長編12
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指輪物語

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「お願い!この借りは倍にして返すから!ね!お願いします!」

金曜の夕方ひとり、部屋で寛いでいる時に友人から電話がきた。明日のバイトに出られなくなっから代わりに出て欲しいと。この手の連絡は過去にもあり、今回で2回目だ。

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「前にバイト頼んだ時と同じ!お前はカウンターで立っててくれれば大丈夫だから。注文があったらそれを運んで、お客さんとは積極的に話さなくていいよ、先輩達がそこはやるから。それから...」

詳細は後でメールで送ると言い電話をきられた。いくつか質問をしたが適当にはぐらかされた。

前に友人の代わりにバイトに出た時にあまり良い思い出がないので、正直行きたくなかったし今回の件で厭な予感がした。

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そういえば、夏の超常現象系番組で自分の直観や心の声は無視してはいけないと言っていた。

自分の身の危険があった時例えば、事件に巻き込まれたり誘拐された時に直ぐに探してもらいるように、行動を起こす前に親しい友人に連絡するようにしている。今回の件も、念の為親しい友人に連絡することにした。

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バイトの前日にメールにて詳細を伝え、当日バイトに向かう前に電話で伝える。

バイト前日つまり今、親しい友人の一人にメールで伝えた。送信すると直ぐに返事が返ってきた。

相手の奴図々しくないか?バイト出られないなら休めよって思うけど。嫌なものは嫌だとはっきり断らないと駄目だよ。明日バイトに行って変だとおもったらバックレろよ。

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メールでこの親しい友人と当日のシミュレーションをし床に就いた。

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当日の夕方頃、昨晩送られてきた友人からのバイトの詳細メールを見た。大体の場所を確認すると、必要最低限の物を持って家を出た。

ユニフォームやその他バイト先で用意してくれているとの事だ。拘束時間もそれほど長くなく楽なバイトだと見くびっていた事を後に後悔することになる。

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まずバイト先に着いて気が付いた、前回と同じ店ではないという事に。

友人からは前回と同じであると言われていた為てっきり同じ店だと勘違いしていた。今更後悔しても仕方がない、店の前で立ち尽くしていると怪しまれる。ふと周りを見ると訝しげな視線を投げ掛けてくる中年男性達と目が合った。見るからに堅気の者ではない。

意を決して店のエレベーターに乗り込んだ。

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店に入ると数人の従業員が居た。

友人の代わりで来た事を伝えると既に話は聞いていたそうで、直ぐに更衣室の様な部屋へ通された。

部屋に入ると黴臭さに似た独特な匂いが鼻を突いた。

臭い、無意識に鼻を抑えた。

「大丈夫?鼻水出た?」

部屋に案内した従業員が言った。無精髭によれよれのシャツに黒いベストを着た男。

そうじゃない、部屋が臭いんだよ、言葉が出かかったが笑ってその場を誤魔化した。

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「この辺にあるもの適当に使っていいから、ヘアメイクさん来るまで座って待っててね~」

ヘアメイク?そんな事は友人から聞いていない。ユニフォームを借りて適当に接客すればいい筈だ。

「ヘアメイク?て化粧したりするんですか?そんな話聞いてないんですけど」

「メイクなんてしないしな~い、メイクしなくて大丈夫~そのままでいいよ。髪の毛を整えるだけだから~」

「はぁ...」

「そこにあるユニフォーム、好きなの選んで着替えておいてね~そんなにバリエーションないけど~じゃあまた後で~」

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ユニフォームに着替え大きな鏡の前に置かれた椅子に座る。座り心地の悪いパイプ椅子、脚には錆がこびり付きギシギシと音を立てる。友人にヘアメイクの件等友人に連絡しても返事が返ってこない。遠くの方で従業員たちの声と共にこちらに向かってくる足音が聞こえた。

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ガチャ

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「こんにちは...もう、こんばんわかな、よろしくね」

人の良さそうな女性が入ってきた。年齢は自分の親よりも一回り以上年上だと思われる。

笑いかける顔がとても穏やかで、良い人の雰囲気を纏っていた。

「緊張しなくていいからね、店長さんが言ってた髪型でいいかな?」

「え、髪型決まってるんですか?」

「さっき店長さんがこういうのがいいんじゃないかって、提案していたのよ。うーんとね、こんな感じ。少し時間がかかるけど、きっと似合うと思うよ」

雑誌に載っていた髪型を見せられた。今の自分の髪よりもだいぶ長い、そして普段の自分では絶対にやらない髪型だった。ユニフォーム以外に髪型にも決まりがあるのか、自分の他の従業員も同じような髪型なのか、そもそも髪をここまで整える必要があるのは何故だ?これではまるで...

