中編7
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和尚様の怪談話

正月に和尚様のお寺へお泊りに行った時の話

私の家族とS子の母親の総勢9人

毎年の恒例とはいえ和尚様にはすごい迷惑をかけていると思う

正月の間は一般のお客さんのお泊りは無しにしてもらっている

つまり貸し切り状態

そりゃ9人も押しかけていけば部屋は無いですから

大晦日の夜、食事を終えた後に本堂で和尚様の説法と少し怖い話を聞くのが恒例になっている

説法といってもそんなに堅苦しい話ではなくざっくばらんな世間話みたいな感じでなかなか面白い

オヤジが絡むから余計に話が脱線していく

面白い話の後は少し怖い話を話してくれた

和尚様のところには色々と不思議な現象の手紙がたくさんくるとのこと

その手紙の中で書かれていた話を聞かせてくれた

2年程前のこと

一通の手紙が和尚様のところへ来た

手紙の内容は家の不思議な現象のことを書かれていたのこと

この家の家族は宗教など全然無関心で幽霊など全然信じていなかった

ところがこの家の長男が交通事故に遭ったころからこの家族の家の中で色々な怪異現象が起きるようになった

長男が入院でこの家の娘さん以外は病院にいた時のこと

娘さんが一人でリビングで食事をしていた時のことだ

玄関のチャイムが鳴った

てっきり家族のものが帰ってきたんだと思いそのまま無視をしていた

家族なら家の鍵を持っているから勝手にドアを開けて入ってくるだろうと思っていた

ところが全然足音はしないしリビングへ誰も来ない

またチャイムが鳴った

やっと娘さんはお客さんが来たのだと思いリビングから玄関へ行った

「どなた様ですか?」と聞くと返事がない

おかしいなと思いしばらく様子を見ていた

するとまたチャイムが鳴ったのだ

娘さんはビクッとなった

(これは完全におかしい)と娘さんは鳥肌がたった

というのも玄関のドアは摺りガラスで誰かが玄関の前に立てば人影が映るはず

するとまたチャイムが鳴った

もう娘さんは体が震えだした

(どうしよう・・・)

ドアを開けるべきか迷っていた

怖いのを押し殺してドアを開けることにした

一気にドアを開けた

誰もいなかった

「ふぅ・・・誰もいない・・・」と少し安心したのと疑問がわいてきた

(いったい誰がチャイムを鳴らしたのだろう)

そう思いつつドアを閉めた

少し寒気がしてきた

リビングへ戻った

(え・・・どういうこと?・・・窓が開いてる・・・)

リビングの窓が開いていたのだ

季節は冬だ

暖房もつけているので窓など開けるはずはない

それに窓を開けた覚えもない

娘さんは窓を閉めるときに外の様子も見た

もちろん誰もいなかった

(どういうこと・・・誰もいないし・・・泥棒?・・・)

娘さんは一瞬泥棒が来たのだと思った

そうチャイムを鳴らしてその隙にリビングの窓から侵入したのではと思った

(いや・・・窓は鍵を閉めていたはず・・・外から開くわけがない)

ますますわからなくなってきた

娘さんは早々にリビングから自分の部屋へ移動した

(もう怖いからもう寝よう)

本堂にはいつのまにか5人ほどのお客さんが和尚様の話を聞いていた

宿泊客はいないのだが年越しなどのお客さんがお寺へ来ていた

和尚様は話と雰囲気を作るのが実にうまい

オヤジもでたらめな話をいかにもという感じで話をするものだから娘2人はマジでビビっている

「パパ・・・怖いよ・・・」と楓が私に話しかけてきた

「まるで・・・あたちのお家と一緒・・・」と葵も少し不安そうな顔をしていた

お客さんの中にも顔色が悪い人がいた

娘さんは部屋の明かりを消して布団の中へ入った

(家の中には私、ひとり・・・)と思いつつ目をつぶった

ところが眠れない

普段ならそのまま寝れるのだが今夜だけはなぜか目がさえて眠れない

(おかしいな・・・寝れない・・・なんだろう・・・この圧迫感は?)

娘さんのまわりになにか圧迫感があった

(何だろう・・・布団が重い・・・何かが乗ってる感じ・・・)

布団がいつもより重く感じだ

布団をかぶっているので確かめたい気持ちはあったのだが体がなぜか動かない

(え・・・なんで・・・体が動かない・・・)

いわゆる金縛りになった

布団の上で何かが動いている

(ええ・・・なになに!?・・・)

ゴソゴソと動いていた

(うそ・・布団の上で何かいる!!)

この家には犬などのペットは飼っていない

ハァハァ・・と奇妙な声が聞こえてきた

(ええ・・誰かが布団の上にいるの?)

男の声ではない女の声だ

聞き覚えのない声

(うわぁ・・・どうしよう・・・)

奇妙な声を出しながら布団の上をグルグルと動いていた

(いやぁ・・・気持ち悪い・・・)

すると

奇妙な声の持ち主から

((キモチワルイカイ・・・・エヘヘヘエ・・・ケケケケ))

と甲高い声が聞こえてきた

(ウェ・・・何いまの声・・・)

体中にものすごい汗をかいていた

もう暑くて我慢できない

「もう暑い!!無理ぃ~~~」と言いながら布団を押し上げた

((アツイノカイ・・・エヘヘヘヘケケケケ))

と娘さんの目の前にはクモ・・・大きいクモが娘さんを睨みつけていた

それもクモの顔は女の顔だ

「ギャァーーーーーーー」と叫んで娘さんは失神した

ガタン!!!

