ行く

私たち4人と子供たち4人だけ

子供たちが初めて見る車に驚いていた

「おっちーー、大きな箱だね」

「オアキ・・・なんか怖い」

「オアキ、兄ちゃんたちがついてるぞ」

「おらたちがいるから」

と口々に車を見ておしゃべりをしていた

先に子供たちを真ん中の席へ座らせ妹たちは一番後ろの席へ

運転は私だ

カメラマンはもちろんS君

「なんかふわふわしてる」

「オアキ・・・のおしりふわふわ」

「なんかお布団みたい」

私はソォーとアクセルを踏んだ

「なんだーーー、なんか動いてるよ、兄ちゃん」

「この箱がうごいてるんだぞぉーー」

「オアキ・・・怖い」

「外見てみろ、外が動いてる」

と少しパニックになっていた

車でおよそ30分ほどのコンビニへ

見慣れない景色に子供たちは驚いたり怖がったりしていた

静かに駐車場に止めた

先に妹たちを降りさせ子供たちが降りる手伝いをさせた

「大きなお姉ちゃん、お手て」とオアキちゃんがF子に甘えてきた

「あっ!、オアキお姉ちゃん、ずるい、わたしもお手て」とS子に甘えてきた

「おらたちは男の子だ、おねえちゃんたちのおててはいらん」

「え!・・・ジロウ・・・お前降りられるのか?」

「ううう・・・なんか・・・タロウ兄ちゃん・・やはり無理・・・」

といいながらS子とF子の手を借りて降りた

全員降りていざコンビニへ

自動ドアに子供たちはびっくりしていた

そして、お店の中にいろいろな商品が置いてあり子供たちは唖然としていた

「おっちーーー、なんかたくさんあるぅーー」

「オアキ・・・これ全部たべれるの?」

「わぁ!ここもひんやりしてる」

「ここはどこ?」

と興奮状態

4人は手をつないでF子やS子の後について歩いた

ジュースやお菓子など

お昼の昼食などを買いあさった

アイスクリームも買った

車に戻りさっそくアイスクリームを食べた

「おっちーー、おっちいぞぉーー、ひんやりする」

「おいしい、お口の中でひんやりしてる、オアキ、びっくり」

「つめたーーい、おいしい、あっ!頭がツンとした」

「おらぁ・・・冷たすぎて・・・」

などと感想を言い合っていた

食べ終わりお寺へ帰った

お寺では私たちの帰りを待っていた

「おっちーーー、ただいまぁーー」

「おっちーー、タダイマァーーー」

とS子とオハルちゃんが挨拶をした

「あらぁ・・早かったわね・・暑かったでしょ」と住職の奥さんが出迎えてくれた

さっそく昼食の弁当をテーブルに並べた

色々なタイプの弁当を買ってきた

それぞれ好きなものを選んで昼食をした

アイスクリームはすぐに冷凍庫へ入れた

冷たいお茶が来た

子供たち4人組はコンビニまで行く道中を大おばさまに報告をしていた

大おばさまは首を大きくうなずいたり首を横に振ったりと子供たちの相手をしていた

午後も13時を過ぎ

子供たちと私たちで近くの川へ遊びに行くことにした

サンダルも慣れてきたようだし大丈夫だろうということでお寺さんの前を流れている小川で遊ぶことにした

麦わら帽子をかぶり水筒を持っていざ小川へ

タロウ兄ちゃんを先頭にジロウ兄ちゃんも川へ入った

オアキちゃんとオハルちゃんは土手でお兄ちゃんたちの様子を見ていた

「おっちーー、タロウ兄ちゃん、なにかいる?」

「ううーん、・・・・、オハル、なにもいないぞ」

「えーー、でもここの川はザリガニやカエルやメダカがたくさんいたぞぉーー」

「うん、いた、でも今はいない」

「おらぁ、のところもなにもいない」

「うそぉ、なんでいないんだろう」

「オアキ、のところからもなにもいないよ」

子供たちが騒ぎ始めた

「タロウちゃん、どうしたの?」

「大きなお兄ちゃんたち、この川は何もいないよ」

「え!そんなはずはない・・・」

私は川の中へ入った

