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長編10
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黒い影

さて・・・調査とはいえ・・・メンバー全員が揃うことなど1か月に1回前後だぞっと

いや・・・もうはや奇跡が起きないと揃わないぞっと

まぁ・・・いいか・・・

まずは北東にある2階建ての洋館からスタートするかな

それでおふくろに「この館は何?」と聞いたら

おふくろも一度も入ったことがないという返事だった

見た目がこれがすごい

まさにホラー映画に出てくる洋館そのものだ

木の枝や草のツルなど伸び放題

F子に「ここでロケ撮影したら」と冗談で言ったら「アニキ・・・あんまし面白くないよ」と冷たい返事をされた

おふくろに鍵を渡されメンバーが順に中へ入った

昼なのに館の中は薄暗くてなにかジメジメとして湿気を帯びている

匂いも何の匂いなのかわからないがツンとくる嫌な臭いがしていた

「くせぇーーな」とS君

「吐きそうだぜぇーー」とオヤジ

一旦全員外へ出た

「こりゃ・・・無理だぞ・・・ガスマスク着用で入らないとな

1回・・全部の窓を開けないとな」とS君は渋い顔をしていた

確かに凄い匂いだ

どのくらい放置されていたんだろう

何に使われていたのよくわからん館

私はこのことをおふくろに報告をした

「そうかい・・・そんなに臭いの・・・困ったわね

ガスマスクねぇ・・・人数分を用意するわね

それに酸素ボンベもいるかもね

あの館は・・・私も何に使われていたのか全然知らないのよ

滅多に北のほうへ行かなかったし・・・・」とおふくろの困惑した顔

ガスマスクや酸素ボンベはすぐに用意できたけれどメンバー全員が揃ったのはもう2月の半ば・・・

こんな真冬に調査とは無理

春先に改めて調査をしようとおふくろに提案をした

もちろんおふくろは快諾した

しかし・・・本当は開かずの館だったのではないかと後々後悔することになった

4月に入りなんとかメンバー全員が揃った

オヤジ・私・S君・楓と葵

とりあえずは楓と葵はS君と共に外で待機

オヤジと私はガスマスクを着用して館の中へ入った

懐中電灯を頼りに電源場所を探した

なかなか見つからない

この屋敷の図面があればいいのだけれどそんなものはない

部屋の一つ一つに入り窓を開けていった

中には錆びてなかなか開かない窓がたくさあった

全室なんとか窓を開けた

春先の暖かい風が部屋中に入ってきた

そして暖かい陽ざしが部屋を明るくした

部屋の中はそんなに荒れてはいなかった

むしろ当時使われたままの状態だった

見た感じでは別館という感じ

インテリアも豪華で当時の財閥の財力を象徴していると感じだ

雰囲気は何となく明治時代のように思えた

恐らく財閥の初めごろに建てたのではないかなと思う

というのも大広間らしき部屋で大きな肖像画が飾ってあった

初代総帥の肖像画なのかな

明治時代特有の髭を伸ばしている男性の肖像画だ

男爵という勝手なイメージが脳裏をかすめた

私はすぐにスマホでこの肖像画を撮影した

各部屋は本館とよく似た作りになっていた

各部屋は本当に豪華なインテリアばかり

「こりゃ・・・オークションにかけたら金儲けになるぞ」と野心丸出しのオヤジの声

「あかんだろ、これは全部財閥のものだよ」

「そうかい・・・」

オヤジ・・・俺を殴った罰として3か月間給与なしでおふくろにこき使われる羽目になった

もともとおふくろの奴隷的な立場だからそんなには気にしていないと思っていたけど

やはり金目が目の前にあるとオヤジの本性が出た

俺はぜったいにこのオヤジはおふくろの財産目当てで結婚したと思ってるから

おふくろはさっさと実家を出て今の家を建ててオヤジと結婚をした

おふくろはオヤジの本性を知っていたのではないかと思う

お互いに好きなのは分かっているけれどやはりおふくろの財産が欲しいのだろう

しかし・・・財産分与は私とF子が引き継ぐ・・そのあとは匠や仁など子供たちが財産を引き継ぐからオヤジには財産は一切入らない

「素晴らしいものばかりだぜ

こりゃ・・・」とオヤジの小声が聞こえた

私はS君と共に各部屋の写真撮影を行った

特にインテリアなど置物を中心に撮影をした

もちろんオヤジ対策だ

