カナちゃんもだいぶ家族に慣れてきてくれた
基本的に人見知りと声が小さいのは変わらないのだが笑顔を出してくれるようになった
特に葵のおかげかな
日曜日の快晴の朝
お守りと薬を各自確認をした
リュックにはお菓子やお昼の弁当、ジュースなど結構な量を詰め込んでいた
S子、楓、葵、カナ、私の5人で新しくできたアスレチックの公園へ珍しくバスと電車で行ってきた
新しい商店街の駅から電車に乗り5つ目の駅で降りてバスに乗りアスレチック公園へ向かった
S子をはじめおしゃべりが揃っているのでにぎやかに目的地へ着いた
大勢の家族連れで賑わっていた
時間がたつのは早い
もう夕方になった
「もうそろそろ帰ろうか・・・」
「おっちーー、帰るんだぞ」
「パパ!!もう少しだけ遊びたいんだぞ」
「カナも・・・もうすこしだけ・・・」
「私も!!パパ、もう少しだけ遊びたい」
17時ごろには帰る予定をしていた
どうせ飽きるだろうと思っていた
予想に反して娘たちの喜びよう
1時間・・・まぁいいか・・・
娘たちは結構気に入ったのかもう少しだけ遊ばせた
が・・・これが・・後々大変なことになるとは・・・・
太陽もだいぶ傾いた
「もうそろそろ帰ろうよ」
「えええーーーー!!!」
「まだいたいんだぞ!!」
「カナも・・・いたい」
「いやいや、もう暗くなってきてるし・・・帰ろうよ」
「おっちーー、パパの言うとおりだぞ!また遊びにこればいいんだぞ」
「う・・・・ん」
などと言ってる間に辺りは一段と暗くなった
忘れ物がないか確かめてから帰路に就いた
公園近くのバス停まで歩いて行った
時刻表を見た・・・あかん・・・1時間待たないと来ない
辺りはもう真っ暗
と・・・30分後になぜかバスが来た
「あれ・・・バスが来たね・・・」
「おかしいよね、パパ・・・」
「渋滞か何かで遅れてきたのかな?」
「わかんない」
などと娘と問答をしていた
入口の扉が開いた
「よぉし!乗ろう」
バスの中は誰もいなかった
静かにバスは発車した
しばらくバスの中でおしゃべりをしていた
静かにバスが止まった
出口の扉が開いた
「あれ?だれか降りるボタン押した?」と私はみんなに聞いた
「ううん・・・パパ・・・誰も押してないよ」
とりあえず降りることにした
唖然とした
全然違う駅
それも無人駅
「えーーーー!!パパ、ここ違う駅だよ」
「わっ!確かに・・・バスが違ったんだ・・・あちゃ」
「おっちーー!!どうするのさ、パパ」
「とりあえず・・バス停を・・・????」
バス停が無い!!
あのバス・・・バス停が無いのに止まったし・・降ろされた
「パパ・・・バス停はどこ?」
「バス停・・・無いよな」
これは困った
あ!タクシーがあるじゃないか
「しかたない・・・タクシーで帰ろう」
「だよね・・・・パパ、タクシーを呼んでよ」
「おう!!」
ところが・・・圏外になっていた・・・・
ありえん・・・山奥じゃないぞ
脳裏に・・・あの釣り事件を思い出してしまった
まさか・・・・
「あかん・・・スマホ・・・圏外になってる・・・S子のスマホはどう?」
「おっちーー!!!私のスマホも圏外なんだぞ!!」
おいおい・・・これじゃタクシーが呼べない
「パパ・・・とりあえず・・・駅へ行こうよ」
「そうだな・・・」
駅の中に入った
誰もいない
客もいない
え・・・駅名がない!!!
