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中編6
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幽霊列車

珍しく私は平日に休みが取れた

朝は葵の面等を見ていた

昼からは楓や仁や匠たちが帰ってきた

もちろん仁や匠はそれぞれのお友達の家へ遊びに行ってしまった

昼過ぎに珍しくオヤジだけが帰ってきた

その後にS子も帰ってきた

さっそくオヤジは仏間で落語や寄席を聞いていた

私たちも4人、オヤジのところへ集まった

「じっちゃ!一緒に聞くんだぞ」と葵は満面な笑顔でオヤジの隣に座った

私は窓辺で外を見ながらラジオを聞いていた

葵やオヤジ、S子、楓などのおしゃべりで仏間は賑やかになった

ガタンゴトンガタンゴトン

どこからか列車の音がしてきた

「え・・・列車の音?・・・」

「おっちーー、確かに列車の音だったんだぞ」

「でも・・駅からは遠いから列車の音は聞こえないはずだよ」

「風に乗って聞こえてきたのかな」

確かに聞こえてきた

今まで列車の音など聞いたことはない

風があるときも聞いたことはない

私は窓を開けて耳を傾けた

今は聞こえてはいなかった

「空耳だったのかな?」

「いやここにいる者全員聞こえたからね」

みんな頭を傾げた

夕食も終わりリビングでくつろいでいた

ガタンゴトンガタンゴトン

ギィーーギィーー

「ええ??また聞こえたよ、パパ」

「今度は列車が止まった音が聞こえたよ」

ザワザワ

ガヤガヤ

「うわっ!人の声もしてるよ!!」

「まじかよ・・・」

「ちょっとまて・・・2階から聞こえてるような気がするけど」

「え・・・」

たしかに音は上から聞こえた

足音や人の声

まさに駅のホームの喧騒だ

「おっちーー・・・どうなってるんだぞ」

「俺が見てくるぜ」とオヤジはリビングから2階へ様子を見に行った

「おーーい、おかしい、なにもない!!いつもの2階だぞ!!」とオヤジのでかい声が聞こえた

オヤジが戻ってきた

「おかしいぜ、何もない、いつものままだ

どうなってるんだ?」

「ちょっと・・・2階へ行くの怖いよ」と仁が言い出した

「俺もだよ」と匠も訴えてきた

しばらく様子を見よう

「しばらく様子を見よう」と私はみんなに言った

「おっちーー、そうしたほうがいいんだぞ」

1時間が過ぎ2時間が過ぎた

「何も起こらないね」と匠がボツリと言った

「だよね」と仁

「とりあえず、俺と仁は客間で寝るよ、それでいいパパ?」と匠が言い出した

「そうだな、そのほうがいいかもな」と返事をした

もちろん葵と楓はオヤジのところだ

夜も11時過ぎた

「パパ、ママと一緒に寝室へ行くんだぞ」とS子

「そうだね、もう遅いからな」

リビングは私一人になった

ガタンゴトン

「うわっ!!またかよ」と私は思わず大きな声を出してしまった

ギィーギィーー

列車が止まる音がした

「うわぁ・・・止まったのかな・・・」

オヤジと楓と葵が来た

「パパ・・・また音が聞こえたよ」と楓が顔を上に向けて私に話しかけてきた

「うん・・・聞こえた・・・」

「おい・・・足音が聞こえるぞ」

たしかに大勢の足音らしきものが聞こえてきた

ザワザワ

大勢の人の声

2階から聞こえてきた

「2階からかぁ・・・」

階段を下りてくる大勢の足音

「え・・・階段・・・降りてくるよ」

どんどん近づいてくる

「ええ・・・足音がこっちへ来てるよ」

オヤジがリビングから廊下を見た

「あぁぁ・・・人がたくさん降りてきてるぞ、おい!」

わたしも顔を出した

「あぁ・・・・なんでこった・・・」

階段から大勢の人が降りてきた

サラリーマン風の人や主婦、子供、高校生・・・などなど

日常見慣れているまさに駅のホームの光景だ

「おっちーー!!まるで駅のホームなんだぞ」

そして仏間と客間の壁をすり抜けていった

「この人達・・・幽霊なんだね・・・」

「しかし・・・こうもはっきりと見えるのかな・・・」

ただ茫然とするしかなかった

((ツギハ・・・サンズノカワ・・・サンズノカワ))

