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小学校低学年だった頃に体験した話です。
その日の放課後、友人と下校し一緒に帰りながらこの後暇なら遊ぼうということになりました。
真直ぐ友人宅へ行かずに一旦自宅へ帰り、親に了承を得てから行くことにしました。
自宅へ寄った後、少しより道をして親友宅へ行きました。
「なぁ、喉乾いたから自販機でジュース買っていい?」
「帰り道で買い食いしちゃ駄目だって、先生言ってたよ、やめたほうがいいよ」
「大丈夫だってー誰も見てないよ。直ぐ買うから」
自販機でジュースを買っているのを不安に思いながら、周りに人は居ないか誰も見ていないか、周囲を見張っていました。
あまり人通りがなかった為、誰にも見つからずに済んだと安堵していました。
自分の背後でガコンッと自販機の中で缶が落ちる音がしました。
「うわー押すボタン間違えたーこのジュースあんまり好きじゃないやつだー」
「買っちゃったからしょうがないよ」
「もう一本買おうかなー」
「勿体無いよ、家に帰ったら水飲めばいいよ」
「うーん、でもなー」
「もう行こうってばー」
二人であーだこーだと話している時でした。
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shake
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「ケンくん...ケンくんでしょ...」
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自販機横から女の人が突然現れたのです。とても昔の記憶なのでどんな見た目なのか覚えていないのですが、その人は女性であったと思います。
「ケンくん...ケンくんでしょ...」
二人で暫く固まってしまい、相手の問いに答えられないでいました。こちらが黙っている間、相手は同じ問いを繰り返していました。
「ち、違います!」
「うああ!」
shake
友人は叫ぶと腕を掴み走り出しました。後ろを見ずに必死に走りました。友人の家に着くまで走り続けたので、息切れが酷く呼吸を整えるまでお互い黙っていました。
「はあ、はあ、はあ、はあ...あの人、知り合いなの?」
「はあ、はあ、はあ...知らない人だよ、なんだったんだあの人」
「名前、ケンくんじゃないもんね...ケンくんって人に似てるのかな」
「...あの人追いかけてきてたら怖いから、早く家入ろう!」
「うん」
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友人の家にあがって暫くは二人、黙ってジュースを飲んだりして微妙な空気になっていました。
しかし、突然の友人のゲームしよう!の一声で空気が変わりました。当時流行っていたゲームを二人で夢中でやっているとあっという間に時間は過ぎていきました。もうそろそろ帰ろうかなと考えていると、友人の母親が帰ってきました。
「ただいま~、お!遊びに来てたのね、久しぶりだね。元気にしてた?」
「お邪魔してます。はい、元気に生活してます」
「元気に生活してますって、変な言い方ー」
「なんで変なんだよー」
「うんうん、元気そうでよかったよ。そうだ、夜ごはん食べていかない?お母さんには電話で伝えておくからさ。ゆう、いいよね?」
「...いいよー」
「いいんですか?やったー!」
「夕ご飯できるまで遊ぼうぜ」
「うん!」
自分の母と友人の母はとても仲が良く、時々一緒に出かけたりする仲でした。友人のお母さんは気さくな人でユーモアがありとても温かい人でした。
友人の部屋でボードゲームをしていると、友人の父親が帰ってきました。
ガチャッ!
shake
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「ただいま!」
「うわあ!」
「わあ!」
「びっくりしたー!もーやめろよー」
「ははは!どっきり成功ー!」
「びっくりした...お邪魔してます...」
「二人共元気そうでなにより!お菓子のお土産買ってきたぞ~夕ご飯食べ終わったら、食べよう」
「いえーい!やったー!」
「ありがとうございます!ご馳走さまです」
友人の父親は驚かすことが好きな人で、会う度にビックリすることを仕掛けてきて、驚かすのが失敗すると嘘泣きをする、とてもおもしろい人でした。
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4人で夕食を食べ終え、子供達でお土産のお菓子を食べていると。
「もう少し遊びたいなー、なぁ、今日泊まってけよ。ねー、お父さんー泊まってっちゃだめー?」
「明日学校休みだもんな、俺はいいと思うぞ」
「お母さんー」
「うちは泊まっていってもいいけど」
「やった!お前の両親に電話して、泊まるのOKか聞いてみて!」
「うん、電話で聞いてみる」
自宅に電話すると母が電話に出て、友人宅に泊まっていいか聞いた後、友人の母に電話をかわるよう言われ、結果泊まれることになり友人と二人で喜んではしゃいでいました。
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その後は友人の部屋で寝る時間までゲームをし、眠くなってきたのでそろそろ寝ようかと話していていると、友人が急に怖い話をし始めました。
お前、お化けって信じる?から始まり、実家のおばあちゃん家でお化けを見たことがある、実はこの家の近くにお化けが出る、そのお化けは12時になるとこの家の裏の草むらの中から現れる、見たら追いかけてくる、という寝る前に聞いてはいけないような内容の話でした。怖くなりながら聞いていると、友人がもうすぐ12時になるよと、声を潜めて言いました。
押入れから懐中電灯を取り出すと
「この窓から向こうがその草むら...お化け見てみよう、きみだめし...」
「肝試しだね...いやだって言ってもどうせやるんだろ」
「へへへー」
窓を開けると真っ暗闇の中に友人が照らす懐中電灯が頼りなく光っていました。
光を照らしながら度々驚かしてくる友人に驚きながらお化けの存在を探していました。
それらしい姿は見当たらず、もう諦めようと友人に声をかけました。
すると...
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「なにかいる...なにかいるぞ...」
「どこ?」
「しっ!静かに!声が大きいぞ...ほら...あそこ...」
「どこどこ...」
「あそこだよ、あの茂み、何か動いてるものが見えるだろ」
「うーん...」
友人がその動くものがいる場所を懐中電灯で照らしました。
ガサガサ...ガサガサ...
「なんだあれ...」
「...」
ガサガサ...ガサガサ...ガサガサ...ガサガサ...
ガサッ!
shake
その動くものがこっちに振り向きました。
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それは斬バラに乱れた髪をした女の人でした。口を動かしながら、上腕を体にくっつけ、前腕を左右に振りながらこっちに向かってきました。
「出たぁあああ!」
「ぎゃああ!」
二人で急いで窓を閉めると鍵をかけ、カーテンを閉め、窓の近くに敷いていた布団を出入り口付近まで移動させました。
shake
カリカリカリカリ...
窓の方から爪で何かを捲るような、削るような音がしました。
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「今なにか聞こえたよね...ゆう」
「..........」
「ゆう...ゆうくん!」
「大声出すなよ!怖いんだよ!」
友人は震えながら布団に丸まっていました。自分も怖くて布団をかぶりましたが、恐怖心は治まりません。
「ゆう...あのさ...布団くっつけていい?」
「...いいよ...」
怖くて仕方がなく、お互いの布団半分を合体させ、二人で震えながら眠りました。
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その日以来昨晩みたものを見ることはなく、友人はそこから引っ越してしまったのであの存在の詳細はわかりません。あれはお化けの類だったのか、人間だったのか...あの姿は今でも忘れられません。
作者群青
最後まで読んで頂きありがとうございます。誤字脱字などございましたらご指摘頂けると幸いです。