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長編17
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夢の中の夢の中の夢

皆さんは夢を見ているときに夢を見たという人はいるでしょうか?

私は何と夢の中の夢の中の夢を見るという非現実的な現象を体験しました

まぁ・・・原因は恐らく仕事からくるストレスと睡眠不足で現象が起きたと自分自身は思っています

長い寒い冬が終わり暖かい春の日

私は仕事疲れでソファでうたた寝をしていた

リビングでは春休みの子供たちが騒いでいた

特に葵は日頃兄たちに遊んでもらえずに寂しい思いをしていた

休みの間は午前中は兄たちがいるので葵は匠が仁かどちらかの兄と遊んでもらっている

「仁兄ちゃん!!遊ぶんだぞ」

「わぁ!葵かぁ・・・俺さ・・・今から友達の家へ行くんだよ、匠兄ちゃんと遊んでもらえよ」

「え・・・匠兄ちゃん、遊ぶんだぞ」

「おい!!仁、こっちへ振るなよな・・・俺もさ・・・今から友達の家へ行くんだ、悪いな、葵」

「えええ・・・・そんな・・・今日遊んでくれるって言ったじゃん!!」

「悪いなぁ・・・楓と遊んでもらえよ」

「わぁ!!兄ちゃんたちずるい!!私もこれからお友達の家へ行くんだからさ」

「え・・・・みんな・・・何処か行っちゃうんだ・・・」

葵の目に涙が溢れてきたようだ

兄妹たちは支度をしてさっさと家を出て行ってしまった

私はウトウトと葵と兄たちの会話を聞いていた

((葵・・・))

ついに葵は泣き出した

「パパ!!!みんな葵を置いて遊びに行っちゃったよ

あたち・・・ひとりぽっち・・・」

私は強い眠気のために言葉を発せられなかった

「パパ・・・」と葵の声が段々と聞こえなくなった

どのくらいの時間寝たのだろう

いやに静かだ

もう昼頃だろうと思い目を開けて周りを見まわした

誰もリビングにはいなかった

時計を見た

「え・・・・まだ朝の9時・・・・もっと時間がたってると思ったけど・・・

いやに静かだな・・・」

私はソファから体を起こした

誰もいない

シーンと静まりかえっていた

あれ・・・葵はどこへ行った?

中庭かな・・・

オヤジとおふくろは商店街の集まりで朝早く出かけている

S子は昨日から実家へ戻っている

今、家にいるのは私と葵だけなのだが・・・

私は中庭へ行ってみた

葵がいない

「あれ・・・いないぞ、どこ行った?」

「おーーーい、葵、どこ?パパだよ」と大きな声で葵を呼んだ

返事がない

まさか!!一人で外へ出たのかな

私は慌てて着替えて玄関へ向かった

玄関の戸を開けて足を一歩出たときに目の前に葵が玄関に置いてある花に水をかけていた

「お・・・ここにいたのか・・・」

「パパ・・・何処か行くの?葵も連れてってよ」

「いや・・・葵の姿が見えなくなったからてっきり一人で外へ出たんだと思って慌てて着替えただけだよ」

「あたち・・・一人で外へ行かないよ、パパやママの言いつけは絶対に守ってるから」

日頃から葵だけ一人で外へ出ないようにと言っている

もしものことがあったら大変だから

「そっか、いい子だ・・・少しお散歩するかな」

「うん、パパと一緒に行く」

家にいても退屈だし春の暖かい日差しを浴びて少し散歩しよう

家の鍵を閉めて葵の手を握り外へ出た

ガラガラ、ガチャ

(え・・・玄関の戸を開ける音?・・・)

私は振り返って玄関を見た

何も異常はなかった

空耳かな・・・

まぁいいか・・・

少し歩いたところに自販機がある

葵と私の分のジュースを買った

「パパ・・・お兄ちゃんたち・・・あたちを置いてさっさと出かけて行ったんだよ

今日はみんなと遊ぶ約束してたのに・・・ずるいんだぞ・・・あたち・・・」と

葵は大きな声で泣き出した

「おいおい・・・泣かなくても・・・パパがいるからね」

「うん・・・パパがいるんだぞ、もう泣かないんだぞ」

裏道を歩いた

やはり・・・田舎だな・・・

「パパ、少し疲れたんだぞ、ここで休みたいんだぞ」

と葵はそう言いながら座り込んでしまった

「そっか・・結構歩いたからね」

「うん!!」

距離にして2Km位かな

裏道のほうは小高い山がポツンとある

麓に小さな神社がある

カメラテストによく来ていた

最近は来てないけど

((おーーい、葵、走ったらダメだよ))

((うん・・・パパ・・・でも・・・早く逃げないと・・))

「え・・・葵、何か言った?」

「ううん・・・何も言わないよ、パパ」

空耳?たしかに遠くから聞こえたように思えた

疲れてるのかな・・・

「パパ!!もうそろそろお家へ帰ろうよ!!」

「そうだな・・・」

(【バリバリ!!!ドーーン】)

((パパ!!!パパ!!!))