うそだろ・・・
私は目が点になった
ありえん
「駅名がない駅なんであるのか・・・・」
「パパ・・・ここどこ?」
「わからん・・・」
なにせスマホで調べようにも圏外じゃ何もできない
それにまわりには民家もない
ポツンと駅だけがある
困った・・・・
駅には時刻表もない
ありえんだろ
もう辺りは真っ暗闇
東も西も方角が全然わからない
ガタンガタン
電車の音がした
「パパ・・・電車の光が見えるよ・・・こっちへ来るよ」
たしかに電車の音と光が見えた
しかし・・・この駅の名前もわからないし次はどこへ停まるのかもわからない
そうこうしている間に電車は駅に停まった
みんな・・・目が点になった
「パパ・・・あの人たち・・・なんか向こうが見えてるような気がするんだけど・・・」と楓は指をさした
「た・・た・・・たしかにな・・・透けてるように見える・・・」
誰一人・・・駅には降りては来なかった
誰一人・・・動かなかった
すると突然、背後から
「お客様・・・この電車が最終の電車になります・・・」と駅員が立っていたのだ
え・・・ここ、無人駅じゃなかったのか・・・・
「え・・・はい・・・乗ります」と言ってしまった
「パパ・・・大丈夫なの?」と楓が心配そうな顔をして小さな声で言ってきた
「とりあえず・・・この電車が最後みたい・・・」
全員乗り込んだ
電車の中は結構な数の人がいた
しかし・・・透けてるんだな・・これが・・・
私たちは空いてる座席に座った
なんか変・・・静かすぎる・・・これくらいの人数ならおしゃべりなど声が聞こえそうだろ
電車は静かに走り出した
私は目を外に向けた
真っ暗けで外の景色が全然見えない
次の駅の光が見えてきた
静かに電車は停まった
「え・・・次の駅のアナウンス無かったよな?」
「おっちーー・・・無かったんだぞ・・・おかしいんだぞ」
すると・・・乗客が次々と降りて行った
私たちだけになった
「パパ・・・ほかの人たち・・・ここで降りて行ったよ・・・誰もいないよ」
「だな・・・」
静かに扉が閉まった
私は不意にホームにある看板を見た
次の駅の名前が書いてあった
「三途の川」
目が点になった
三途の川・・・って・・・あの三途の川かよ!!!
「わっ!!!!降りる!!降りる!!!ここで降ろしてくれ!!!!と私は大きな声で叫んだ」
「パパ!!どうしたの?」楓がびっくりした顔で聞いてきた
「わ・・・さ・・・さんず・・・・次の駅は「三途の川」なんだよ!!!」
「お!!おっちーーー!!!大変!!!降りるんだぞ!!!」
私は急いで運転席へ向かった
運転席には誰もいなかった
いないのに電車は動いていた
運転席の前方に次の駅の光が見えてきた
ホームの辺りにたくさんの人影が見えた
人じゃないよ・・・人影だけ・・・
「うわぁつうう!!!!!」
私はあわてて元の座席のところへ走って戻った
「パパ・・・どうしたの?」
「あかん・・・あかん・・・三途の川だ・・・・」
「え・・・三途の川・・・」
電車がドスンと鳴り響いて止まった
ザワザワ
人の声がした
「おーーい、大変だぞ、人が轢かれたみたいだぞーー」
私はハッと目が覚めた
まわりに乗客がたくさんいた
S子たちもいつの間にか寝ていたらしい
「おっちーー・・・ここどこ?あれれ・・・」
「パパ・・・・」
どういうことだよ・・・いつのまにか・・・普通の電車というか帰りの電車に乗っていたのだ
私たちはお互いに顔を見合わせた
「おい・・・見ろよ・・・わっーーー、グチャグチャ・・・」
「キャアーーー」
もう電車の中はパニックになっていた
私たちは何が起きているのかわからなかった
「パパ・・・周りがざわついてるよ」
「だよな・・・なにかあったのかな・・・」
遠くから救急車のサイレンが聞こえてきた
「大丈夫ですか?」と男性の声がした
私が目を開けると
「大丈夫ですか?・・どこか痛いところありませんか?」と聞いてきた
私は周りを見回していた
電車の中は人がたくさん倒れていた
人の叫び声や怒声が聞こえてきた
私は上半身起こしてさらに周りを見た
私のそばにS子や楓や葵やカナちゃんが倒れていた
それぞれに救急隊員が声をかけていた
どうやら列車が脱線したらしい
「私は大丈夫です」と言うと
「傷とか無さそうですね・・・・よかったです」と笑顔で私の体をさすってくれた
S子たちもそれぞれ立ち上がってキョロキョロと見回していた
「パパ!!!!」と楓がわたしのところへ駆け寄って大泣きをした
「ママ!!!パパ!!!」と葵が叫んでいた
「お・・おじさん・・お・・・おばさん」と小さな声がした
「ここだよ、カナちゃん」と答えるとカナちゃんはこっちを見て安心したような顔をした
あちこちで救急隊員が動き回っていた
次々と担架に乗せられて行った
「おっちーー・・・なんか・・・すごいんだぞ・・・」
「おまえたち、痛いところはない?」と聞いた
「おっちーー、私は痛いところはないんだぞ」
「パパ・・・私は大丈夫だよ」
「あたちもだぞ」
「カナも・・・」
良かった・・・全員無事だった
私たちは電車を降りた
降りて100メートルほどにバス停があったのでそこへ向かった
私はすぐにオヤジに電話をして迎えに来るように言った
スマホの地図で・・・住所を・・・え・・・・ここどこ?
