中編3
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不器用な男

俺の働いていた店には、夜決まった時間に必ず買い物にくる細身の40代くらいの男性がいた。

いつも同じ灰色のパーカー、黒いジャージをはいてマスク姿で店に入ってくる男性。

長髪の為、顔はよく見えないが、睡眠不足なのかなんなのかいつも目が血走っているように見えた。

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そんな彼はいつも俺のレジの所にやってくる。

どんだけ顔が整ったアルバイトの子、愛想のよいパートのおばちゃんがいようがいまいが必ず俺の所に来てくれる。

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彼がレジに持ってくる物は決まってる。

可愛らしい子猫の写真が貼られたキャットフード一つだけだ。

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その一つだけ買って帰る時、聞こえるか聞こえないかくらいのか弱い声でいつも

「あざす」 

とだけ言って帰るのだ。

血走った目が怖いが慣れるとなんて事はない。

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他のレジの女性達は彼の事を苦手としているようだったが、俺はいつも小声でお礼を言ってくれる彼の事が嫌いじゃなかった。

そりゃ少しは怖かったが。

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自分も目つきが良くないとか、服装がズボラとか思われてで第一印象で好感を得ることが少ない。

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だからかなあ。

何となく親近感を感じて彼の事を可愛らしいとさえ思っていた。

冷静にレジ対応している俺に他のレジ担当の女性はかなり引きぎみだったが。

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ある日仕事が終わった帰り道、俺はその男の人を偶然見かけた。

彼は野良猫に、俺のレジを通したキャットフードを食べさせてあげていた。

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遠目からで、マスクをしており表情はよく読み取れなかったが何だか温かな気持ちになった。

なんて不器用な優しさを持った男の人だろうと。

普段からもうちょい格好を気にしていたらみんなから好かれそうなのにな。

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その光景を見てから、彼を怖いと思う気持ちは微塵もなかった。

彼が毎日買い物に来て俺のレジに来る事は当たり前だったもんだからたまに店に来ない時は、何かあったんじゃないかと不安になった。

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彼をよく知らない人は怖がるだろうが、レジを通した後血走った目で見つめながら言う「あざす」の一言も一層、心地良くなっていた。

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しかしある日を境に彼は店に突然来なくなった。

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彼が来なくなって三日ほどだろうか。

警察が忙しなく店に来た。

突然で驚いたが聞く所によると店の近くにある林の中で

野良と思われる猫の死骸が大量に発見されたらしい。

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目撃者によると灰色のパーカー、黒いジャージ、マスクを着用した男が猫に餌をやった後、笑いながら殺して林の中に運んで行ったと言う。

警察は街の防犯カメラを見てその男と思わしき人物が繁栄に俺の店に出入りしている事を知り話を聞きにきたそうだ。

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証言した男性は今、行方不明になっているらしい

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言葉にならない感情が湧いて来た。

不器用ながら優しい人だと思っていた彼が犯人である可能性が高い。

いつも俺のレジに来てくれて小さな声だがお礼を言う礼儀正しい男性。

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親しみを覚えていた俺は、やるせない気持ちのぶつけ先がなく、つい警察につっかかってしまう。

「彼はそんな人間じゃあありません!

   何かの間違いです!!」

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警察はいきなりの俺の剣幕に驚いた様子だった。

他のレジのパートの女性達は、何故か俺を異様なモノを見るような目で見ていた。

しばしの静寂の後、一人の女性が怯えた様子で口を開く。

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「あんた…何いってるの…??

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shake

  「ずっと「ころす」って言われてたじゃない!!」

Concrete
コメント怖い
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