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中編4
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田舎なんか大嫌い

とある田舎に住む高校生の話。

彼は自分の産まれ育ったこの田舎が大嫌いだった。

「あるものなんて、寂れた商店と、死にかけの老人と、どこまでも広がる田んぼと畑、それを荒らす野生動物くらいだ」

そう言って、いつもふるさとを馬鹿にしていた。

高校卒業後は「都会へ出て、こんな田舎とおさらばしてやるんだ」と強く心に決めていた。

そんなことを考えながら自転車を走らせる高校からの帰り道。

気づくと、彼の目の前に木の枝が転がっていた。

とっさにハンドルを切ったものの、考え事をしていたために避けきれず、その木の枝を踏みつけてしまった。

その瞬間、「グニャ」っと、自転車ごしに嫌な感触が・・・・・・

木の枝だと思っていたソレは、ヘビだった。

アスファルトの上で日向ぼっこでもしていたであろうそのヘビを、自転車のタイヤで思いきり轢いてしまったのだ。

振り向くと、ヘビは大量の体液を噴き出し、活きの良いミミズのようにのたうちまわっていた。

しかし、すぐに勢いは弱まり、いつしかピクリとも動かなくなった。

「死んじゃったかな?」

「ヘビは執念深い」「ヘビを殺すと不吉なことが起こる」といった言い伝えが昔からあることくらい、高校生の彼でも知っていた。

さすがに「マズいな」と思ったが、かといってどうすることもできず、結局そのまま死骸を放置して家に帰った。

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ある日、彼は親父から頼まれ事をされた。

ここは田舎だ。

家屋や農作物に危害を及ぼすネズミが、そこらじゅうにウヨウヨいる。

そうしたネズミたちを捕獲するため、あちこちに罠が仕掛けてある。

父の頼みとは、それを全てチェックして、罠にかかったネズミを処分しておいてくれとのことだった。

彼は気が進まなかったが、することもなく退屈していたので、仕方なく引き受けることにした。

ネズミがかかっていた罠は十数個。

それを庭の片隅に一ヶ所に集めたあと、溺死させるために大きなタライに水をためた。

そのタライに罠ごとネズミを沈めようと、罠をひとつ手にすると・・・・・・

その途端、妙な感覚が彼を襲った。

「うまそうだな、このネズミ・・・・・・」

彼は思わず自分自身が発した言葉に驚いた。

しかし、やはり彼にはネズミがうまそうに思えて仕方がなかった。

彼は周りに人がいないことを確認してから、罠のフタを開け、腕を突っ込むと、抵抗されるのも構わず鷲掴みにした。

そして、得体の知れない衝動に駆られるがままに、生きたままのネズミに、頭から勢いよくかじりついた。

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バリッ・・・ゴリゴリ・・・

ジュルジュル・・・モグモグ・・・

首から上の頭部を無理矢理食いちぎると、目玉も脳ミソも奥歯で骨ごと噛み砕いた。

一口飲み下して、彼は驚嘆した。

「知らなかった!ネズミがこんなにうまいなんて・・・・・・」

あまりの美味さに感動すら覚えた彼は、頭部を失い痙攣しているネズミの胴体に容赦なく喰らいつき、夢中になってむさぼり食った。

そして、あっというまに丸々一匹を食べ切ってしまったのだ。

すでに、彼の理性はどこかへ吹き飛んでしまっていた。

口も手も真っ赤な血にまみれたまま、躊躇することなくふたつ目の罠に手を伸ばすと、荒々しくネズミを捕まえ、夢中でむしゃぶりついた。

二匹目を食べ終えたとき、彼は思った。

「ネズミは美味いなんてもんじゃない。むしろ、何かを食べて、これほどうまいと感じたことは生まれて初めてだ」 と。

それからも彼は得体の知れない衝動に駆られながら、理性を失ったケダモノのように3匹・・・4匹・・・と、生きたネズミを次々にむさぼり食った。

気づくと、そこにいた十数匹のネズミを、全て平らげてしまっていた。

最後の方は両腕で絞め上げて弱らせたネズミを、ほとんど丸呑みしていた。

生きた獲物が、窮屈な喉元を通りすぎていく感覚に、快感すら覚えた。

獲物を絞め上げて丸呑みにするその姿はまるで、ヘビのようであった・・・・・・。

彼はそれから毎日、罠をチェックしては、人目を盗んでネズミを生きたまま貪り食った。

そしてある日、彼は決心した。

「この土地を離れてしまっては、好きなだけネズミを食えなくなってしまう。ネズミを食い続けるには農家を継ぐのが一番いいかもな・・・」

そして、彼は父親に告げた。

「親父、オレ、農家継ぐわ」

すっかり都会に出ていくと思っていた父は、息子からの思いもよらない言葉に手放しで喜んだ。

そうなると、彼にはひとつだけ、気掛かりなことがあった。

農家はたいてい、農作物や納屋を荒らすネズミを退治するために、ネコを飼っている。

「奴らに活躍されてはオレの分け前が減る」

彼は手始めに、自宅の飼いネコを処分することにした。

飼いネコがいつも昼寝をしている納屋に向かうと、躊躇うことなく寝ていたネコの首を両腕で力の限り絞め上げ、息の根を止めた。

ぐったりと横たわるネコの死骸を見て、彼はふと思った。

「ネコは美味いのか?」

彼は再び得体の知れない衝動に駆られるがまま、ネコに喰らいつき、またもや狂喜することとなった。

「ネズミとは違う美味さがある!もっと・・・もっと食べたい・・・・・・」

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今の彼にとってはもう、田舎は忌み嫌う場所ではなくなっていた。

むしろ、野生動物の命を育む大自然に囲まれたこの故郷が、楽園にすら思えてきていた。

次なる獲物を求め、縦に長くのびる鋭い瞳を見開き、ヘビのように裂けた舌を舐めずりまわす彼。

体の内側から沸き上がる得体の知れない衝動を抑えられず、いつしか「人ならざるもの」へと変貌を遂げてしまった彼が、次なるターゲットとして狙いをつけたのは鶏や豚などの家畜だった。

そんな彼が人肉を求め、人間を襲うようになり、小さな田舎町を恐怖で震いあがらせるようにるまでには、そう時間はかからなかった。

・・・

・・

Concrete
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@ 怖い物好き
コメントとポチありがとうございます。
こんなコメントいただけたら、今後の励みになります。
嬉しいので、投稿のペースを早めたくなっちゃいます。
目標は100作品&1000怖です。

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