目を疑った
帰りの電車じゃなかった・・・・
全然知らない土地
隣の県にいたのだ
「おい!!どうした?住所を早く言えよ」とオヤジの催促の声
「あ・・・あの・・・あのさ・・・住所言うよ・・・○○なんだけど・・・」
「え?・・・おい・・おまえらどこにいるんだ?・・・なんでそこにいるんだよ?」
私は経緯をオヤジに話をした
「え?・・脱線事故?おいおい・・・大丈夫かよ?」
「全員無事だよ・・・近くにバス停があったからバス停から電話をかけてるんだよ」
「パパ!!!!!大変!!!!あれ!!見てよ・・・」と楓の叫び声
私は楓が指さす方向を見た
「え・・・電車はどこだ?けが人はどこ?救急車はどこだよ?」
事故現場だと思っていた場所は何もない単なる雑木林だった
全員・・・腰が抜ける感じだった
まわりは何もない辺鄙な場所だった
「パパ・・・どういうこと?」と楓が聞いてきた
「わからん・・・どうなってるんだ・・・事故を起こした列車は?・・救急車は?」
「おっちーーー!!!なにもないんだぞ・・・気持ち悪いんだぞ」
「おい!!どうした?何かあったのかよ」とオヤジの声
「いや・・・そのぉ・・・・脱線事故かと思っていたけど・・・その事故を起こした列車がないんだよ・・・雑木林になってる」
「はぁ?・・・意味が分からん・・・おまえら本当に大丈夫かよ・・・まぁいいや・・・そこの住所へ行くから動くなよ、まってろよ」と言い切れた
2時間ほどにオヤジが迎えに来てくれた
「おーーい!!おまえら大丈夫か?」と車から声がした
「あっ!!じっちゃんだ」
みんな安堵のため息が聞こえてきた
「おまえら・・・アスレチックへ行ってたんじゃないのかよ?」
「行ってきたよ・・・でもな・・・おかしいことばかりだよ」
「じっちゃ・・・不思議なんだぞ・・・」と葵もオヤジに言っていた
オヤジは何を思ったのか雑木林のほうへ歩き出した
「おおーーい、こっちへ来てみろよ」とオヤジの叫び声
全員オヤジのところへ駆け寄った
「おい、みろよ、これ・・・」
「こ・・・これは・・・」
よくみると・・・小さな記念碑が立っていた
記念碑にはここで何が起きたのかが書かれていた
「そんな・・・・昭和18年・・・って・・・」
そう・・・列車事故の慰霊の記念碑だったのだ
私たちは幻?夢?を見ていたのか・・・・・
でも・・・どうしてここにいるんだろ?どうやってこの場所へ来たんだ?
「おっちーーおかしいんだぞ・・・全員夢を見てたのかな?でも・・・どうやってここへ来たのかな?・・・パパ?」
「そうだよな・・・どうやってここへ来たんだ?・・・・駅もないしあるのはバス停だけ・・・不思議だ」
オヤジも不可思議なことに驚いていた
「おまえら・・・もしかして・・・ここで亡くなった連中によばれたんじゃねーのかよ・・・」と真顔で言ってきた
「そんな・・・呼ばれるなんで・・・でも・・・「三途の川」という次の駅名を確かに見た・・・オヤジの言う通りかも・・・」
「とりあえずは長居は無用だ、車に乗れ、帰ろう」
家に帰り服を着替えるときに思わずお守りを握った
なぜかお守りの袋の結びを緩めてお守りを見た・・・唖然とした・・・
お守りに血が付いていたのだ
S子や楓や葵やカナちゃんのも血が付いていた
どういうこと?
夢?幻?
よくわからん
作者名無しの幽霊
本当に訳が分からん
どうやってあそこの場所へ行ったんだろう
家に帰りおふくろやオヤジにも不思議なことが起きたことを話をした
オヤジは真顔で「あの世へ連れていくつもりだったんじゃねーのかよ、そのお守りがおまえらを助けたと俺は思ってるぞ」と言っていた
おふくろも同じ意見だった
でもあの生々しさは何だったのか?
救急隊員が私の背中をさすったときの感触はいったい何だったのか?
リアル・・・現実としか思えない
これはS子や楓も同じことを言っていた
夢や幻じゃない
でも・・・事故を起こした列車や救急車は無かった・・雑木林だった
本当に「三途の川」・・・あの世へ連れて行こうとしていたのだろうか・・・・
しかし、お守りに血が付いていたのだから・・・リアルだったのか?・・・
それも一人じゃなく5人全員が夢や幻を見たのか?
本当にわからん