あるのは空き缶やなんかよくわからんゴミが漂っていた

「こりゃあかんわ、子供たち早く川から出て」

と子供たちに催促をした

「ね!何もいないかったでしょ」とタロウ兄ちゃんが言ってきた

「だな・・・ここも結構汚染されてる・・・かといってお寺さんの手洗い水にもなってるあそこの小さな川で遊ぶわけにもいかないし困ったな」

子供たちも不思議そうにしていた

まぁ・・・子供たちのいた時代は汚染物質など無かったからね

100年余りで家庭排水やゴミなど環境汚染が広がったから

とりあえず川遊びは中止にした

子供たちはがっかりしてお寺へ戻った

子供たちのがっかりした顔を住職も気に止みどうしたものかと考え込んでいた

一応手洗い水の上流で遊べることは遊べるがちょっと山の方にあるために

今から行っても遊ぶ時間が無くなってしまう

住職はハッとひらめいたかのように

「子供たちにひらがなとカタカナと物の数え方を私、和尚が教えましょう」と言い出した

私たちは「勉強」と聞くと拒絶反応をするのだが

子供たちは初めて聞く言葉に興味津々だった

テーブルに紙と鉛筆と消しゴムを4つ置いた

和尚がでかい画用紙にひらがなの「あ」を書いた

「これは「あいうえお」の「あ」という文字だよ、言葉に出して書いてごらん」というと

子供たちは画用紙に書いてある文字を書き始めた

和尚が一人つづ「あ」の書き順を教えていった

「オアキちゃん、そうそう、そういう感じ、大きく書いてごらん」

「うん、オアキ、大きく書くもん」

「オハルも大きく書くぞぉーー」

という具合に50音のひらがなとカタカナを教えていった

なかなか初めてのことなので失敗を繰り返していたが

性格がみんな、素直なのですぐに覚えてしまった

和尚もびっくりして「私が小さいころは覚えるのに時間がかかったけれども

この子たちはすごい、こんな短時間で覚えるなんて、次は物の数え方を教えましょう」

定番の「1+1=2」から2桁までの足し算と引き算を子供たちに教えた

これも短時間で覚えてしまった

さすがに和尚もびっくりして

「なんでこんなに早くおぼえることができるのかな・・・やはり素直な性格と我慢強さなのかな」

と子供たちをほめていた

最後に和尚は子供たちに自分の名前を紙に書かせた

それをこの寺の名前付きのカードと一緒にお守りを子供たちに持たせた

1時間ほど休憩したのち和尚が調子こいて九九を覚えさせようとしたが

やはり2人の兄は飽きてきたのかふざけあいをはじめてしまった

そこでこの兄2人の代わりに私とS君が九九の勉強をする羽目になった

オアキちゃんとオハルちゃんは大笑いしていた

なんか恥ずかしいのだが仕方ないので大きな声で九九を暗唱させられる羽目に

ところがS君が途中で間違えたのだ

オアキちゃんとオハルちゃんに大笑いされてS君は退場させられた

「え!!---、S君、退場だって・・・おいおい」

「オアキ、ちゃんと覚えるもん、大きなお兄ちゃんも覚えないとダメだよ」と言われた

顔から炎が出そうだった

本当に恥ずかしかった

結果的に私も退場させられた

「ダメな大きなお兄ちゃんたち、オアキ、オハル、ちゃんと覚えるもん」とオアキちゃんから言われて

S君と私は立ったまま下を向いた

S子が

「あはははははは、退場だっってーー、学校なら「廊下に立ってろ」と同じじゃん」と私たちに差し指をして大笑いした

「くそっ、S子の奴・・・覚えてろ」とブツブツと小声でS君がつぶやいていた

オアキちゃんとオハルちゃんは九九を覚えてしまった

さすがに和尚も仰天していた

「わたしゃ、九九を覚えるのにどれだけ苦戦したか・・・この子たちはすごい、勉強に拒絶反応が無い分、覚えるのが早いのかも」と横目でちらりと私たちを見ながら子供たちをほめていた