((葵!!大丈夫かい?ケガはないかい))

((うん!!あれなに?空からなにか落ちてきたよね))

((あれは・・・爆弾だよ・・・))

えええ・・・・何だ・・・今の声は・・・後ろから聞こえてきた

私はとっさに後ろを振り向いた

誰もいない

一体なんだ、さっきから人の声がする

「パパ?どうしたの?きょろきょろして?」

「いや・・・葵・・・なにか人の声を聞かなかった?」

「ううん・・・別に聞こえないよ」

たしかに「爆弾」と聞こえた

何だろう?

無事に家に着いた

葵を先に入れて私は玄関を閉めた

「さぁ・・・リビングへ行こうね」

「うん!!」

((ガラガラ・・・ドン))

「え?今の音聞こえた?葵?」

「うん、聞こえたよ・・・兄ちゃんたち帰ってきたのかな」

「だな・・・」

しかし・・・廊下を歩く足音が聞こえない

「あれ・・・兄ちゃんたちじゃなかったのかな・・」

「おかしいな・・」

私はリビングから顔を出して玄関を見た

誰もいない

そんな馬鹿な・・・・

「誰もいないぞ、葵」

「おかしいんだぞ」

なんだろうな・・・空耳にしてはリアルすぎる

「空耳かな?」

「かな?・・・・」

「お昼に匠たち帰ってくるかな?」

「わかんないんだぞ」

「お昼・・・商店街の中華店に行こうか?」

「うん!!!行きたいんだぞ」

「もう少し待ってみよう」

「うん」

もうそろそろお昼の時間

匠たちが帰ってくるのを待った

「なかなか帰ってこないね」

「うん・・・」

「よぉし、商店街へ行こう、じいちゃ、ばあちゃがいるからね」

「うん!!!行くんだぞ」

とその時に匠たちが帰ってきた

「お!帰ってきたな」

「うん!!!」

3兄妹たちが時間差で帰ってきた

「匠たち、これから商店街へお昼を食べに行くけど一緒に来る?」

「パパ!!俺と仁は家に留守番してるよ」

「パパ、私はついていくよ」と楓は一緒に行くことになった

私と楓と葵の3人は春の日差しを浴びて商店街へ向かった

途中にある墓場を迂回して遠回りだけど仕方ない

歩いておよそ1時間ほどだ

商店街に着いた

オヤジ達が集まってる公民館へ顔を出した

ちょうど集会が終わって商店街の人々が出てきた

「オヤジ、おふくろ、おーーい」

「おや!あんたたち、どうしたの?」

「中華店でお昼にしようと思ってさ」

「そっかい、もうお昼だね・・・中華店へ行こう」

「おうよ、行くぞ」

中華店へ入った

お昼の時間だからお店は少し混んでいた

「お・・・混んでるな・・珍しい」

「うん、さぁて何を食べようかな」

などとおしゃべりをしながら中華料理を食べた

オヤジとおふくろは車で来たのでここで別れた

来た道を楓と葵と私の3人でのんびりと歩きながら春の優しい風が頬を伝わっていく

「のんびりしてるよね、パパ」

「毎日、何かと忙しいからね

こういう日もいいんじゃないかな」

「そうなんだ、パパ」

((バリバリ!!!ガガガガガガ(機銃掃射の音)))

((ドーーンドーーン(遠くて爆弾が爆発してる音)))

((ギャーー助けてーーー))