色々考えるのをやめ、ヘアメイクさんに任せることにした。

初めは緊張したがヘアメイクさんが世間話やおもしろい話をしてくれ、気持ちがほぐれていった。

「ねぇ、これからお仕事大変でしょう?今の時間は眠っていていいよ。もう少し時間がかかるから、目を瞑ってリラックスしてね」

気のせいだろうか、鏡越しに見るヘアメイクさんが寂しさを含んだ顔で微笑んだ様に見えた。

「わかりました、少し眠ります」

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ヘアメイクさんに起こされ鏡に映った自分の髪を見た。髪型のクオリティーの高さに驚いたのと同時に、改めて店長と呼ばれる男がどうしてこの髪型を所望したのか疑問でならなかった。

どうしてここまで粧し込む必要があるんだ?普段の自分とかけ離れ過ぎて、笑いたくなった。

「それじゃあ、終わったから私は帰るね」

「ありがとうございました」

ヘアメイクさんにお礼を言うと入れ代わり立ち代わり別の従業員が入ってきた。

「そろそろ時間だから店頭出て」

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従業員から仕事の指示を受け、カウンター越しにフロアを見ていた。

「この子新人さん?」

女性を連れた男性客が先輩スタッフに声をかけた。先輩スタッフと男性が話している間、連れの女性はテーブルに突っ伏し寝ている。男性客が肩を揺するも唸るだけで起きない。

「この子、飲むとすぐ寝ちゃうんだよねー」

「飲み過ぎに気を付けて下さいね」

女性の方に水を差し出した。

うーん、うーんと唸ると、鼾をたてはじめた。よくみると口から涎が出ている。

先輩に伝えると女性に駆け寄り肩を揺すって声をかけた。

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側に立っているとトイレの方から店員を呼ぶ声が聞こえた。騒音に近い大声だ。

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「先輩、お客さんが呼んでるんですけど」

「そんな声しないぞ?どこからしてる?」

「トイレの方からです、何か叫んでるので行きますね?」

先輩は何を言っているのか分からないといった表情を浮かべ、一度こちらを見ると再び唸る女性に声をかけた。この間も叫ぶ声は止まないので一人で向かうことにした。

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music:2

「どうしました?大丈夫ですか?」

声をかけながら声がする方へ向かう。トイレのドア前、倉庫前、男子トイレの前、男子トイレの中、声がするが姿が見えない。

うおおおおおああああんーうあああーうあああああうえあえあー

女子トイレの中から呻き声と叫び声を足した様な声がした。

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コンコン

ドアをノックし中の人に声をかけた。

すぐに、大丈夫ですという低い女性の声が返ってきた。

幽霊だったら嫌だけど、人が入ってるならまぁいいか声をかけたてから声は止み、中からごぞごぞと服が擦れる音がした。

ドアの前に立っていたら出にくいだろうと思い、少し離れたところに移動した。

「すみません、お水ください。お水!お水!」

くぐもった声でドア越しに言われた。

急いで水と冷たいタオルを持ってトイレに戻ってきた。

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コンコン

「お待たせしました、お水お持ちしました。冷たいタオルも念の為持ってきたんですけど、体調は大丈夫ですか?」

中から応答がない。ドアを見ると施錠されていない、”開”マークになっていた。

「失礼します...あれ?」

中には誰も居なかった。

トイレが異様に綺麗に感じ違和感があった。今日一日誰も使用していないトイレの様に綺麗だった。

「水取りに行ってる間に席に戻ったのかな...ま、いいか」

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ギィイ...