ますます恥ずかしくなった

この場から逃げ出したい、そういう気分だった

なんやかんやで夕方も6時をまわった

夕食は出前の寿司だった

子供たちははじめてみる寿司に目をまんまるにしていた

「なにこれ・・・ごはんの上に何か乗ってるよ」

「おっちーーー、ごはんだぁーー、あれ・・これなに?ごはんの上にタマゴがのってるぞぉーー」

「オアキ・・・白いご飯だけでいい・・・」

もう目を白黒させて驚いていた

「オアキ、このお寿司、おいしい、いろいろなおかず?がのってるんだね」

「おらぁ・・・刺身というの初めて食べた、生で食べるとこういう味をするんだぁ」

「おっちーー、おいしんだぞぉーー、トトカカ様にも食べさせたいぞぉーーー」

本当にトトカカ様にも食べさせたい

でもそれは無理・・・・

といつつ・・・お寿司は全て無くなった・・・・

夕食も終わり

お風呂へ

子供たちは大喜びでお風呂場へ駆け込んだ

30分ほどでお風呂場から出てきた

すっかり浴衣姿が似合う

少し休憩してからまた和尚のお勉強会

今度は大おばさまが参加

「わたしゃ・・・貧乏で学校とやらを行ったことが無い、読み書きも色々な人から教わった

大おじ、大おばさまかた、本当に頭がいい、学校に行けたら間違いなく優秀な成績を上げると思う」

「おばあちゃんは学校へ行きたかったの?オアキ、もっと勉強がしたい」

「オハルも学校へ行きたいぞぉーー、色々なことを知りたいぞぉーー」

時代があまりにも違う

せめてあと大おじ大おばさまが50年遅く生まれてればもしかしたら学校へ行けたかも

読み書きと九九のテストをしはじめた

大おばさまも大きな声で九九の暗唱を子供たちと一緒にはじめた

「わたしゃ・・・九九とやらを全然知らなかった、お金があればわしゃも学校へ行きたかった」

もう夜も8時になり勉強会は終わった

子供たちは早々に布団に入り眠ってしまった

あと1日だ

この子たちといられる時間はもう無い

この子たちを現代にいさせる方法はないのか

無理な話

明日は京都の町の中を子供たちと散歩する

どんな反応をするのか楽しみだ

私たちも疲れが出たのか早々に寝てしまった

3日目

朝6時に目が覚めた

子供たちはまだ寝てる

私たちは色々と準備をした

荷物を車の中へ置いた

京都の車の旅

夕方にはお寺に帰る予定だ

朝7時にS子に子供たちを起こさせた

「おっちーーー、おきろよぉーー」

「ううう、あ!大きなお姉ちゃん、おはよぉー、オアキ、目が覚めたよ」

「おっちー、大きなお姉ちゃん、おはようだぞぉーー、オハルも目が覚めた」

「おらぁ・・・もっと寝てたい」

「おれも・・・・」

「今日は車で京都の街並みを見物するんだぞぉーー」

「京都?、はじめてきいたよ、そこへいくんだ」

「おっちーーー、いろいろと見るんだぞぉーー」

「おれ・・・お寺で寝てたい」

朝食を済ませ

子供たちを車に乗せいざ出発

京都の有名観光スポットは結構観光客が多いので

ひっそりとした静かな場所を選んだ

車の通りも少なくいい場所はないかなとカーナビで検索をし

お寺から近い場所がいいということで何とか見つけた

お寺からおよそ1時間ほど

静かで見るところも結構あった

駐車場に車を停め

子供たちにタオルとハッカ油の入った小さなボトルと水筒を持たせた

車から出ると日差しの強い紫外線が容赦なく降り注いでいた

麦わら帽子をかぶせ首にタオルを巻かせ喉が渇いたらお茶を飲むんだよ、と言い聞かせた

ハッカ油の入ったボトルを首筋にシュッシュッとかけてあげると

冷感が増して気持ちよかった

「わぁー、首が冷たい、オアキ、気持ちいい」

「おっちーー、オハル、首に涼しさがあって鼻がスースーしていい感じだぞぉ」

さすがに車が少ないとはいえ100年前の環境と異なり空気が汚染されていて

車らから降りた時にオハルちゃんとオアキちゃんがゴホッゴホッと咳き込んでしまった

そこでハッカ油を首筋にかけてあげた

涼しさとツンとくる匂いで息がしやすくなる

子供たちに一応暑いけれどマスクをするように言った

マスクにハッカ油をかけてあげた

「うんうん、鼻がスゥーとする」

「おらぁもだ」

と効果があるようだ

S子を先頭にオハルちゃんから順に一列に歩くようにと言うと素直に聞いてくれた

歩道から見る景色は子供たちからはどう見えているのかな、と子供たちの話声を聞いていた

「うわぁーー、箱がたくさん動いてる」

「人がたくさんいるね」

「見たことが無い、オアキ、ちょっと怖い」

