外で猫の鳴き声が聞こえてきた
1匹2匹じゃない
かなりの数の猫が集まってる
猫の集会が始まったようだ
家の裏のところに少しだけ空き地がある
そこに集まってきている
娘の部屋からだとよく見える
「猫たちが集まってきてる・・・うるさいな」と少し怒り顔のS君
「仕方ないさ・・・猫だって寂しいから集まってくるんだろ」
「まぁ・・・気持ちはわかる」
「パパ・・・寝れないよ」
「あたちもだぞ」
仕方ない客間で寝てもらおう
「客間へ移動しようか」
「うん!!」
客間へ娘2人は移動した
ここなら静かだから寝れるはずだ
不思議とこの部屋は静寂なのだ
わずかに猫たちの鳴き声がするだけ
仏間だとよく聞こえるのに不思議だ
ようやく娘2人は寝てくれた
私とS君は客間からリビングへ移動した
オヤジは仏間でいつもの落語を聞いている
おふくろも仏間へ行ったようだ
リビングには私とS子とS君だけ
別段話すことはないから適当に時間をつぶしていた
猫の鳴き声が聞こえなくなった
「やっと猫たち、解散したかな」
「だな・・・」
「おっちーー!!最近・・・今日もそうだけど猫たち・・鳴き声がきつくなったような気がするんだぞ」
「きつい?・・・ということさ、S子」
「あのさ・・・どういったらいいんだろ・・・じゃれあう鳴き声じゃないんだぞ
なんか・・・怯えてるというか・・なんか鳴き声が変だぞ」
「怯えてる?何に怯えてるのさ?」
「わからないんだぞ・・・でもそういう気がするんだぞ」
よくわからん
「私、もう寝るね、パパたち、早く寝るんだぞ」
S子は目をこすりながらリビングから出て行った
能天気なS子が言っていたが猫が何に怯えているんだろう?
「F・・・あんまし気にすることじゃないよ・・・」
「でもな・・・あの能天気なS子が意味深なことを言うとはね」
「え・・・まぁ・・・」
実際、この兄妹の考えていることが分からなくなる時がある(悪い意味ではない)
「あのさ・・・F・・・おまえが今考えているのは「俺たち兄妹の考え方がよくわからん」と思ってるだろ?・・・」
「え!・・・図星だ・・・なんで分かった?」
「だろうな・・・逆にFとF子の兄妹の考え方がよくわかるんだよな
不思議とな・・・だから俺たちって親戚だけど兄妹以上の絆で繋がってるんだろうな
・・・F・・・妹のS子のあの能天気は天然だが真顔になったら俺やいや俺の家族は恐怖以外しかないんだよ・・・」
あぁぁ・・・例の件のことかな
一度もS子の真顔を見たことがない
子供たちもだ
「あのさ・・・S子の真顔ってそんなに怖いのか?」
「あぁぁ・・例の件、知ってるだろ?・・毎月3日間ほどマジで真顔になってた
全然笑わないんだよ、こっちから冗談を言っても無視するか鋭い眼光で睨みつけてきた
まるで・・・おやっさん以上の眼光だな・・・」
「オヤジ以上かぁ・・・まぁ・・その根本的な原因を取り除いたから今はいいとおもうけど」
「まさか・・・憑りつかれていたとはあの当時は思いもしなかったよ
あれから俺もS子の真顔を見たことはないな」
「パパ・・・ママの真顔を私見たことあるよ」
突然、楓が話に割り込んできた
「え!?・・本当か楓?」
「ママって・・・いつもニコニコしてるけど・・・笑わないときの顔は私怖い」
「そうなのか?」
「うん・・・パパは知ってると思ってた・・・あれは・・・たしか・・・もう3か月前かな・・私・・・お友達の家へ遊びに行ってて・・・夜遅くに帰ってきたんだけど・・・
てっきりパパたちに怒られると思ってた・・・私、リビングで片づけをしてるママのところへ行ってすぐに「ごめんなさい」と言ったんだけど全然返事がない
私は「え?」とおもった
普段なら「楓ちゃん、だめだよ、もうこんな時間だよ、早く帰ってこないといけないんだぞ」とニコニコしながら私を見るんだけど
その時は何も言ってくれなかった
それで私、ママの顔を見たの
無表情だった・・・てっきり怒っているのかと思ってた
でもあの顔は・・・怒ってる顔じゃなく・・・完全に魂がそこに無いという感じだったよ
私、その時にママって・・・本当は無理をしてニコニコしてるんじゃないの?と思った
これが本当のママの表情なんだと・・・・
心底・・・恐怖感が湧いてきたんだよ、パパ、Sおじさん」
「ええ・・・まさか・・また再発したのか・・・」
「いや・・・あの時に完全にS子の体から全部取り払ったんだ・・・でも・・一部でも残っていたのかな・・・それとも・・・」
「いや・・あいつの性格かもしれない・・・楓ちゃんの言うとおりに無理をしているのかもな
本当は能天気じゃなく・・・何か心底何を考えているかわからない性格かもしれない」
「そうかな・・・俺はそう思えない・・・」
「F・・・S子に関して本当ににぶいというか寛容というか・・・S子に何をされても全然怒らなかったし抵抗もしなかったもんな・・・」
「たしかに・・・不思議とS子に何をされても怒りの感情は湧き起らなかったよ」
「え!パパ!そうなの・・・普通は怒ったりするでしょ?」
「いや、あのね、楓ちゃん、F、パパはね、何をされてもされるがままだったんだよ」
「うそぉ!パパ・・・どうして?」
「わからない・・・」
「もしかしたら・・・一部・・・残ってたのかもしれないな・・・」
「ありえるかも・・・あれですべて吐き出したと思ってたけど・・・」
再発したのかも・・・
作者名無しの幽霊
このお話はS子について詳しい人しか理解できないと思う
「おっちー」シリーズを最初から読んだ人には「ゾゾゾ」と背筋が凍ると思う