トイレのドアを閉めた時、足元に金属製の何かがどこからか転がってきた。

その場にしゃがみ手に取ると、それは少し大き目のサイズの指輪だった。真ん中にスワロフスキーに似たものが複数はまっていた。指輪を動かすたびに銀色の輝きや揺れた。

綺麗だな...誰の指輪なんだろう

指輪に魅入っていると後ろに気配を感じた。

目の前のドアに後ろから迫る大きな影が見えた。影は両手を広げ覆い被ろうとしている。身体が強張り縮こまると指輪を地面に落としてしまった。

落ちた指輪を拾おうとした、その時。

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music:6

ザラ...ザラ...

左側頭部の髪をざらついた指が撫でた。左から後ろへ指が伝っていくのを感じた。

ザラ...

後ろ髪に伸びた手がこんどは左の首筋を撫でる様に動いた。

「やめろ!!」

首を抑え立ち上がり後ろを振り向いた。

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「なにやってんの、床に何か落ちてた?」

先輩従業員が腕を組み仁王立ちしていた。顔はしかめっ面だ。

「あ...えっと..お客さんが叫んでいて、水が欲しいというから取りに行って戻ってきたら居なくて...落ちてた指輪拾ったらいきなり髪の毛触られて、びっくりして...」

「お客さん?誰もトイレに入ってないよ。それと、指輪なんて落ちてないじゃないか」

「あの、今来たんですか?ずっと後ろに居たんですか?髪触ったのって...」

「落ち着けって。やめろ!って声が聞こえて見にきたんだよ。なにもないなら早く店頭戻って」

「え、はい...」

納得いかないまま渋々店頭に戻った。先輩従業員の言う通り、指輪はどこにも落ちていなかった。

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店頭に戻るとテーブルで寝ていた女性客の姿はなく、別の客が座っていた。

鞄から何か取り出しテーブルに広げている。

「さっき、あそこで寝ていた女の人はもう帰ったんですか?」

「ああ、救急車に運ばれていったよー」

「救急車?」

「そんなに驚かなくてもいいだろ、そういう客でたくさんだよ。自分の限界がわからなくて飲んじゃったのかなーそれとも他の理由かなー、客がどうなろうがどうでもいいけどね」

こんな事は日常茶飯事であり驚くお前はおかしいという風な口ぶりだった。言い方も厭な感じだ。不快感しかない、早く帰りたくなってきた。

さっきの首筋を撫でる指の感触の記憶が蘇ってきて気持ち悪い。

“明日バイトに行って変だとおもったらバックレろよ”

この言葉に甘え、隙をみて着替えて抜け出そうかと考えた。

”ね!お願いします!”

いや、最後までやろう。耐えられないような事が起きたら、その時は抜け出そう。

手に人という字を指でかきそれを飲みこむという動作を3回行った。どうしてこの動作をしたのかよく覚えていない。

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「ねぇ、それ地毛?髪長いのね」

テーブルに様々な装飾具を並べ従業員に説明している男性客の隣の女性客が声をかけてきた。

良く見せてと言われ顔を少し近づけた。ふーんだとか、んーだとか言いながら髪を触った。

「ありがと。なんか、猫ちゃんみたいな触り心地ね」

「猫飼ってるんですか?」

「そうよ、見て、この指輪...この人に頼んで作ってもらったの。私の猫ちゃんをイメージして作ってもらったの」

女性の指には白い猫の指輪がはめられていた。猫の瞳には青い宝石が入り、妖しく輝いて見えた。どうやら、隣の男性客はデザイナーらしい。あなたも指輪を作ってもらったら?と言われたが丁重にお断りした。

「猫ちゃんの写真あるんだけど、見る?」

「見たいです!」

「ふふ...私の猫ちゃんはとびきり可愛いのよ、ラグドールのブルーポイントバイカラー」

「わー、綺麗ですね!女の子ですか?」

「男の子よ」

「また猫の話してるのか。猫も良いけど、こっちもどうよ?」

指輪やネックレスを掴むと見せてきた。どれも派手で女性が好みそうなデザインだなと思った。

ただでやると言って指輪を勧められたが、既に指輪は持っていると言い左手の指輪を見せた。

再度勧められたが丁重にお断りした。

この後やてきた酔っぱらい客に絡まれたり、吐瀉物で汚れたトイレを掃除したり色々やっているうちに時間は過ぎて行った。

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時間になったので上がります、店長に伝えると本日の給料を手渡された。コートのポケットに給料袋を急いで押し込む。今すぐ店を出たかった。ここで働かないかと誘われたが丁重にお断りした。

