むむむ・・・またまたオヤジの傍に3人娘
オヤジのヨタ話を真顔で聞いてる
「こらこら・・3人娘たちよ、オヤジの話はヨタ話だから真に受けちゃダメだよ」
「え・・・でも・・じっちゃ・・・の話は怖い・・・」と楓が言い返してきた
「そのように怖く作ってるだけ・・聞き流せばいいよ」
「おい!!!F!!何が作り話だよ!!俺の話は全て俺の体験だ!!」
「うそつけ!!オヤジ!!適当に作ってるだけだろ!!」
「うるせーー、しばくぞ!!」
「ほら・・こんな感じなんだよ、おチビちゃんたち・・・」
「パパ・・でも今日の話はなんだが・・背筋がゾクゾクとしてる・・」と楓が自分の背中を私に見せながら話してきた
「あぁ・・・オヤジの話術にまんまとひっかかったね・・・パパとF子も何度ひっかかったか・・・」
「え・・・F子お姉ちゃんも・・・・」
「おい!!F!!いい加減にしろ!!」
「いや、言わせてもらう!!作り話はよしてくれ、オヤジ」
「なにーー!!作り話だぁーーとーーやかましいわ!!」
「パパ、じっちゃ、ケンカはダメなんだぞ!!」と葵が珍しく怒った顔をしていた
「あぁ・・いやぁ・・・葵ちゃん・・・すまんな・・」と平謝りするオヤジ
なんだよ、この温度差・・・俺には一度も頭を下げたことがない
「あたりまえだ!おれのかわいい孫娘だ!葵ちゃんが怒ると怖いんだよ」
「え・・葵が怒るとなんで怖いんだよ、オヤジ?」
「いや・・そのぉ・・・お前、覚えてないだろうな・・・小さい時のF子ちゃんが怒った顔を・・・」
え・・・小さい時のF子が怒ったのかよ・・・私は全然記憶にない
怒った顔さえ見たことがない
今は怒ると私の祖母そっくりな顔だから怖いけど・・・
「あのな・・一度・・・F子ちゃんが6歳の時にな・・・憑りつかれてな・・その除霊に時間がかかってな・・・F子ちゃんの本当の心の中を見たんだよ・・・俺は無断でな・・F子ちゃんの心の闇というか奥底を見てしまった・・・見るんじゃなかったと今でも後悔してる・・・」
「え・・・そんなことがあったのかよ・・・全然知らんかった・・・」
「そっか・・・それは本当に心の心底というか他人が見るべきものじゃないな・・・
いくら・・・憑りつかれてなんとか除霊をしようとして見てしまった・・・F子ちゃんの孤独の叫びを聞いてしまった・・・」
「孤独の叫び・・・あぁぁ・・・特異体質だからな・・・生まれた時からいろいろと怖い目にあってたんだろ、オヤジ」
「そういうことだよ・・・本当は生まれてこなきゃよかったんじゃないかと思う・・・
しかし、運命なんだよ・・そう・・運命・・・オアキちゃんの魂・・・本当はオアキちゃんはもっと生きたかったんだよ・・・でも・・・病魔は長生きさせなかった・・・
「美人薄命」という言葉通りだよ・・・天は美顔を与え命を短く・・・今のF子ちゃんを見てると・・・ふと・・運命が・・・来るんじゃないかと・・・俺は・・そのぉ・・・」
「オヤジ・・・まさか・・・その運命がもうそろそろ来るのか?」
「いや・・・オアキちゃんが命を落とした年齢にどんどん近づいてきてる・・・今のところ元気だけど・・・」
「おいおい・・・」
「パパ・・・F子お姉ちゃんがどうしたの?」と楓が聞いてきた
「いやいや・・・何でもないよ・・・オヤジのヨタ話だよ」
「ヨタ話なの?じっちゃ!!!??」
「あははははは!!!今、Fに話したのは確かにヨタ話だよ、楓ちゃん」
「そうなの!!じっちゃ!!ひどい!!もう!!じっちゃ、ちゃんと体験談を話してよ」と楓はムッとした顔になった
「そうなんだぞ!!」と葵もムッとした顔になった
「カナも!!」
「あはははは!!すまんな・・・」
確かに・・・オアキちゃんの死んだ年にどんどん近づいてきた
オヤジが心配するのは当然だ
私も心配になってきた
今のところ元気だしS君を尻に敷いてやりたい放題だし・・・昔のF子を見てる私はその運命は来ないと思ってた・・・でも、オヤジの話を聞いた後では・・・何か切なさが湧いてきた
「オヤジ・・・もう少しその話・・・ヨタ話を聞かせてくれよ」
「私も聞きたい、じっちゃ!!」
「あぁぁ・・・あれは・・・」
F子が6歳の時だ、ある日、突然嘔吐して倒れたんだそうだ
高熱が出て「パパ・・・パパ・・」とうなされていたらしい
もちろんオヤジはすぐに医者を連れてきた
しかし、医者は原因がさっぱりわからんと言い出した