「え・・・なんだ今の音」

「パパ・・・なんか悲鳴が聞こえたような気がしたよ」

「あたちも・・・なにか人の声みたいな・・・」

「ねぇ!!パパ、あれ何?黒い雲がこっちにきてるよ」

「雷雲かな・・・それにしても黒いよな」

するとあたり一面真っ暗闇になった

あきらかに雷雲ではない

「パパ・・・どこ?真っ暗で周りが見えないよ」

「パパは横にいるよ、楓」

「真っ暗闇なんだぞ・・・怖いんだぞ」

「葵・・・楓・・・」

「パパ!!」

「パパ!!!」

黒い雲が一気に消えた

「あっ・・・消えた・・・」

「消えたんだぞ」

「一体何なんだよ」

なにか燃えるような匂いがしてきた

「なんか臭いよ、パパ」

「うん・・・何か燃えてるような匂いだな」

「パパ!!!あそこの家!燃えてるよ!!」

「あっちもこっちも・・・」

一面・・・火の海になっていた

家という家が燃えていた

人々がパニックに陥っていて逃げる人の叫び声がしていた

「え・・・なに・・・・」

「葵、楓、パパの手を握って・・・ここはまずい、あそこへ逃げるぞ」

「うん・・・」

「わかったんだぞ、パパ」

私は娘たちの手を握って小走りに火が回っていない空地へ向かった

遠くてドーーンドーーンと何かが爆発している音が聞こえてきた

何とか空き地まで辿り着いた

よく見ると私たちの住んでいる地区はもはや黒い煙で見えない

「パパ・・・家が燃えてるのかな・・・ママや兄ちゃんたち、じっちゃ、ばっちゃたち大丈夫かな?」

楓の悲痛な声で訴えてきた

「なんでこった・・・」

空には爆撃機や戦闘機が飛び回っていた

ついに戦争が始まったのか・・・

「パパ・・・怖いよ」

「怖いんだぞ」

もうどうしようもない

とりあえずここで様子を見るしかない

私はスマホでS子に電話をした

繋がらないというか電波マークがついていない

ウソだろ・・・・

どうしよう・・・仕方ない・・・裏の山の神社へ行こう

幸いにも裏の山は何の被害は被っていない

娘を連れて歩いた

やはり・・・神社には避難してきた人が大勢いた

山の頂上に開けた場所がある

そこまで行くことにした

そこからだと周りがどんな状況なのかよくわかるから

休みながら山登りをした

開けた場所についた

やはり・・・あちこちで家などが燃えていた

しかし・・・高いビルが無いのはどういうわけだ?

駅前は高層マンションが建ち並んでいるはずだ

上空にいた爆撃機や戦闘機はいつのまにやらいなくなっていた

私は時計を見た

午後5時になろうとしていた

あたりは夕方なのだが煙で上空はどんよりしていた

「パパ・・・お腹すいたよ・・・」

困ったな・・・

お茶が3本とお菓子が2袋しかない

とりあえずはお菓子を娘たちに食べさせることにした

「お菓子だけど・・・すこしづつ食べるんだよ」

「うん・・・」

「パパ・・・は食べないの?」

「お菓子の袋が2袋しかないんだよ、一気に食べたらあっという間になくなっちゃうよ」

「うん・・・ごめんね・・パパ」

「気にしなくていいよ・・・」

日が差さないとさすがに寒い

とりあえずは木のベンチに座ってこれからどうするか考えよう

今のところ、頂上には私たちだけしかいない

夜になった

まだ燃えている場所がいくつかあったがだいぶ煙も少なくなってきた

とりあえずは山から下りて家へ帰ろう

「家へ帰ろう・・・」

「うん、そのほうがいいよ」

私たちは家へ向かって歩いた

悲惨な状況だった

道路には死体がたくさん転がっていた

中には助けを求める声がしていた

やっと我が家についた

全焼ではなかったけれどだいぶ焼けていた

わたしは中に入って様子を見た

誰もいない感じだ

オヤジやおふくろやS子たちはどこだ?