着替え終わり逃げるように店を出た。

店のエレベーターに乗る直前に誰かに話しかけられたが、気が付かない振りをして閉ボタンを2回押した。

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「さっむ!寒過ぎるだろ...こんなに寒くなるなんて聞いてないぞ天気予報」

外は思った以上に寒く鼻の奥がつんとした。吐く息が白い。寒いのに、夜遅い時間なのに、どうして歩いて帰ろうという決断をしたのか分からない。今の自分だったら電車かタクシーで帰るだろう。

コートのポケットに手を入れると、身に覚えのない剥き出しの煙草とライターが入っていた。

「どうして入ってるんだろ...ま、いいか」

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二駅分程歩いた頃だったか、自分の左手にしていた指輪がない事に気が付いた。

どこで落としたのか、いつから指輪がないのか分からない。来た道を戻ろうにもそんな気力も体力もなかった。

「結構気に入ってたのにな...どこに落としたんだろう」

来た道を少し戻り辺りを探した。携帯のライトで地面を照らす、肩にかかる髪が下を向くことで顔に影を作る。

傍から見ると不審者だ。人通りが少なく街灯の明かりも寂しい。怖い話に出てくる怪しい人物が俯き暗い夜道を俳諧している姿が容易に想像できた。

「仕方ない、こういう日もある。諦めよう」

携帯のライトを消して変える方向へ足を向けた。

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「どうしたんですかぁ?」

向かいの電柱付近に人が立っていた。辺りが薄暗くてよく見えないが、髪が長く体格の良い女性に見えた。

「どうしたんですかぁ?」

言うと、相手はこちら向かってゆったりとした足取りで近づいてきた。

「大丈夫です、何でもないんです!」

「ふえぇ~」

変な返事の仕方だなと思った。

「指輪なくしたんですかぁ?」

「そうなんですよ、指輪無くしちゃって」

言った後で後悔した。どうして指輪を探している事を相手は知っているんだろう。一度も指輪がない等と言っていない。

「探しましょうか?一緒に、一緒に探しましょう、探しましょう」

相手が街灯の下に来た時、全体がはっきりと見えた。年季の入った薄い長袖にトイレ用の茶色いサンダルを履いていた。不気味にニヤニヤ笑う顔を街灯が明るく照らす。

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逃げろ!逃げろ!逃げろ!

走り終わった後の様に心臓の鼓動が速くなるのが分かった。

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「おい!!!」

相手は野太い男の声で叫んだ。

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女性ではなく、髪の長い大男だった。

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「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!!」

大男が叫びながら向かってきた。髪が顔に張り付き黒い塊になっていた。

全力で走った。何度も足がもつれそうになるのを耐えながら必死に走った。休みの日にランニングしていて良かったと思った。

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急いでコンビニに駆け込み息を整えた。店内のできるだけ奥に隠れたる。店内に入ってくる客は居ない。雑誌の並ぶ場所へ移動し、外を見てみた。

じーっ...

コンビニから離れた信号の下に居た。口を動かしなにか訴えているようだった。

店の中に入ってきたらすぐに店員さんに助けを求めよう、いつでも動けるよう身構えながら相手を見ていた。

一時間以上相手は外で立っていた。

いつの間にかうたた寝してしまい、外を見ると居なくなっていた。

どこかに隠れていて突然襲われる、家を知られるのを回避したい。結局太陽が昇るまでコンビニに居た。

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全身は怠く頭が重いが目は冴えていた。

コンビニを出る前に雑誌とエナジードリンクを買って出た。袋の中のエナジードリンクを一本開けて飲む。エネルギーが全身を巡っていく感じがした。瓶を持つ手が震えた。疲れのせいなのか、昨晩の事を思い出したからなのか。早く帰って寝よう。

少し歩いてから後ろを振り向きコンビニを見た。

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昨晩の大男がコンビニから出てきた。

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「コンビニに居たんだ...」

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