あのオヤジなら絶対に盗んでいくはずだ

1個でも無くなればオヤジだと分かるように

すぐに私はおふくろに電話をしてここに警備員を配置するようにとお願いをした

おふくろもすぐに分かったらしく「あいつなら絶対に盗むよ、F、すぐに警備員を配置するね」と返事をくれた

24時間警備体制が敷かれた

S君も分かったらしく

「おやっさんなら・・・絶対に持っていくよな」

全員、本館へ休憩をしに戻った

事の経緯をすべておふくろに報告をした

「そうかい・・・この人は私は知らないわね・・・Fの言う通り初代の総帥かもしれないわね・・一度・・・おじさんやおばさんにも聞いてみるわね

そんなにインテリアが凄いの・・・あとで私も見に行ってくるわね

別館ね・・ありえるかも・・・

書籍や書類なども当時のまま置いてあるのね

そりゃもちろんすべて財閥の財産だよ」

不思議なことがひとつ

電源(ブレーカー)が見つからなかった

各部屋にはちゃんと明りの調度品がついている

ついているということは当時もちゃんと電気が通っていたはずだ

その電源場所がどこを探しても見つからなかった

わたしはふともしかしてこの館には地下があるんじゃないかと思った

その地下に電源が設置しているのではないかと思う

翌日に地下へ繋がる場所を探そう

その日の夜

警備隊長から不思議な連絡を受けた

2階のある部屋の明かりが点いているとのことだ

前回も北の館では勝手に明かりが点いた

もしかして幽霊の仕業かも

私とS君はすぐにその館へ向かった

警備隊長もそこにいた

警備隊長が明かりのついている部屋を指さした

「たしかに・・・点いているよな・・・また前回同様に幽霊の仕業かな」

「ありえるよな・・・」

「とりあえずあの部屋へ行こう」

急いで階段を駆け上り明かりのついた部屋の入口へ来た

「何かいるよな・・・何かの気配を感じる」

「俺もだよ、F」

一気に部屋へ入った

「おい!!誰かいるのか!!!」とS君は大きな声を出した

すると部屋の隅に人影が・・・

「おい!!見つけたぞ、こっちへ来い!!」とさらにS君は大きな声を出した

私は急いで懐中電灯を人影に向けた

「え・・・・」

「うそだろ・・・」

人らしき人物がいた

「おい!!ここで何してるんだよ」

「ちっ!ばれたか・・・」

そいつは一目散に部屋から出て行った

私たちも後を追ったが・・・見失った

「どこいった?」

「確かにこっちの方向へ行ったはずだ・・・」

一応2階の部屋を全部見まわった

誰もいない

そんなはずはない

どこ行った・・・

私たちは館から出た

警備員も唖然とした顔をしていた

あの部屋の明かりが消えていたのだ

「消えてる・・・」

どういうこった

頭の中がごちゃごちゃしている

なんであそこに人がいたんだ

そいつはどこへ行った・・・

警備員にも聞いたが玄関からは誰も出てこなかったという

おかしいだろ・・・

とりあえずは本館へ戻ることにした

「あれって・・・おやっさんだろうか?」

「わからない・・似てるような似てないような・・・」

一瞬ライトに照らされただけだったので顔を詳しく見れなかった

本館へ戻るとみんながくつろいでいた

オヤジはそこにいた

酒を片手に飲んでいた

「おふくろ・・・オヤジって・・・ずっとそこにいたのか?」とおふくろに聞いた

「いたわよ、あなたたちがあの別館へ行ってからもいたけど・・どうかしたの?」

わたしは今さっきの出来事を話しをした

「え・・・ずーとあいつはいたのよ・・どうしたの?」

「おい、オヤジ!!そこにずっといたのかよ?」

「はぁ?・・・俺はいたぜ、酒をずっと飲んでたぜ、なんだよその顔はよ」

「いや・・・そのぉ・・・そっか・・いたのか」

あいつはオヤジではないのか・・・

じゃあ一体誰だ?

私とS君はお互いに顔を見て「誰だろう?」という顔になった

夜も11時を過ぎていた

「さぁさ・・楓ちゃん、葵ちゃん、もうそろそろ寝ようよ」とF子が娘2人を寝室へ連れて行った

「パパ!!おやすみ」

「お休みなんだぞ」

オヤジとおふくろとS君と私だけになった

私はオヤジに今さっきの出来事を話をした

「おいおい!!俺は骨董品なんで興味はないぞ!なに!!俺が骨董品を盗んでオークションに売るってっか!馬鹿言え!!俺はこう見えても神族の一族だぜ!そんなことはしないぞ」