とりあえずリビングへ向かった

なんとか燃えずにいた

私は冷蔵庫を見た

なんとか食えるものは残っていた

お菓子などがしまってある扉を開けた

お菓子もだいぶ残っていた

ジュースやお茶も7日分はあった

2階は燃えて無くなっていた

リビングと隣の書斎室はなんとか無事だった

あとは瓦礫などで非常に危ない状態

中庭は全滅だった

まぁ・・・

なんとか住める場所は確保できた

もちろん電気やガス、水道は機能していない

スマホの明かりを頼りに懐中電灯とろうそくを探した

懐中電灯はたしかあそこにあったはずだ

ろうそくは・・・仏間かぁ・・・・

懐中電灯はそこにあった

ろうそくを取りにあった場所らしきところへ行った

しかし・・・火の熱なのかろうそくは無残にも溶けていた

幸いにもライターが見つかった

ちゃんとした形のろうそくではないけどなんとか明かりにできればそれでいい

バッテリーも探さないと・・・

隣の書斎室に確かあったはずだ

引き出しを探ったら出てきた

とりあえず今の現状だと1週間はもちそうだ

明日の朝に集会場へ行って援助物資などもらえるかどうか行ってこないとね

今夜はリビングで寝ることにしよう

娘たちにはお菓子を食べてもらった

カップ麺はあるけどガスが使えないからお湯ができないというか水がない

お茶とジュースだけ

娘たちは状況がわかったのか怯えていた

「パパ・・・これからどうするの?」

「一応・・・1週間は大丈夫だけど・・・その先は・・・パパにもわからないよ」

「どうしよう・・・」

オヤジやおふくろ、S子、息子たちの安否が気になって仕方がない

娘を置いて探しに行くわけにもいかず・・・

スマホのラジオアプリをたちあげたが何も聞こえてこない

というか・・・電波マークがついていないから無理

全然今の状況がどうなっているのかさっぱりわからない

もう考えても仕方ないから寝よう

「もう寝よう・・・」

「うん、疲れたよ、パパ」

「あたちも・・・眠い」

「パパ!!起きてよ!!」と耳元で楓の声がした

「うん・・・」

眠い・・・目をこすりながらゆっくりと体を起こした

「おはよ・・・楓・・・」

「パパ!!今日はみんなでお散歩するんでしょ!!」

「え!?・・・お散歩?・・・いや・・これからパパは集会場へ行ってなにか救援物資があればもらいに行くんだけどね」

「え・・・集会場!?・・・何しに行くのさ?」

「だから・・・昨日、戦争がはじまったろ?」

「え・・・戦争・・・パパ、大丈夫?」

「え・・・・え・・・」

私は周りをよく見た

あれ・・・・

元のリビングだ

時計を見た

午前9時をさしていた

リビングでは子供たちがはしゃいでいた

どういうことだ

戦争が始まったんじゃないのか

わたしは玄関へ行き外へ出た

どの家も元のままだ

焼けてはいなかった

おやじとおふくろが出てきた

「おい!!F・・・なにをキョロキョロとしてるんだよ

今から商店街へ行ってくるぞ、留守番頼むぞ」

とオヤジは機嫌のいい顔をしておふくろを車に乗せて行ってしまった

どうなってるんだ!?

夢か・・・

きつい夢だよな・・・

わたしはリビングへ戻った

あいかわらず子供たちはギャギャと騒いでいた

「仁兄ちゃん!!遊ぶんだぞ」と葵が仁に話しかけていた

「わぁ!葵かぁ・・・俺さ・・・今から友達の家へ行くんだよ、匠兄ちゃんと遊んでもらえよ」

「え・・・匠兄ちゃん、遊ぶんだぞ」

「おい!!仁、こっちへ振るなよな・・・俺もさ・・・今から友達の家へ行くんだ、悪いな、葵」

「えええ・・・・そんな・・・今日遊んでくれるって言ったじゃん!!」

「悪いなぁ・・・楓と遊んでもらえよ」

「わぁ!!兄ちゃんたちずるい!!私もこれからお友達の家へ行くんだからさ」

「え・・・・みんな・・・何処か行っちゃうんだ・・・」

葵が泣き出した

おい・・・このセリフ・・・どこかで聞いたぞ

どうなってるんだ・・・・

私は時計を見た

唖然とした・・・・

あのセリフを聞いた日にちと同じだった

じゃあ・・・あの「1日」はどこへいった

夢だったのか・・・いや・・・あれはちゃんとした現実だったのか?

