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短編2
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かわいいでしょ?

「かわいいでしょ?ほら、かわいいでしょ?」

僕のご近所さんに、ひとりへんなおばさんがいる。

毎日毎日、ああして自宅の玄関前に立っては、

「かわいいでしょ?ねぇ・・・」

そう言って、クマだかウサギだかよくわからないヌイグルミを、だいじそーに、愛おしそーに抱えながら、道行く人たちに見せびらかしてる。

通行人たちにとっても、それはもはや見慣れてしまった光景で、ほとんどの人がおばさんには目もくれずに通り過ぎてゆく。

おばさんの家は、通りを挟んで僕の家の向かいにある。

だから僕はいつも興味本位で、自室の窓からおばさんの様子を見ていた。

聞いた話じゃ、おばさんにはひとり娘さんが「いる」、あるいは「いた」らしい(この辺がなぜ曖昧なのかは僕にはわからなかった)が、僕は生まれてこの方、それらしい子を見たことがない。

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雨の降る日だった。

こんな日でも、おばさんは相変わらず外であのヌイグルミのコマーシャルを続けている。

自室の床に寝っ転がって耳を澄ますと、古ぼけたスピーカーのように間の抜けたおばさんの声が聞こえてくる。

「かわいいでしょ?・・・かわいいでしょ?・・・」

・・・?なんだか何か「溜め込む」ような声の調子に、僕の頭上には疑問符が浮かんだ。

直後、それは爆発した。

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shake

「あ ん た も 返 事 く ら い し な さ い よ ! !」

僕は体も心臓も飛び上がる。

その直後、雨の中を誰かが駆けていく音が聞こえてきた。

こんなこと今までにない。明らかな異常事態だ。何事かと思って僕は窓から通りの様子を見る。

そこにおばさんはいない。

ただ、道の上に例のヌイグルミが背中を向けてうち捨てられていた。

よく見るとヌイグルミの背中に、なにか文字が書いてある。

僕は双眼鏡で覗いてみた。

「〇〇美」。女の子の名前が書いてあった。

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後日、おばさんが亡くなったとの知らせを聞いた。

なんでもあの雨の日に、車にはねられたのだそうだ。

おばさんは病院に搬送されたのち、死の間際にとても安らかな面持ちで、奇妙なことを言っていたという。

「〇〇美・・・、こんなところにいたのね・・・」

それはまるでそこにはいない、いるはずのない誰かに向かって語り掛けているようだったという。

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おばさんが亡くなったのち、向かいの家は空き家になった。

Concrete
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