「おっちー、地面が固いんだぞぉー」と

口々に話をしていた

暑いので一旦喫茶店に入った

エアコンがガンガンに効いていてお店に入るなり汗が一気に引いた

私が何を飲みたいと聞こうと思ったが

子供たちに聞いたところで分からないと気づき

子供たちにはジュース4人分を頼んだ

私たちはアイスコーヒーを頼んだ

ジュースが運ばれてきた

「わぁ!なにかのってるぅ、なんだろう」

「オアキにもなにかのってるよ」

「おらにもだ」

「おっちーーー、おいしそうなのだぞぉー」

と口々に言いながら食べだした

「おいしいんだぞーーー、お口が冷え冷えするんだぞぉー」

「オアキのお口も冷え冷えしてるよ」

「のってるもの、たべてみぃ、おいしいよ」

「わぁ、おいしい、タロウ兄ちゃんの言うとおりだ」

とおしゃべりしながら食べていた

S子が

「オハルおばあちゃんのもの、一口食べたいぞぉーー」

と大人げない言葉を発した

「はしたない、S子!、恥ずかしいぞ」とS君が怒った

「でも・・・食べたいぞ・・・」

「大きなお姉ちゃん、たべてもいいぞぉーー、オハルのジュースおいしいんだぞぉ」

「わぁいー、いただきますぅ、んまい!、冷えてておいしいんだぞ」

「おまえ・・・大人だろ・・・」

「オハル・・・大きなお姉ちゃんのジュース少し飲みたいぞぉ」

「いいよ、オハルおばあちゃん、どぞ」

「あーーー、飲ませたらだめだぞ」

「んん・・・ゲッ!、なんか苦いというかまずいんだぞぉ」

ああ・・・コーヒーを飲ませる馬鹿がいるか

オハルちゃん、咳き込んでしまった

あわててタロウ兄ちゃんがオハルちゃんの背中を軽く叩いた

「S子!おまえは、子供にコーヒーを飲ませたらこうなること知ってるだろ」とS君、怒り爆発

「ごめん・・・オハルおばあちゃんごめんよぉ・・・」

「大きなお姉ちゃん・・・このジュースはまずいから飲まない方がいいよ、オハルのジュースを半分こして飲もうよ」と

もうどちらが大人なのかわからない

「オハルおばあちゃん、ありがと・・・・」

30分ほどして体の火照りもなくなった

お店を出て

東へ向かった

子供たちは見るものすべて珍しく

あーでもないこーでもないとおしゃべりしながら歩いていた

大きな門のお寺が見えてきた

あそこへ行くことにした

入ると

観光客が大勢いた

子供たちは少しびっくりしていた

ゆっくりと中を歩いて回り座る場所があったので腰を下ろした

S君、シャッターチャンスがたくさんあってあちこち動き回っていた

子供たちにお茶を飲むようにと言うと素直に飲んでくれた

顔には汗がにじみ暑そうだった

ハッカ油をかけてあげると大喜びしてくれた

子供たちはあちこち見回してお喋りをしていた

以外にも子供たちの環境に対する順応が早い

もっと怖がって泣き出すのではないかと思っていた

特にオアキちゃんは大人しく人見知りが激しいので心配をしていた

やはり2人のお兄ちゃんがいるという安心感があるのか多少びっくりしながらもちゃんとついてきた

それにひきかえオハルちゃんは何に対しても興味津々でS子によく質問をしていた

両者とも能天気なので気が合うのだろう

ただ「おっちー」「おっちー」と蝉みたいでうっとうしい

もうお昼ごろになり

昼食のお店を探した

てんぷらなどがたべたいなとおもいおみせを

探した

歩いて10分ほどの所にお店があった

子供たちにメニューを見させた

だが・・やはり・・・なんなのか理解できない

子供たちには刺身とてんぷらとソバを注文した

お腹に負担かけないようにしないとね

子供たちは大喜びしてあっという間に食べてしまった

1時間ほどお店にいてデザートを食べ終えてから店を出た

駐車場まで戻った

今度は市街を車でドライブすることにした

慣れない道なのでゆっくりと走った

「箱がたくさんいるぅーー、あれはなに?ワッパが2つあるぅ」

「わぁ・・・大きな箱・・・あれ・・箱の中に人がいるよ」

「なにあれ?丸くて色がついてる、あっ、消えたりついたりしてるんだぞぉー」

「わぁ!びっくりした、大きな音が聞こえた、オアキ、びっくり」

見るものがすべて珍しくワァーワァーギャーギャーと車内は騒がしかった

意外というかS子が珍しく子供たちのおしゃべりの中に入ってこなかった

「やい、S子、どうした?いつもの「おっちー」はどうした?」とS君、S子にかまいだした

「・・・・・・」

「おお、ダンマリ・・・」

「・・・・・」

するとS子の目から涙がこぼれだした

「わぁ・・・S子・・・きつい言い方したごめん・・・」