頭が混乱してきた

「夢」とは思えない

私は「あっ」とおもい冷蔵庫を開けてみた

・・・やはり・・・2本のジュースが無くなっていた

「葵、楓、ここにあったジュースを飲んだ?」と聞いてみた

「ううん、飲まないよ、パパ」

「あたちも飲まないんだぞ」

無くなっている・・・・

「パパ!私急ぐからね!!」と楓は急いで外へ出て行った

この展開は・・・・夢に見た光景だ

でも・・・私は全然眠くない

家にいるのは私と葵だけ

リビングが一気に静かになった

「ねぇ・・パパ、ここにいても退屈なんだぞ、お散歩しよう」

え・・・お散歩・・・・外へ出るのか・・・・気が進まない

すると玄関でパタンと閉まる音がした

誰かが帰ってきたのかな・・・

「葵、今、玄関で物音がしたよね」

「うん・・音がした・・・兄ちゃんたち忘れ物なのかな・・・」

私と葵はリビングから玄関を見た

誰もいない

「誰もいないんだぞ」

「おかしいな・・・」

私は外へ出るとロクなことが起きないと感じてきた

「葵、今日は中庭でパパと一緒にいよう」

「うん!!そうするんだぞ」

早速、葵は庭をいじり始めた

私は椅子に腰かけてスマホを見た

やはりあれは夢だったんだ

しばらくすると外からゴォーーという飛行機の音が聞こえてきた

それも1機ではないものすごい数の飛行機の音だ

当時に爆発音が聞こえてきた

「え・・・なんだ今の音は・・・」

「パパ、外で何か音がしてるんだぞ」

「だよな・・・」

悲鳴や怒声なども聞こえてきた

その瞬間だ

何かが爆発した

私の体が宙を舞った

ドシンと尻もちをついた

あたり一面・・・火の海になっていた

「葵!!どこだ?葵!!!」と

大きな声で娘を呼んだ

返事がない

やっと煙が消えて視界が見えてきた

しかし・・・目の前には娘が倒れていた

「葵!!!」と娘を抱きかかえた

返事がない

私は鼻のあたりに指を置いた

息をしていない

私は娘の体を揺さぶった

だが・・・目を閉じたままだった

うそだろ・・・そんな・・・・

「葵!!!パパだよ、目を開けてくれ!!!」と絶叫をした

「葵!!!」と大きな声を出して目が覚めた

「パパ!!今さっきからあたちを呼んでるけどあたちここにいるんだぞ」と

葵がわたしのかおをのぞき込んでいた

「あ・・・夢かぁ・・・良かった・・・」

「パパ、うなされていたんだぞ、大丈夫?」

「うん・・・変な夢を見ていた・・・」

「パパ、兄ちゃんや姉ちゃんたちお友達の家へ行っちゃったよ

今、この家にはあたちとパパしかいないよ」

えええ・・・おいおい・・・・まだ夢の中にいるのか・・・

これで3度目じゃないか

「パパ!!家の中にいても退屈なんだぞ、駅前のデパートへ行きたいんだぞ」

「え!?デパートで何を買うのさ?」

「んとね・・この前ね、ママと一緒に行ったときにかわいいぬいぐるみがあったんだよ

あたちが「欲しいんだぞ」と言ったらね、ママが「今度なんだぞ」と言って買ってくれなかったんだぞ

だから、今からデパートへ行ってぬいぐるみを買ってほしいんだぞ」

ううううう

外へ出るのも・・・家の中にいるのも・・・夢の中で完全にロクな目に合わなかった

本当に現実的な世界なのか・・・・

まだ夢の中にいるのか・・・

よくわからない

どうしたらここが現実なのか知る方法はないものか

感覚的には完全に現実だと感じる

でも夢の中でもリアルな感覚を感じていた

私は冷蔵庫を見た

見事に2本のジュースが無くなっていた

私は愕然とした

まだ夢の中なのか・・・

「葵!!冷蔵庫の中にあったジュース飲んだ?」と葵に聞いてみた

「うん、朝に兄ちゃんたちが1本づつ飲んだよ」

ほっ・・・現実の世界だ

「デパートかぁ・・・暇つぶしに行ってみるか、葵」

「うん!!ぬいぐるみ買ってほしいんだぞ」

「わかったよ、ぬいぐるみを買ってあげるよ」

「やったーーー!!」

葵のうれしそうな顔

あの夢の中の葵は目を閉じたままだった

私は支度をして葵もよそ行きの服に着替えた

玄関を閉め鍵を閉めて門を出る時だ

ガラガラと玄関の戸を開ける音がした

((

「お・・・ここにいたのか・・・」

「パパ・・・何処か行くの?葵も連れてってよ」

「いや・・・葵の姿が見えなくなったからてっきり一人で外へ出たんだと思って慌てて着替えただけだよ」

「あたち・・・一人で外へ行かないよ、パパやママの言いつけは絶対に守ってるから」

))