「え?三途の川???」

「確かにそう聞こえたよ」

すると今度は逆に仏間と客間の壁から

ゾロゾロと幽霊たちが現れた

しかし・・・よく見るとみんな青白い顔

歩き方も弱弱しく足を引きずって歩いていた

「うわぁ!!今度は何だよ!」

「すげぇーーな・・・」

「おっちーー、なんかみんな顔が青白いんだぞ」

その中の一人・・・葵と同じ年頃の女の子が下を向きながら歩いてきた

大きなぬいぐるみを抱えていた

「パパ・・・あの子・・・」と楓が私に言ってきた

「あぁぁ・・・まだ幼いのに・・・」と私はその子を見ていた

その時だ、その子がこっちを見てニコリと笑顔を見せた

青白い顔だったが笑顔のかわいい子だった

「パパ・・・あの子・・こっちを向いて笑ってくれたんだぞ」と葵は私の腕をつかんだ

私たちはその子が2階へ上がっていくのを見守っていた

私たちはなぜか涙を流していた

「パパ・・・なぜか涙が出てきちゃったよ」と楓が涙を見せながらこっちを見た

「あたちもだぞ・・・涙が出てるんだぞ」

私たちは手を合わせて合掌をした

なぜかもの悲しい気持ちと晴れ晴れとした気持ちとが交互に現れていた

目覚まし時計が鳴った

「夢かぁ・・・・リアルだったな・・」

私は体を起こして周りを見回した

リビングで寝てしまったようだ

続々と子供たちやオヤジたちがリビングへ来た

「パパ・・・私、変な夢を見た!青白い顔をした人たちがゾロゾロと歩いてたよ」と楓が言ってきた

「え・・・夢?・・・パパもそうだよ、青白い顔をした人たちが2階へ上がって行った夢を見たよ」

すると家族全員が同じことを言い出した

「女の子・・いたでしょ?こっちを見て笑顔を見せてくれた子」

「いたいた・・葵くらいの子かな・・・笑顔を見せてくれたね」

「夢にしてはリアルだと思う・・・それも全員が同じ夢を見るのも不思議だよね、パパ」

「確かに・・・パパもそう思う」

「仁!!ランドセル取りに行こうぜ」

「うん!!」

「うわぁ!!パパ、じっちゃ!!!2階へ早く来てーーー」と匠の悲鳴が聞こえてきた

私とオヤジは慌てて2階へ行った

匠と仁が呆然と立っていた

「パパ・・・ぬいぐるみが・・・」

匠が指をさしたほうを見た

「まさか!!・・・そんな・・・」

「夢じゃなかったのかよ・・・」とオヤジはぬいぐるみをじっと見ていた

廊下にぬいぐるみが落ちていた

そうあの笑顔を見せてくれた女の子が抱えていたぬいぐるみだ

私は鳥肌が立った

いやオヤジや匠や仁も鳥肌が立っていた

「パパ・・・鳥肌が立ったよ」と匠が腕を見せながら私とオヤジに見せた

「俺もだぞ・・・」とオヤジも腕を見つめていた

「あの子・・・病気だったのかな」と仁がポツリとしゃべった

「かもな・・・あんな笑顔のかわいい子なのにね、パパ」と匠は私の顔を見ながら話した

「葵とだぶん同い年だと思う・・・」

私はそのぬいぐるみを抱えてリビングへ戻った

「おっちーーーー!!!パパ!!そのぬいぐるみ・・・そんな・・・夢じゃなかったんだぞ」とS子は驚いた

「夢だと思ってた・・・」と楓のびっくりした声

私はぬいぐるみをテーブルの上に置いた

全員、目をつぶり手を合わせた

私は和尚様に電話をした

和尚様はお寺で預かるから送ってほしいと言ってきた

「そうですかい・・・わかりもうしたわい

そのぬいぐるみはこっちで供養したのちに仏様の横に置きますわい

その子もあの世で幸せになりますように・・・

申し訳ない・・・涙が出てきましたわい・・・」

家族全員涙を流していた

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