オヤジはまさかと思い・・・F子の心を覗いた
やはり・・・悪霊が憑りついていた
オヤジはF子を守るためにその悪霊と戦った
しかし、相手が強すぎてオヤジは手こずった
オヤジはF子の特異能力を引き出してオヤジの能力と合わせて悪霊を除霊しようとした
しかし・・・F子の心の奥底を見たオヤジは・・・F子の孤独の叫びを直に聞いてしまった
そう・・・悪霊はその心の叫びに引き寄せられてきたのだ
オヤジは1週間ほど体が硬直してしまい寝たきりになってしまった
夢なのか現実なのか・・・F子の怖い顔が焼き付いてしまい心の奥を覗いたのをF子が怒っているのかと思っていた
「そう・・・小さい時のF子ちゃんの顔・・・俺は一生忘れられない・・・俺よりすごい形相だった・・・この俺が怖気づいてしまったんだ・・・覗くべきではなかった・・・」
なんとか硬直した体も少し体が動くようになった
F子は衰弱したままだった
おふくろはなんとか食事とかいろいろな医者を連れてきては看病をした
しかし・・・全然良くならない
オヤジは歩けるようになりF子見て愕然とした
やせ細り・・・まるで餓死寸前のようだった
オヤジの脳裏に「オアキちゃん」という名前が浮かんだ
オヤジはその「オアキちゃん」に助けを求めた
毎日仏壇に座り祈った
およそ2週間後に変化が起きた
オヤジの耳元で「パパ」と声が聞こえた
はじめは空耳かと思っていた
「パパ!!助けて!!!」とはっきりと聞こえた
「オアキ・・・生きたい・・・死にたくない」と聞こえてきた
オヤジは決心した
F子の心の中に入り直接悪霊と戦うと決意をした
いざ戦いとなると・・・悪霊はなんとF子の怒った顔へと化けたのだ
オヤジは迷った・・・いや悟った・・・悪霊はF子の「悪」「影」の部分が表面化したに違いないと・・・
「オアキ・・・死にたくない・・・早くそいつを・・・」と聞こえてきた
オヤジは迷った
この言葉は本当にオアキちゃんなのかと・・・もしかして・・と思い・・・躊躇した
「パパ!!助けてーーー苦しいよ」と聞こえてきた
オヤジは迷った・・・
成仏させるより・・・「心」という場所に封印をしよう
オヤジは悪霊を「心」の中に封印をした
成功したのかF子の症状はどんどん良くなっていった
「今でもF子ちゃんの「心」の中に悪霊がいるんだよ・・・Fならもう意味がわかるよな?」
「え・・・あぁぁ・・・」と私は愕然とした・・・オヤジの叫びが聞こえてきそうだ
いつそいつが目覚めるのか・・・
今日なのか明日なのか・・・・
除霊と違い封印なのだ
単に悪霊を閉じ込めただけだ
一番いいのはF子の体内から悪霊を追い出すことだが恐らく無理だろう
F子、自ら悪霊を引き寄せているのだ
そのまま刺激を与えずに封印したままのほうがいいのかも
しかし・・・封印をしたままだとF子の寿命は長くはない
かといって悪霊に打ち勝つほどの力を持ち合わせてはいない
F子自身の力のみなのだ
一か八かという選択もあるが失敗をすれば命を失う
「オヤジ・・・そのままにしておこう・・・とてもじゃないけど誰も力を持ってないよ」
「そうだな・・・失敗する確率が高いんだよな・・・でも寿命はそう長くはないし・・・困ったな」
「失敗して後悔するよりは今のままでいいよ」
「まぁ・・・俺もそう考えていた・・・これも運命か・・・」とオヤジは下を向いたまま身動きしなくなってしまった
3人娘は何を話しているのかという顔をしていた
「じっちゃ・・・大丈夫?」と楓が心配そうにオヤジを見ていた
「あぁぁ・・大丈夫だよ、楓ちゃん」とオヤジはニコリとしてラジオの前に座った
「さぁさ・・・ラジオでも聞こう」
「うん!!!」
3人娘は静かにオヤジと一緒にラジオを聞いていた
ああは言ったものの・・・どうにかして解決をしなきゃと頭の中はパニックになっていた
しかし、なかなかいい方法が見つからない
いずれは「心の悪魔」と戦う日が来るだろう
作者名無しの幽霊
娘たちにはオヤジのヨタ話としてごまかしたけれど
内心・・・どうにかしなければいけない
唯一、望みがあるとすれば楓の能力だ
オヤジの能力をもろに受け継いでしまった
しかし、まだ楓は小さい
せめて13歳以上になるまでは非常に危険だとオヤジと話をした
それまでF子が耐えきれるかどうかだ
今のところ、F子は元気そのもの
いずれ来る「運命」は避けられないだろう