「えぇ・・・何だ今の音は?」とオヤジのびっくりした声

「なにか物が落ちた音だよね・・・パパ」

「うん・・・確かに・・・」

するとお客さんの一人が

「あ・・・あそこ・・・置物が勝手に落ちた」と言いながら指をさしていた

見ると仏具が床に落ちていた

「わたし・・・落ちる瞬間を見てたけど・・・和尚様がちょうど「ギャアーー」という話をしたときにいきなり落ちたのよ」ともうそのお客さんは完全に顔の表情がなくなっていた

「風もないのに・・・落ちるかな・・・」と和尚様

その場がざわつきはじめた

お客さんがひとりまたひとりと本堂から出て行った

「ちょっと・・・怖かったですかのぉ・・・」と和尚様は頭をかいた

「くそ坊主!!話が怖いんじゃない!!雰囲気が怖いんだよ」

とオヤジのイチャモン

「そうですかな・・・雰囲気ね・・・わしゃ・・・別に雰囲気を作ってはいないんですけれど」

「いや!くそ坊主!自然とそういう雰囲気が出てるんだよ!見ろよ、孫娘たち、完全にビビってるじゃないか!!」とオヤジは葵と楓を指さした

「すまんですわい・・・葵ちゃん、楓ちゃん」

「和尚様・・・なんかここの場所・・・なんか変なんだよ・・私、寒気がするの」と楓は和尚様に訴えた

「え・・・まぁ・・確かに本堂は吹き曝しで寒いですわい・・・」

「ううん・・そうじゃない和尚様・・空気が重い・・・」

「え・・・空気が重い・・・」

((ケケケケケ・・・クウキガオモイ・・・エヘヘヘ))

「おい!!!くそ坊主!いい加減にしろよ、話の続きを勝手にするなよ」

「え?・・わしゃ何も話してないですわい」

「え??・・たしかに聞こえたぞ」

たしかに聞こえた

すると

突然和尚様の後ろに置いてある木魚が鳴った

「うわぁ!!」と和尚様が叫んだ

もちろん私たちもびっくり

「オイオイ・・・何だ今のはよ」

「勝手に木魚が鳴ったよ、パパ、じいちゃ」

「こりゃ・・・あかんぞ、くそ坊主!」

「ですわい・・・なんか呼んだようですわい・・・」

外で散歩していたお客さんたちも本堂の方を見ていた

「え・・・なになに・・・あそこあそこ・・・」と

お客さんたちが本堂の方を指をさして叫んでいた

私たちは何事が起きたのかすぐにはわからなかった

「あんたら!!そこにいたらあかんぞ!!後ろを見てみろよ!!」と

指をさしてみてみろよという感じで叫んでいた

私たちは指をさした方向を見た

仏様のうしろに何かが動いていた

「うわぁーー!!何かいるぞ」

「くそ坊主!!なんとかしろよ!!」

「何とかしろよと言われても・・・オヤジ殿、腰を抜かしましたわい」

「くそ坊主!それでも坊主かっ!!」

和尚様は完全に腰を抜かし動けなくなってしまった

ゴソゴソと仏様の後ろから聞こえてきた

「パパ・・・何かが動いてるよ・・・」

「オヤジ!!なんとかしろ」と私はオヤジをけしかけた

「うぉし!まかせろ」と返事をして仏様のほうにオヤジは向かっていった

すると

仏様の右の方から女の顔が見えた

「え!?・・・」とオヤジはびっくりした声を出した

「おい!そこでなにしてやがる」とオヤジは顔を出した女に向かって怒鳴った

「ケケケケケ!!!」

「え・・「ケケケケ」って・・・おい!!ふざけるなよ、こっちへ来い」とさらに怒鳴った

「クククク!!イイノカイ・・・」

甲高い女の声

「何!こっちへ来い」

ケケケケと笑いながら・・・徐々にその姿を現した

「ぎゃぁーーーー」と義理母が叫んだ

「うわぁーーー」

「パパーーー」

本堂の外からも悲鳴が上がった

一斉に外にいた人たちは逃げ出した

私たち全員失神した

どのくらいの時間がたったのだろう

みんな起き上がり周囲を見回していた

「夢かな・・・」

「全員同じ夢を見るかな?」

周りは何事もないような静けさ

もちろんお寺の敷地内には誰もいない

私は時計を見た

午前3時過ぎ

もう3時間ほど過ぎていた

「おい!くそ坊主!!リアルすぎるぞ!!」

「オヤジ殿・・・わしゃ・・手紙の内容を話しただけですわい」

「何が手紙の内容だよ!くそ坊主の話に出てくる蜘蛛女が出てきたじゃねーかよ」

「そう言われても・・・」

私はふと仏様の後ろの様子が気になった

「ちょっと・・・仏様の後ろが気になる」と私は言いながら

仏様の後ろへ歩いて行った

絶句した

なんと!!仏様の後ろはクモの糸でぎっしりと巣を作っていた

それもでかい

クモの糸も太い

小さいクモの糸じゃない

「オ・・オヤジ・・・来てくれ」と私は声にならないほどの声を出した

「お?・・・どうした?」と言いながら私のところへ来た

オヤジも絶句した

「夢じゃなかった・・・」

Concrete
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@こうき
ありがとうございます
めちゃくちゃうれしいです

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めちゃくちゃ怖かったです^^;

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