「ううん・・・アニキ・・・違うんだぞぉ・・・おばあちゃんたち今日でお別れなんだと思うと涙が出てきたんだぞ」

・・・・確かに今日でお別れだ

この子たちの大喜びしてる顔はもう今日で見られなくなる

私たち3人は涙目になった

S子はもう涙が出ていた

「もうあと3日間一緒にいたいぞぉーー」

「俺もだ」

「わたしもそう」

「だな」

だがお狐様は3日間しか無理だと言っていた

運命なのだ

この子たちを元の時代へ戻さないと私たちは生まれてこられない

この矛盾した気持ちは4人とも感じていたがどうしようもない

京都市内のドライブを無事に終えお寺へ帰ってきた

子供たちはもっと見たい見たいと言っていたが

もう期限の時間が迫っていた

今夜恐らく夜10時ころにはお狐様が子供たちを元の世界へ戻すだろう

私たちはお土産ではないがおよそ1か月分の食糧と水などをあの子たちの時代へ持って行ってくれるように頼むつもりだ

せめて1日でも長生きしてほしい

もうそれだけだ

子供たちをお風呂へ入らせ

夕食を済ませた

S子ママや大おばさま・住職夫婦はこの子たちの最後の姿を焼き付けようとジィーと子供たちを見守っていた

子供たちは疲れが出てきたのがお布団の中に入り寝てしまった

「今日でこの子たちとお別れなんだね」とS子ママが言い出した

「ママーー、おばあちゃんたちはやはりトトカカ様のいる時代が一番だと思う

たとえ草や汁しか食べれない時代でもね、私たちのいる時代にいても果たして幸せなのかと疑問に思う

今日、オハルおばあちゃんが私に「トトカカ様の所に帰りたい」とボソっと言ってきた

私たちがあちこち色々な場所をみせてあげても全部が理解できてるんじゃないとS子よくわかったんだ

やはりおばあちゃんたちはトトカカ様の傍で暮らしたいんだと

私たちはたしかにオハルおばあちゃんたちの生まれ変わりかもしれないけれど

オハルおばあちゃんたちから見たら私たちは見知らぬ人だからね

でもお狐様の約束は守れたと思う、おばあちゃんたちに「夢」を見せて上げれたと思う

おばあちゃんたちが戻って時間が正常に動き出したら楽しい夢だったねと言ってもらえると思う

でも私たちは夢でなく現実におばあちゃんたちといたという記憶が残る

本当にもうこういう楽しい夢は絶対に見られないと思うよ」とS子が涙を流しながら話した

「S子・・・おまえは・・・本当に心優しい妹だよ、いやオハルおばあちゃんの性格だ、誰にでも話かけ誰にでも優しく接する、まさにオハルおばあちゃんだ

オハルちゃんを見てはっきりと確信したよ」とS子の言葉に感動していた

「おっちーー、オハル大おばさまはわたしゃがちょうどオハルちゃんの年頃にわしゃの親に連れられて

オハル大おばさまの実家にきた。オハル大おばさまとはじめてあったときに

「おっちーーー、はるばる遠いところからよくきてくれたんだぞーー、おちびちゃん、えらいんだぞぉーー」とほめてくれた。そしてわしゃの手をさすりながら「小っちゃい、おてて」と言いながら

膝の上に抱っこしてくれた。昨日、わしゃ、オハルちゃんを膝の上に抱っこしたときに強烈に思い出したんだよ。昔にオハル大おばさまがわしゃを抱っこしてくれたことをな」

「あ・・・オアキ・オハル・・・どこかで聞いたような名前だなと思ったんだけど

・・・今思い出したわ・・・倉庫の中にたしか・・あったはず・・・ちょっと探してきますね」と

住職の奥さんは何かを思い出したようで倉庫の方へ行ってしまった

「おいおい、・・・・もうしわけないですなぁ・・・なにを思い出したのやら」と

住職は私たちに謝った

******

だいぶ話が長くなってしまった

一旦ここで切ります

まだこの後がこの話の核心部分となります

時間的に余裕があるときにでもお菓子を食べながら読んでください

人物像がはっきりといって分かりにくいと思います

それを踏まえてお読みくださると幸いです

Concrete
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@けだま

コメントありがとうございました
今最終章を執筆中です
もうしばらくお待ちください

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読んでいて、ほろほろと涙が出てきてしまいました。

今を生きる自分の汚れた心に染みる話で、先が気になります。

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