「そうかな・・・怪しいな・・・オヤジよ」

「おいおい・・・それとな・・俺な・・・Fを殴った記憶が全然ないんだよ

いくら酒に酔ってるからってよ、息子をなぐりゃせんよ

まぁ・・・あの時の・・・小さい時のFの頭をゴツイたのは俺だがな・・・

俺は無実だぜ」

「おやっさん・・・まじっすか?・・・Fを殴ったのは確かにおやっさんだよ

みんなが見てる目の前でFを殴ったんだよ

それでもシラを切る気かい?」

「あのな・・・俺も気づいた時には館から出ていて・・「なんで、外にいるんだよ」と思ったんだよ」

なにかおかしい

完全に話が食い違ってる

というのも私を殴った後に隣の部屋へ逃げ込んでずっとうずくまってたんだよな

それはS君とおふくろが見ていた

一度もそこから館の外へ行っていない

なんでここにいるオヤジは外にいたんだよ

みんな少し混乱した頭の中を整理し始めた

もう一人の「オヤジ」がいるのかもと結論になった

つまり私を殴った「オヤジ」はニセモノというかもう一人の「オヤジ」だった可能性が出てきた

これはややこしいことになった

見分けかたがわからない

「もしかして・・・おやっさんの影かもしれない」とS君がポツリと言った

「え・・影?」

「そう・・おやっさんの負の部分が具現化したのかもしれない

おやっさん・・・の根本的な心だよ・・・」

「そっか・・・要は心が腐ってる証拠だな」

「いやいや・・そこまで言ってないぞ・・おいおい・・・人間誰しも欲というのは持ってるんだよ、おやっさんの場合は「お金」という欲が心の底にあるんだよ」

「わかるような気がする・・オヤジは金には執着心がすごいからな

どちらにしろあの館は24時間厳重体制を敷いてあの館にある物をすべて鑑定した後に銀行か博物館へ預かってもらうしかないかもな」

「骨董品というやつかな・・相当な価値があると思うよ」

「そうだわね・・・一度鑑定はしないとね・・・でもね・・よそへ預けるとなると一族会議をしないといけないからね・・・勝手に敷地内の物を外部へ持ち出すのは禁止しているからね・・・来月には一族会議を開きましょう・・・処分できるものは処分をして整理をしないとね」

「それとここにいる間はおやっさんをこのスタジオから出さないほうがいいかもな

ややこしくなるから」

「そうだな・・おい、オヤジ、明日からこのスタジオ以外に外へ出るなよ、話を聞いていただろ」

「おう・・・話はちゃんと聞いていたぜ、俺の分身がいるんだろ

大人しくしてるよ」

「お目付役に楓と葵を置いていくからな」

「おう!!」

明日からはあの別館の電源つまり地下へ通じるところがるかどうか調べないとな

夜も明日の日付になった

おやじとおふくろは眠くなったらしく部屋から出て行った

春になっても夜はまだ寒い

月の光が窓から差してスタジオの中は明るく見えた

「さてと・・俺・・寝るわ」とS君は私に挨拶をしてスタジオを出て2階へ上がっていった

朝になった

快晴の朝

S君と私であの館を調査する

玄関にいる警備員に夜中の状況を聞いた

異常はないとのことだった

中に入った

だいぶ嫌な臭いは取れていた

これならガスマスクは要らない

地下へ行く扉があるはずだ

しかし・・・見つからない

「おかしいな・・・電源はどこなんだよ・・・」とS君は苛立っていた

1階のすべての部屋を調べたが地下へ通じる隠し部屋などは無かった

「絶対におかしい!!電源がないはずはない!!」とS君は大声で怒鳴った

もしかして・・・電源は・・・別のところにあるのでは?と脳裏をかすめた

もしや!!!???

「もしかして・・・この館の電源って・・・」

「え!?・・どうした?F!!」

「S君・・もしかしたら電源は本館かもしれないよ

ほらあそこすごい数の電源が置いてある部屋があるだろ

あそこのどれかだと思う」

「あぁぁ・・・ありえるかも・・・俺、さっそく本館へ行ってくるわ

携帯で連絡を取りながら電源のスイッチをONOFFさせていこう」

「そうだね、その方法でやってみよう」

S君は急いで本館へ走っていった

S君から連絡がきた

「あかん・・・おふくろさんから中止の命令が出たよ

「もし本館の電源を切られたら仕事に支障が出る」といわれたよ

一旦、本館へ来てくれ」

私は慌てて本館へ向かった

おふくろが少し機嫌の悪そうな顔をしていた

やばいな・・・

「F!!!もし間違って本館の電源を切ったらどうなるかわかるでしょ?

大事なデータが消えたらどうするの?」

確かにそうだ

「とにかくその電源のありか探しは後にしなさい

間違ってほかの館に電気が流れてショートしたときに火災になったら大変でしょ!

全部の館の調査を終えたのちに電源を入れればいいでしょ」

そうだそうだ・・・まだ全ての館を見ていない

あぁ!!!そういうことだったのか・・・もしや・・・あの館の火事の原因は・・・電源を誰かが入れたのかも・・・いったい誰が電源を入れたんだ?

「今日の調査は一旦終わりにしなさい」とおふくろから言われた

とにかく電源の件は分かった

後はあの黒い影の正体をつかまないと

しかし・・・オヤジの分身というか具現化したのならオヤジそのものの心を浄化をしないとあの黒い影は絶対に消えない

とりあえず北東のこの館の調査はこれで終わりだ

次は北にある館だが・・・

これも・・・化け物屋敷そのものだな・・・

さて、この館は何があるのかな・・・

Concrete
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