私の声と葵の声が聞こえた・・・・

そんな馬鹿な・・・あれは夢だろ

私は振り向いて玄関を見た

なにも異常はない

空耳?・・・はっきりと聞こえたんだ

「パパ・・・後ろで誰かがしゃべってたよね、誰だろうね?」

と葵が私に質問をしてきた

絶句した

葵も聞こえていたのだ

空耳ではなかった

これは・・・まだ夢の中にいるのだろうか・・・

とにかく駅前のデパートへ向かった

S子の実家方向へ行くのが近道なのだが

その道を行くと例の墓場の横を通ることになる

夢が夢だったので迂回することにした

春の温かい日差しを浴びてのんびりと歩いた

空は薄い雲が流れていた

遠くから飛行機の音がした

私は体がビクッとなった

よく見るとセスナ機が飛んできた

私はホッとむねをなでおろした

「パパ・・顔色が悪いんだぞ、大丈夫?」

「いや・・大丈夫だよ」

「今さっきからパパ、キョロキョロと落ち着かないんだぞ」

なにせ・・・夢の中ではマジでろくなことが起きなかったからな

およそ2Km歩いて駅前のビル群が見えてきた

デパートまでもう少しだ

すると突然デパートの上のほうで爆発音がした

そこから黒い煙がモクモクと出てきた

「わぁ!!火事だぞ、葵」

「うん、火事なんだぞ・・・」

爆発音で周辺の人々は驚いてビルの方向を向いていた

ビルの下にいた人たちは慌ててそこから逃げ出した

しばらくするとビルの出入り口から大勢の客が出てきた

悲鳴や怒声

あたり一面はパニック状態になった

私は葵の手を繋いでその場から離れた

安全な場所へ移動して様子を見ていた

救急車やパトカーがサイレンを鳴らして続々と来た

えらいことになった

私はすぐに家族全員の安否を確認した

だれも駅前にはいなかった

現場は修羅場かになった

悲鳴や怒声・・・んんんん??・・・・夢の中の悲鳴や怒声とよく似てるぞ

場面は違うがこのつんざくような悲鳴や怒声は似てる

もっと早くデパートに着いたら巻き込まれていた

あの不可思議な声を聴いて5分ほど立ち止まっていたのだ

たった5分の差で・・・・巻き込まれずに済んだ

これって・・・ある意味での正夢なのかな

いや「正夢」だろう

「おい!!!!F!!!大丈夫か?」と後ろからオヤジの声がした

「大丈夫!!葵もここにいるよ」

「じっちゃ、ここだぞ」

「お!葵ちゃんいたか」

「おい!!F!背中に背負ってるのは楓ちゃんか?」

「え!?背中!?いや背負ってないぞ、オヤジ」

「おい!何を言ってるんだよ、背負ってるぞ・・・というか・・・なんで服が焦げてるんだ・・・まるで火事にあったような感じじゃないか・・・ええ・・背負ってるのは葵ちゃんじゃないかよ」

「冗談はよせ、葵はここにいるじゃないか

それに背負ってないぞ」

「いや俺には見えてる・・・目を閉じた葵ちゃんが背中にいるぞ

と・・・死んでいるのか!?・・・・こりゃあかん!!!

F!!今から背中に憑りついてるものを排除するからな

ちょっと痛いぞ

背中をこっちへ向けろ

いくぞ、おもっきし叩くからな」

バン!!バン!!バン!!

「いてぇーーーオイ、オヤジ、マジでおもっきし叩くなよな」

「だから言ったろ、痛いぞって

うふぅーーーどうやら消えたぞ・・・なんで葵ちゃんを背中に乗せてたんだよ?」

「だから乗せてないってば」

「いや、背中に葵ちゃんを背負ってた・・・どういうこった

おまえ・・どこかで憑りつかれたんじゃないのか」

「いや・・・そんなことはないとおもう

ここ1週間は会社と家の往復だけだった

どこも寄っていないぞ」

まてよ・・・まさか・・・例の夢の中の爆弾・・・・

うそだろ、あれは夢の中だ

ありえん

私は夢の中の出来事をオヤジにしゃっべった

「それだよ・・・それしかない・・・でもな・・夢の中だろ

・・・」

「それがさ・・・夢の中の夢の中の夢を見ちまったさ」

「なんじゃそりゃ・・・夢の中の夢を俺も見たことはあるさ

でも3重の夢は聞いたことないぞ

なんかなぁ・・・・このビルの火事の警鍾かもしれないな

しかし・・・とりあえずは無事でよかった」

オヤジの車のところまで歩いた

おふくろが乗っていた

「おやおや・・・大丈夫だったかい

電話をくれた時にはびっくりしたよ

葵ちゃんも無事でよかった

わたしらは帰るけど一緒に帰ろう」

ここにいても仕方ないので車に乗って家へ帰った

「葵・・・ぬいぐるみはまた今度だな」

「うん・・・仕方ないよ・・・パパ」

本当に不思議な一日だった

予知夢?だったのかな・・・

Concrete
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